インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

ニュージーランド、堅調な景気が続くも、先行きに予想以上の景気後退リスク

~先行きの NZ ドル相場は景気後退が意識されるなかで上値の重い展開となる可能性~

西濵 徹

要旨
  • ニュージーランド経済を巡っては、経済活動の正常化が進む一方、外需に不透明感が高まり、国内においても物価高と金利高が景気に冷や水を浴びせる懸念が高まっている。中銀は昨年来断続的な利上げを実施しており、先月の定例会合では利上げ幅を拡大させつつ、追加利上げに含みを持たせる姿勢をみせる。一方、来年はリセッションに陥る可能性を警告するなど、政策対応は困難さを増している様子がうかがえる。
  • 国内外で景気の不透明感が高まっているものの、7-9月の実質GDP成長率は前期比年率+8.31%と加速するなど景気の底入れが確認されている。国境再開による外国人観光客の底入れに加え、NZドル安は財輸出を押し上げるなど外需が景気を押し上げる一方、物価高と金利高の共存は家計消費を下押しするなど内需を巡る状況は厳しさを増している。足下では急騰した不動産市況が利上げの影響で頭打ちの動きを強めるなど逆資産効果が強まることも見込まれるなど、景気に対する不透明感が強まる可能性が高まっている。
  • 国境再開による外国人観光客の底入れ、中国のコロナ規制転換は外需を下支えすると期待されるが、物価高と金利高の共存の長期化は内需を下押しして想定以上に景気後退が深刻化する可能性もある。NZドルは米ドル高の一服を受けて対米ドルで底入れする一方、日銀の政策修正に伴い対日本円で水準が切り下がる動きがみられる。先行きは景気後退が意識されるなかでNZドル相場は上値の重い展開も予想される。

ニュージーランド経済を巡っては、年明け以降にコロナ禍が再燃するとともに、過去の波を大きく上回る事態となるなど、景気に冷や水を浴びせることが懸念されたものの、ワクチン接種の進展を追い風に経済活動の正常化が図られたほか、国境再開に動くなどコロナ禍で疲弊した経済の立て直しに向けた動きを着実に進めてきた。他方、世界経済は商品高によるインフレが進む一方、米FRB(連邦準備制度理事会)など主要国中銀が物価抑制を目的とするタカ派傾斜を進めた結果、物価高と金利高が共存することにより景気の足を引っ張ることが懸念されるなど、スタグフレーションに陥るリスクが高まるなど外需を取り巻く環境は厳しさを増しつつある。なお、世界的なインフレの動きはニュージーランドにおいても食料品やエネルギーなど生活必需品を中心とするインフレを招いている上、経済活動の正常化も追い風とする雇用の回復も相俟って全般的にインフレ圧力が高まる動きがみられる。また、同国ではコロナ禍対応を目的に政府、及び中銀(NZ準備銀行)は政策総動員による景気下支えに動く一方、金融市場におけるカネ余りや低金利環境の長期化に加え、コロナ禍を経た生活様式の変化も重なり不動産市況は急騰するなど『副作用』も顕在化した。こうしたことから、中銀は昨年7月に量的緩和政策を終了させ、10月には利上げに動くなど金融政策の正常化を進めるとともに、その後もインフレ昂進に対応して断続的な利上げを実施するとともに、先月の定例会合でも9会合連続の利上げに加え、利上げ幅を過去最大の75bpとして政策金利は4.25%とするなど、同国においても物価高と金利高が共存する事態となっている(注1)。中銀が断続的な利上げに追い込まれている背景には、国際金融市場における米FRBのタカ派傾斜に伴う米ドル高を受けてNZドル相場に調整圧力が掛かるなど、輸入物価を通じた一段のインフレ昂進が懸念されたことも影響している。そして、中銀は物価抑制を目的とする一段の金融引き締めに含みを持たせる一方、その影響で来年はリセッション(景気後退)に陥る可能性を警告するなど政策対応は困難さを増している様子がうかがえる。

図表1
図表1

このように、足下のニュージーランド経済は国内外に不透明要因が山積する状況に直面しているものの、7-9月の実質GDP成長率は前期比年率+8.31%と2四半期連続のプラス成長で推移するとともに前期(同+7.76%)から伸びが一段と加速しているほか、中期的な基調を示す前年同期比ベースの成長率も+6.4%と前期(同+0.3%)から大きく伸びが加速するなど景気は底入れの動きを強めている様子がうかがえる。国境再開の動きを反映して外国人観光客数の底入れが進んでいるほか、金融市場におけるNZドル安による価格競争力の向上も追い風に財輸出も底入れの動きを強めるなど、外需の堅調さが景気を押し上げる展開が続いている。さらに、中銀による断続利上げの影響が懸念されるも住宅投資は引き続き堅調な推移をみせているほか、企業部門による設備投資の底堅さは固定資本投資を押し上げる動きも続いている。一方、物価高と金利高の共存に伴う実質購買力に下押し圧力が掛かる動きがみられるなか、雇用の回復ペースも頭打ちしていることも重なり、娯楽関連を中心に家計消費が下振れするなどコロナ禍からの景気回復をけん引してきた内需を取り巻く状況は大きく変化している。さらに、中銀による断続的な利上げ実施の余波を受ける形で不動産価格は頭打ちの動きを強めている上、足下では全土で前年を下回る水準で推移しており、逆資産効果も家計消費の足かせとなる動きがみられる。こうした動きを反映して、分野別の生産動向も観光関連やヘルスケア関連のほか、運輸関連など幅広くサービス業の生産は堅調な推移をみせているほか、建設関連の生産活動も底堅い動きをみせる一方、製造業や農林漁業などで生産は力強さを欠くなど対照的な動きがみられる。

図表2
図表2

図表3
図表3

先行きについては、世界的にポスト・コロナに向けた動きが進むなかで観光需要の底入れが見込まれるなか、国境再開の動きも重なり外国人観光客数は一段と底入れの動きを強めると予想されるなど、外需が景気を下支えする余地は小さくないと考えられる。また、世界経済を巡っては、欧米など主要国を中心に景気減速が懸念される一方、中国では景気の足かせとなってきたコロナ規制を一転緩和させており(注2)、最大の輸出相手である中国の方針転換は同国経済の追い風になることが期待されるものの、短期的には中国国内における感染動向の急激な悪化は景気の足を引っ張る可能性に注意が必要である。また、当面のインフレ率は高止まりが見込まれるなか、中銀は年明け以降も一段の金融引き締めを迫られる可能性が高く、結果的に物価高と金利高の共存状態が長期化することにより、家計部門、企業部門ともに足下以上に厳しい状況に直面することは避けられそうにない。足下の企業マインドは製造業のみならず、サービス業においても頭打ちの動きを強めており、先行きは改善が続いた雇用環境に悪影響が出ると見込まれるほか、12月の消費者信頼感指数は過去に遡って最も低い水準となるなど急速に悪化する動きが確認されており、先行きは一段と調整の動きを強める可能性が考えられる。上述のように中銀は来年のリセッション入りを警戒する動きみせているものの、想定以上に景気が下振れする可能性に注意する必要が高まりつつある。このように景気に対する不透明感が強まるなか、国際金融市場においては米ドル高に一服感が出ていることも重なり、NZドルの対米ドル相場は底入れする動きをみせているほか、日本円に対しては金融政策の方向性の違いを理由に堅調な推移が続いてきた。しかし、日本銀行が異次元緩和の修正を決定したことを受けて対日本円相場は大きく下振れしており、先行きについても一転して上値の重い展開が続く可能性が高まっていると判断出来る。

図表4
図表4

図表5
図表5

以 上

西濵 徹


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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