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2023.01.06
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南米コロンビア、左派政権の下で懸案の左派ゲリラとの和平は進むか
~一定の前進も依然見通し立たず、経済・政治を巡る不透明感はペソ相場の重石となるなどの問題も~
西濵 徹
- 要旨
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- 南米コロンビアは伝統的に地域随一の親米国ながら、昨年の大統領選を経て同国初の左派・ペトロ政権が誕生するなど「ピンクの潮流」の余波を受けている。この背景にはコロナ禍による経済の疲弊に加え、商品高によるインフレが後押しした可能性があるほか、同国においてはペトロ氏がゲリラ出身者として左派ゲリラとの和平交渉再開を主張したことも影響している。政府は昨年11月末からゲリラ(ELN)と交渉を開始し、政府は昨年末に停戦合意に至ったと発表したが、ELN側は政府発表を否定するなど依然混沌とした状況が続いている。長年の懸案である麻薬問題は違法な原油窃盗を通じて環境問題を招いており、和平合意は一連の問題解決の一歩目となり得るが依然見通しは立たない。他方、米ドル高一服にも拘らず、経済・政治を巡る不透明感がペソ相場の重石となるなど一段のインフレを招くリスクにも引き続き注意が必要になっている。
南米コロンビアでは、昨年6月に実施された大統領選(決選投票)において左派のグスタボ・ペトロ氏が勝利するとともに(注1)、8月に正式に大統領に就任したことにより同国初の左派政権が誕生した(注2)。ここ数年の中南米諸国においては『ピンクの潮流』ないし『左派ドミノ』と呼ばれる動きが広がりをみせており、色々な国で左派政権が誕生しているが、伝統的に米国との関係が深い同国で左派政権が誕生したことはそうしたうねりの強さを示唆していると言える。この背景には、コロナ禍を受けた深刻な景気減速に加え、商品高による世界的なインフレの流れを受けて同国においても食料品やエネルギーなど生活必需品を中心とするインフレが顕在化するなど国民生活を直撃したことが挙げられる。こうしたなか、社会経済格差の解消に向けた年金の再分配による年金改革や公立大学の無償化、国による失業者の直接雇用を訴えるとともに、財源確保に向けた富裕層増税、国内産業の育成を目的とする自由貿易協定(FTA)の見直しや再交渉、法人所得税引き下げを政権公約に掲げたペトロ氏が押し上げられた格好である。さらに、同国では左派ゲリラによる散発的な戦闘が繰り広げられるなど治安情勢の悪化懸念がくすぶるなか、ペトロ氏自身は元々左派ゲリラに所属して投獄された経験がある一方、その後は下院議員や首都ボゴタ市長、上院議員を経るなど豊富な政治経験を有しており、同国最大の武装組織ELN(民族解放軍)との和平交渉再開によるゲリラ問題の解決を進める姿勢を示したことも、追い風になったとみられる。なお、足下の同国経済を巡ってはコロナ禍の感染一巡による経済活動の正常化が進んでいる上、商品高も追い風に外需が押し上げられており、実質GDPの水準はコロナ禍前を大きく上回る水準に回復するなど、マクロ面ではコロナ禍の影響を克服している。他方、足下のインフレ率は20年以上ぶりの水準で推移している上、中銀の定めるインフレ目標を大きく上回る水準で高止まりしており、中銀は一昨年後半以降だけで計8回(累計900bp)もの大幅利上げを余儀なくされるなど、物価高と金利高の共存が実質購買力を下押しして家計消費の足かせとなる動きもみられる。このように経済運営を巡る不透明感がくすぶるなか、政府は昨年11月末にELNとの和平交渉の再開に動いており、政府側交渉人によれば停戦合意も視野に入れる形で交渉を進める考えを示していた。同国では1960年代以降左派ゲリラのFARC(コロンビア革命軍)とELNが政府との間で内戦を展開したが、FARCとは2016年に和平合意に至り戦闘状態が集結する一方、ELNとの間では2017年に交渉を開始するも翌18年に一時停戦が失効し、その後は散発的にテロ攻撃を再開させるなど交渉が停滞してきた。なお、ペトロ大統領は先月末にELNとの交渉により停戦合意に至ったと発表したものの、ELN側は政府発表について検討すべき提案との認識を示す一方、停戦合意自体を否定するなど両者の間で認識に乖離が生じている模様である。これを受けて、同国政府は今月1日から6月末を対象とする停戦に関する法令を停止するなどドタバタの対応をみせている。他方、米国との間では昨年10月に米国のブリンケン国務長官が同国を訪問し、ペトロ大統領との会談で気候変動や不法移民、麻薬対策などの問題で協議するとともに、ゲリラとの和平合意プロセスについても意見交換が行われる一方、同国は反米左派政権であるベネズエラとの国交回復に動くなど、これまでの親米路線から等距離外交に移行する姿勢もうかがえる。麻薬問題を巡っては、精製を目的とする原油の違法窃盗が環境汚染を招く一因となる動きもみられるなか、和平合意の円滑な履行はこうした一連の問題解決に道筋を付ける一歩になると考えられるが、依然その見通しは立ちにくい状況にある。このように経済、及び政治面で不透明要因が山積するなか、国際金融市場においては米ドル高が一巡する動きがみられるにも拘らず同国の通貨ペソ相場は上値が重い展開が続いており、輸入物価を通じた一段のインフレ昂進を招くリスクもくすぶる。ペトロ政権は発足から半年ほどながら、早くも厳しい状況に直面している。



注1 2022年6月20日付レポート「「左派ドミノ」はコロンビアに到達、決選投票を経て同国初の左派政権誕生へ」
注2 2022年8月9日付レポート「南米コロンビア、史上初の左派政権誕生でどうなるか」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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