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- 救世主ドラギの命運はいかに
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- イタリアではドラギ首相が率いる挙国一致政権を支える五つ星運動が14日の内閣信任投票を棄権。ドラギ首相は辞任の意向を伝えたが、大統領に慰留され、週明けに改めて信任投票に臨む。そこで議会の過半数の支持が得られなければ、ドラギ首相は辞任する。首相が辞任した場合も、早期の解散・総選挙を行うかは大統領が判断する。次の選挙後は右派ポピュリストが率いる連立政権が誕生する可能性が高い。首相辞任と総選挙前倒しが決まれば、ECBの利上げ開始と合わせて来週に発表予定の南欧金利の上昇抑制策の有効性が疑問視されかねない。
イタリアではドラギ首相の挙国一致政権を支える左派ポピュリスト政党「五つ星運動」が、物価高騰の負担軽減措置に関する法案採決と合わせて行われた14日の内閣信任投票を棄権した。先月の党分裂以前は議会最大勢力で、政権を支える主要政党が造反したことを受け、ドラギ首相は同日、マッタレッラ大統領に辞任の意向を伝えた。政治危機を回避するため、大統領は首相の辞任要求を受け入れなかった。ドラギ首相は今後も議会の過半数の支持が得られるか、週明けに改めて信任投票に臨むことになる。政権運営を継続できる議会の過半数の支持が得られれば、首相を続投するとみられるが、過半数の支持が得られなければ、改めて辞任の意向を伝え、その際は大統領も辞任を受け入れる公算が大きい。
五つ星運動の棄権にもかかわらず、14日の信任投票では議会の過半数が政権を支持した。同様の結果となれば、ドラギ首相の続投が決まることになろう。ただ、これまで政権を支えてきた右派ポピュリスト政党「同盟」からは早期の解散・総選挙を求める声も浮上しており、次の信任投票で政権支持を取り下げる可能性もある。イタリアでは大統領が議会の解散権を持ち、現大統領はこれまでの政権崩壊時や首相辞任時に、解散・総選挙を前倒しすることなく、連立組み換えや別の首相の下で政権を発足することを優先してきた。ドラギ首相が辞任した場合も、すぐに議会の解散・総選挙を決断するのではなく、別の首相の下で議会の過半数の支持が得られるかを模索するとみられる。来年には議会任期満了を控え、仮に別の首相が率いる政権が誕生したとしても短命に終わる。秋の予算審議など重要法案の成立を目指した選挙管理内閣のような形になる可能性もある。次の総選挙を睨んで、このまま政権を支持するのが得策か否かの判断も、週明けの信任投票の各党の動向を左右しよう。ドラギ首相が辞任し、別の首相の下で議会の過半数の支持が得られない場合、解散・総選挙の前倒しが必要となる。各種の世論調査では引き続き、主要政党で唯一、ドラギ政権に参加していない右派ポピュリスト政党「イタリアの同胞」がリードしている。選挙後はEUに懐疑的な右派ポピュリストが率いる連立政権が誕生する可能性が高い。
ECBの利上げ開始が近づくなか、先月にはイタリアの10年物国債利回りが一時4%を突破した。ECBが緊急理事会を開催し、市場分断化(ファンダメンタルズを反映しないユーロ圏各国間の利回り格差)の抑制方針を打ち出したことを受け、イタリア金利の上昇は一服していたが、昨日のドラギ首相の辞任の報を受け、一時30bpほど上昇した。イタリアの主要株価指数は年初来安値を更新し、ユーロの対ドル相場も一時再びパリティを割り込んだ。ドラギ首相の命運を左右する来週には、ECBが11年振りの利上げを開始し、市場分断化対応の具体策の発表が予定されるECB理事会がある。新たな市場分断化対策には、何らかの改革履行を条件にECBが国債を購入するコンディショナリティが設定される可能性が高い。そのタイミングで、ドラギ首相の辞任と解散・総選挙の前倒しが決まれば、イタリアでポピュリスト政権が再び誕生し、改革履行が危ぶまれるとの見方から、南欧金利の上昇抑制策の有効性が疑問視されかねない。
田中 理
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