インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

豪準備銀、景気に不透明要因山積も追加利上げに含みを持たせる姿勢

~豪ドル相場の行方は米FRBの政策運営とそれを踏まえた米ドル相場の動向がカギを握る展開が続く~

西濵 徹

要旨
  • 足下の世界経済はスタグフレーションに陥る懸念が高まっている。他方、商品高による世界的なインフレは、豪州にも生活必需品を中心とするインフレを招いており、不動産市況の高騰も重なり、中銀は断続利上げを余儀なくされている。ただし、断続利上げの余波で足下の不動産市況は一転頭打ちの動きを強めており、物価高と金利高の共存や世界経済の減速懸念も重なり、景気に対する不透明要因は山積している。インフレ率は頭打ちの兆しをみせるも依然中銀の定める目標を大きく上回る推移が続くなか、中銀は6日の定例会合で8会合連続の利上げを実施するも、3会合連続で利上げ幅を25bpとする小幅利上げを決定した。その上で、政策運営を巡って追加利上げに含みを持たせるも、その時期及びペースはデータ次第とする考えを強調した。足下の豪ドル相場は米ドル高一服を受けて底入れしているが、金融政策を巡る「タカ派度合い」を勘案すれば今後の上値余地は限られる。その意味では、先行きの豪ドル相場のカギを握るのは米FRBの政策運営の行方とそれを踏まえた米ドル相場の動向に左右される展開が続くことは避けられそうにない。

中国による厳格な行動制限を伴う『動態ゼロコロナ』戦略への拘泥は、幅広い経済活動に悪影響を与えることで景気の足かせとなる動きが顕在化しているほか、サプライチェーンの混乱は中国経済と連動性の高い国々の景気の足を引っ張る動きがみられる。さらに、年明け以降のウクライナ情勢の悪化による商品高に伴う世界的なインフレを受け、米FRB(連邦準備制度理事会)をはじめとする主要国中銀は物価抑制を目的にタカ派傾斜の動きを強めており、物価高と金利高の共存がコロナ禍からの景気回復が続いた主要国景気に冷や水を浴びせる兆しも出ている。結果、足下の世界経済はスタグフレーションに陥る懸念が高まっている。また、米FRBなどのタカ派傾斜の動きは世界的なマネーフローに影響を与えるとともに、米ドル高を反映して多くの新興国や資源国は資金流出に直面する事態を招いてきた。豪州経済を巡っては、世界的なインフレの動きが同国においても食料品やエネルギーなど生活必需品を中心とするインフレを招いている上、コロナ禍からの景気回復の動きも追い風に不動産市況が急騰してバブルが懸念される事態となったことを受け、中銀(豪州準備銀行)は5月に約11年半ぶりとなる利上げに舵を切るとともに、先月の定例会合まで7会合連続の利上げを余儀なくされる事態に直面している(注1)。一方、豪州は中国を最大の輸出相手とするなか、足下において中国景気の減速が意識される展開が続いていることは外需の足かせとなることが懸念される。さらに、中銀の断続利上げを受けた物価高と金利高の共存は家計消費など内需に冷や水を浴びせることが懸念されるほか、金利上昇を受けて不動産市況は頭打ちに転じている上、足下の住宅価格は前年比もマイナスに転じるなど調整の動きが進んでいる。豪州の銀行セクターについては資産の約3分の2を住宅ローンが占めるなど不動産市況の動向が貸出態度に影響を与える度合いが大きく、このところの市況調整の動きは景気の足かせとなることが懸念される。そして、最大の輸出相手である中国経済が上述のように減速の動きを強めていることも重なり、足下の企業マインドは総じて下振れするなど景気は頭打ちの様相を強めている。なお、国際金融市場においては米ドル高の動きに一服感が出ていることを受けて調整が続いた豪ドルの対米ドル相場は底打ちしているほか、商品市況の底入れの動きに一服感が出ていることを反映して足下のインフレ率、及びコアインフレ率はともに伸びが鈍化に転じる一方、交易条件指数は昨年末をピークに頭打ちの動きを強めるなど景気の足かせとなる動きもみられる。また、インフレ率は伸びこそ鈍化するも依然中銀の定めるインフレ目標を大きく上回る推移が続くなか、中銀は6日の定例会合において政策金利(OCR)を8会合連続で引き上げるとともに、利上げ幅を過去2会合と同様に25bpとする小幅利上げとしてOCRを3.10%、為替決済残高の適用金利も3.00%とする決定を行っている。会合後に公表した声明文では、今回の決定について前回会合同様に「インフレ率が依然高過ぎるなかでインフレ率を目標域に戻すべく需給バランスをより持続可能なものにするため」との考えを示している。その上で、物価動向について「今後数ヶ月に亘って一段と加速が見込まれる一方、その後は世界的な供給懸念の解決や商品市況の調整により来年以降のインフレ率は低下が予想される」とした上で、「メインシナリオでは2024年には3%を少し上回る程度に収束する」との見通しを示した。また、景気動向について「堅調な推移が続くが、先行きは世界経済の減速や金融引き締めによる家計消費の鈍化を受けて緩やかな推移が見込まれる」とした上で「メインシナリオでは2023年及び24年の経済成長率は+1.5%程度になる」との見通しを維持している。他方、雇用環境について「需給は依然タイトだが余剰労働力の吸収に伴い賃金の上昇ペースは鈍化が見込まれる」とした上で、賃金動向について「労働需給のひっ迫や物価上昇に伴い一段の上昇が見込まれる」としつつ「政策決定においては労働コストと価格動向の双方を注視する」との考えを改めて強調している。そして、政策運営を巡って「効果発現のタイムラグを勘案すれば先行きの家計消費は減速が予想されるが、その時期及び程度は不確実である上、世界経済の見通しも不透明」とした上で、「必要なインフレの低下と経済の軟着陸の実現の道筋は極めて狭い」との認識を示しつつ、「今後一定期間は一段の金利引き上げが見込まれるが、その規模とタイミングについてはデータ、物価及び労働市場を巡る見通しに基づいて判断する」とし、一段の金融引き締めに含みを持たせるもその時期や規模はデータ次第とする従来の考えを改めて強調した。上述のように、足下の豪ドル相場を巡っては米ドル高の一服を反映して底打ちする動きがみられるものの、豪州経済に対する不透明要因が山積するなか、先行きは米FRBが利上げペースの縮小が見込まれるも豪州に対して大幅な利上げを繰り返し実施する可能性が高いことを勘案すれば、豪ドルの対米ドル相場の上値余地は限られると見込まれる。他方、日本円に対してはこれまでの米ドル高の動きを反映して日本円に対する売り圧力の巻き戻しの動きが影響して上値が抑えられているものの、先行きについては日銀が緩和を維持すると見込まれることで金融政策の方向性の違いが意識される展開が予想され、結果的に底堅い展開が続くと考えられる。ただし、いずれにせよ当面の豪ドル相場のカギを握るのは米FRBの政策運営の行方と、それを踏まえた米ドル相場の動向に左右される展開が続くであろう。

図表1
図表1

図表2
図表2

図表3
図表3

図表4
図表4

以 上

西濵 徹


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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