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市場対話を放棄したBOE

~サプライズ据え置きに続いて、今度はサプライズ利上げ~

田中 理

要旨
  • 11月に市場予想に反して利上げを見送ったBOEは、12月にサプライズ利上げ。オミクロン株の感染拡大など不確定要素も多いが、物価の一段の上振れや一時帰休補助金終了後の労働需給の逼迫継続などを受け、早期の利上げが必要と判断した。来年4月に向けて物価の一段の加速が見込まれ、感染拡大による景気への影響が軽微であれば、来年2月か5月の追加利上げを予想する。

英イングランド銀行(BOE)は16日に12月の金融政策委員会(MPC)の結果を公表し、①政策金利を0.1%→0.25%に引き上げることを賛成8・反対1の賛成多数で、②社債の買い入れ残高を200億ポンドに維持することを全会一致で、③国債の買い入れ残高を8750億ポンドに維持することを同じく全会一致で決定した。

BOEは利上げがほぼ確実視された11月のMPCで政策金利を据え置いた後、新型コロナウイルスの感染再拡大やオミクロン株の脅威が広がったことを受け、最タカ派メンバーであるソンダース外部委員がオミクロン株の影響把握を待つ利点に言及したこともあり、今回のMPCでは利上げが見送られるとの見方が支配的だった。オミクロン株は重症化しないとの見方がある一方で、英国内で猛烈な勢いで感染が広がっており、感染者の死亡例も発生した。感染再拡大の影響を見極めるのであれば、金融政策レポート(旧物価レポート)の発表月である来年2月まで利上げ決定を先送りする選択肢もあった。

だが、11月のMPC以降に発表された経済データは軒並み、9月末の一時帰休補助金終了後の労働市場での需給逼迫継続、物価の持続的な上振れや賃金上昇圧力の高まりが確認され、利上げ先送りによる弊害が多くのMPCメンバーに共有された模様。エネルギー価格の動向や公共料金引き上げのタイミングを考えると、英国の消費者物価は来年4月に向けて一段と上昇率が加速する公算が大きい。今後も労働需給の逼迫傾向が続き、物価の上振れが長期化するとみられるなか、オミクロン株による景気の下押しが限定的である限り、追加利上げが検討されることになろう。

オミクロン株の感染拡大による詳細な影響検証は、来年2月の金融政策レポートで行われることになろうが、物価の上振れ、労働需給の逼迫継続、オミクロン株の景気下押しが限定的との前提が崩れない限り、来年2月か5月のMPCで追加利上げの可能性が高い。どちらのMPCで追加利上げが決定されるかは、今後のオミクロン株の感染動向によって決まる。2回の利上げ(0.15%と0.25%)で政策金利を0.50%に引き上げた後は、物価上昇がやや沈静化することもあり、しばらく様子見に転じるが、中期的にインフレ率を2%でアンカーするには更なる追加利上げが必要とみられ、2022年末時点の政策金利は1.0%に達するとの見方を維持する。

以上

田中 理


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