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2022.07.08
アジア経済
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ウズベキスタン、改憲案を巡るデモを機に喧しさが増す懸念
~欧米との関係悪化、中ロへの接近が強まる可能性もあり、地政学上重要な地域を巡る動きに注目~
西濵 徹
- 要旨
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- 中央アジアのウズベキスタンは、カリモフ前大統領の下で強固な政権基盤が築かれた。2016年のカリモフ氏の急逝後は政治体制への影響が懸念されたが、ミルジョエフ現大統領に円滑な権力移行が行われ、昨年の大統領選でも圧勝で再選するなど域内でも強固な権力基盤が維持された。しかし、政府が先月公表した改憲案を巡り西部のカラカルパクスタン自治共和国で大規模デモが発生し、治安部隊との衝突で多数の死傷者が発生した模様である。同国はかつて欧米と良好な関係を築いたが、2005年のアンディジャン事件を巡って関係が冷え込み、中ロへの接近を強めた経緯がある。その後は欧米と関係改善の兆しがみられたが、デモへの対応を巡って再び悪化する懸念もあり、地政学的に重要な地域の動きは再び喧しさを増すとみられる。
中央アジアのウズベキスタンは、1991年の旧ソ連崩壊を受けた独立以降、2016年まで初代大統領のイスラム・カリモフ氏による独裁体制の下、隣国カザフスタンと同様に強権的な統治を通じて強固な政権基盤が築かれてきた。2016年にカリモフ氏が急逝した後は政治体制に影響が出ることが懸念されたものの、同年末に実施された大統領選においては事実上の『後継候補』とされたミルジョエフ首相が9割を超える得票で圧勝し、2代目の大統領に就任した。さらに、ミルジョエフ氏は昨年10月に実施された大統領選においても8割を上回る得票での圧勝により再選を果たすなど、安定的な政権基盤を維持することに成功してきたとみられる。しかし、先月に政府が発表した憲法改正案が同国の火種となる可能性が高まっている。憲法改正案では大統領任期が現行の5年から7年に延長されるほか、死刑制度の廃止などが示されていたなか、同国西部のカラカルパクスタン自治共和国を巡って同国の主都ヌクスにおいて数千人規模のデモが発生する事態となった。具体的には、現行憲法においては同自治共和国が住民投票を経て独立することが可能とされているものの、改憲案では同国の主権や分離独立に関する権利がすべて抜けていたため、それに伴い自治権限が縮小することに対する警戒感が惹起されたとみられる。政府は大規模デモを鎮圧すべく治安部隊を派遣したものの、衝突によって多数の死傷者が出るとともに、多数が拘束される事態に発展するなど混乱が広がった。これを受けて、ミルジョエフ大統領は同自治共和国に対して今月3日から1ヶ月間の非常事態宣言を発令するとともに、改憲案の対象から同国を外すなど事実上の撤回に追い込まれている。また、同地域においてはインターネットへの接続が遮断されており、政府は外部との情報の遮断により早期の事態鎮静化を図ろうとしている模様である。なお、同国は歴史的にロシアとの関係が深い一方、アフガニスタンと国境を接することでイスラム過激派の流入によるテロ行為を抑えるべく、かつては反テロを目的に欧米と良好な関係を築き、空軍基地に米軍の駐留を許可していた。しかし、2005年に同国東部のフェルガナ地方のアンディジャン市において武装勢力が刑務所を襲撃して受刑者を解放するとともに政府庁舎を占拠する事件が発生し、同時にカリモフ大統領及び政権の退陣を求める大規模デモが発生したことを受け、政府が治安部隊を投入して多数の死傷者が発生するアンディジャン事件を機に欧米との関係が悪化した。同事件の後に欧米や日本は国際的な枠組に基づく調査の実施を求めたほか、米軍が同国から撤退したことを受けてロシアと同盟関係を築くとともに、中ロが主導する上海協力機構(SCO)への参加を通じて中国との関係も深めてきた。他方、同国を含む中央アジアは地政学上重要な地域であり、ここ数年は欧米との関係改善に向けた動きが漸進してきたほか、日本との間では伝統的に良好な関係が維持されてきた経緯がある。今回のデモを巡っては、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)が透明性のある独立した調査を求める旨の声明を発表しており、上述のアンディジャン事件の後と同様の議論が活発化する可能性が予想される。ただし、ミルジョエフ大統領の対応はカリモフ前大統領と同様のものとなる可能性が高く、結果的にロシアや中国との距離が一段と近付くとともに、欧米などとの関係が再び冷え込むことも考えられる。折しもロシアによるウクライナ侵攻を巡っては、ウズベキスタンはロシアとの経済的結び付きの深さも理由に明確なスタンスを示して来なかったものの、仮に欧米などとの関係が悪化すればそのスタンスが変化することも懸念される。上述のように、地政学上重要な地域である同国を巡る動きは今後喧しさを増すことが予想される。
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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