英国ではジョンソン首相が辞任の意向を固めたことで、与党・保守党の後継党首選がスタートする。選出手続きを所管する「1922年委員会」が11日に開かれ、議会会期が終了する21日までに同党に所属する下院議員による投票で候補者を２人に絞り込み、夏季散会後に議会が再招集される９月５日までに党員投票で後継党首を選出することで合意した。具体的には、

• 立候補の締切は現地時間12日の18時までで、保守党所属議員20名の推薦が必要
• 議員投票は投票箱への投票で行われ、代理投票も認められる
• 13日に初回の議員投票が行われ、30票に届かなかった全ての候補が脱落する
• 14日に二回目、18日に三回目の議員投票が行われ、最下位の候補が脱落する
• 候補者が２人に絞り込まれていない場合、19日と20日にも議員投票を行う
• 21日までに候補者を２人に絞り込む
• 立候補の取り下げで次の投票に進まない候補もいる
• 党員投票は３ヶ月以上前から所属する約16万人の党員を対象に、郵送とオンラインで行われる
• 党員投票の結果は９月５日に公表される
• 立候補の取り下げで党員投票が行われないこともある
  

現時点で11名が立候補しており、パテル内相も出馬を検討しているとされる。候補者はブックメーカーの賭け率の上位順に、

• スナク元財務相
• モーダント国際貿易相
• トラス外相
• トゥゲンハート外務委員会委員長
• バデノッホ元レベリングアップ担当相
• ハント元保険相
• ザハウィ財務相
• ジャビド元保険相
• ブレーバーマン法務長官
• パテル内相
• シャップス交通相
• キシュティ下院議員
  

当初、世論調査やブックメーカーの賭け率で、最有力候補に挙がったウォレス国防相は出馬しない意向を表明した。党首選の大きな争点となっているのが減税の行方だ。最有力候補の１人であるスナク元財務相は、責任ある財政運営の必要性を訴え、物価高騰が沈静化し、財政状況が改善した後の減税を主張している。スナク氏と並ぶ有力候補であるモーダント国際貿易相は、燃料費に係るＶＡＴの軽減など的を絞った減税を主張している。減税を前面に出す有力候補がトラス外相で、来春に予定される法人税率の引き上げ撤回、今春に引き上げた国民保険料の引き下げ、事業税の見直しを主張している。ザハウィ財務相は所得税の基本税率を20％から18％に引き下げ、法人税率の引き上げ撤回を主張。ジャビド元保険相は所得税の基本税率を20％から19％に引き下げ、国民保険料の引き下げを主張。ハント元保険相は法人税率の引き上げ撤回、事業税の時限凍結を主張している。バデノッホ元レベリングアップ担当相、トゥゲンハート外務委員会委員長も減税を支持している。ジョンソン首相辞任の引き金を引いたスナク元財務相に対しては、党内でジョンソン首相に近い議員から後継党首選出を阻止しようとの動きもある。スナク包囲網により、スナク元財務相の首相就任は阻止されるのか、ダークホースが出現するのか、次期首相の座を巡る戦いの火蓋が切られる。