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2023.01.11
アジア経済
原油
アジア金融政策
オーストラリア経済
豪州、物価高と金利高にも拘らず内需は堅調、一段の利上げが意識される展開
~当面の豪ドル相場は一段の利上げが意識されることで底堅い展開が続く可能性~
西濵 徹
- 要旨
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- 豪州経済を巡っては、中国のゼロコロナ政策が外需の足かせとなるほか、物価高と金利高の共存は家計消費など内需の重石になることが懸念されてきた。昨年末にかけては世界経済の減速懸念を受けた商品市況の下振れが交易条件指数の低下を招く一方、物価高が続いているにも拘らず雇用の堅調さを追い風に家計消費の底入れが続いている。他方、外需の足かせとなった中国のゼロコロナ政策は一転終了しており、景気の下支えに繋がることが期待される。よって、当面のインフレ率は高止まりが見込まれ、中銀は一段の金融引き締めに動く可能性が高まっている。足下の豪ドル相場は米ドルに対して底入れする一方、日本円に対しては頭打ちしているが、一段の金融引き締めが意識されることで当面は底堅い展開が続くと予想される。
豪州経済を巡っては、最大の輸出相手である中国における『ゼロコロナ政策』への拘泥が外需の足かせになるとともに、商品高による世界的なインフレの動きは同国においても食料品やエネルギーなど生活必需品を中心とするインフレを招いており、家計部門を中心に実質購買力に下押し圧力が掛かることで内需の重石となることが懸念されるなど、内・外需双方に不透明要因が山積している。さらに、昨年の国際金融市場においては世界的なインフレを受けて米FRB(連邦準備制度理事会)がタカ派傾斜を強めたため、これに伴う米ドル高の動きは豪ドル安を招くなど輸入物価を通じたインフレ昂進を招く懸念が高まり、中銀(豪州準備銀行)は物価、及び為替の安定を目的に断続利上げを余儀なくされた。同国では、コロナ禍対応を目的に中銀は利下げに加えて量的緩和政策など異例の対応をみせたものの、コロナ禍からの景気回復が進むとともに住宅需要が押し上げられた結果、住宅価格が急騰するなどバブル化する懸念が高まった。よって、中銀は昨年半ば以降に金融引き締めに転じるなど正常化の動きを進めてきたものの、上述のように物価、及び為替を巡る環境が急変するなかで利上げペースを加速させるなどタカ派傾斜に追い込まれた。他方、物価高と金利高の共存を受けて家計部門を巡る環境は一段と厳しさを増しているほか、金利上昇に伴う不動産需要の低迷を反映して市況は頭打ちしている上、足下の住宅価格は前年比でマイナスに転じるなど調整の動きが進んでいる。同国では銀行セクターの資産の約3分の2を住宅ローンが占めるなど市況動向が貸出態度を左右する傾向が強いなか、足下において調整の動きが進んでいることは貸出態度の悪化を通じて幅広い経済活動の足かせとなることが懸念される。こうしたことから、中銀は先月の定例会合において8会合連続の利上げ実施を決定するも、利上げ幅を3会合連続で25bpに留めるなど、金融引き締めを維持しつつ景気に配慮せざるを得ない難しい状況に直面している(注1)。なお、中銀は依然としてインフレ率が中銀の定めるインフレ目標を大きく上回る推移が続くなど高止まりしていることを理由に、先行きにおける追加利上げに含みを持たせる姿勢をみせているものの、上述のように内・外需双方に足かせとなる材料が山積するなど先行きの景気に対する不透明感が高まるなど、その対応は難しさを増している。他方、昨年7-9月の実質GDP成長率は4四半期連続のプラス成長で推移するなど、景気は着実に底入れする展開が続いているものの、物価高と金利高の共存状態による悪影響が徐々に顕在化する兆候がうかがえる(注2)。さらに、昨年末にかけては全世界的に物価高と金利高の共存が広がるなかで世界経済のスタグフレーション入りが警戒されていることを反映して商品市況は調整の動きを強めており、豪州経済にとっては頭打ちの兆候をみせてきた交易条件指数が大きく低下するなど国民所得に下押し圧力が掛かることにより一段の景気の足かせとなることが懸念される。他方、足下の雇用環境な堅調に推移している上、なかでも労働参加率は過去最高水準になるとともに、失業率と不完全雇用比率を併せた未活用労働率も歴史的低水準となるなど労働需給のひっ迫が意識される展開となっており、賃金上昇圧力が高まりやすい状況にある。こうしたなか、商品市況の上振れの動きに一服感が出ていることを反映して頭打ちの兆しが出ていたインフレ率は11月に前年比+7.3%と前月(同+6.9%)から再び加速しており、洪水被害に伴う野菜など生鮮品を中心とする食料品価格の上昇が物価を押し上げているほか、コアインフレ率も同様に伸びが加速しており、余暇需要の堅調さがインフレ圧力に繋がる動きもみられる。また、物価上昇が続いているにも拘らず11月の小売売上高は前月比+1.4%と前月(同+0.4%)から拡大が続いており、ブラックフライデーのセールなどに伴う耐久消費財に対する需要押し上げなどの効果を考慮する必要があるものの、家計消費は堅調な推移をみせている。よって、上述のように中銀は金融引き締めの動きを強めてきたにも拘らず、依然として家計部門を取り巻く環境は堅調な推移が続いており、当面のインフレ率は高止まりする可能性が高まっていると予想される。さらに、外需の足かせとなってきた中国のゼロコロナ政策は一転終了しており、輸出の押し上げや商品市況の下支えに加え、中国人観光客の流入拡大などを通じて景気を下支えすることも期待される。足下の豪ドル相場を巡っては、国際金融市場において米ドル高に一服感が出ていることを受けて調整の動きが続いた対米ドル相場は底入れしている一方、金融政策の方向性の違いを理由に底堅い動きが続いた対日本円相場は日銀による金融政策の修正を理由に一転して頭打ちしている。当面の豪ドル相場を巡っては、足下の景気の堅調さや物価上昇圧力の高まりを理由に豪中銀による一段の利上げ実施が見込まれることを反映して比較的底堅い展開が続くと予想される。




注1 2022年12月6日付レポート「豪準備銀、景気に不透明要因山積も追加利上げに含みを持たせる姿勢」
注2 2022年12月7日付レポート「豪州、物価高と金利高の共存は着実に景気の足かせとなりつつある」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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西濵 徹

