ライフデザイン白書2024 ライフデザイン白書2024

NFT×地方創生

~その可能性と留意点~

稲垣 円

目次

この1、2年ほどの間に、地域課題の解決の方法としてNFT(Non Fungible Token:代替不可能なトークン)を活用した取り組みが全国的に展開されている。かくいう筆者も、こうした事業の一つに賛同し、先日はじめてNFTを購入する機会を得た。そこで本稿では、実際に購入した当事者の視点から、地方創生・地域活性化においてNFTを活用する意味や可能性について考えてみたい(注1)。

1. NFTが認知されるようになったきっかけ

NFTといえば、まずアート作品を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。デジタルアート作品が高価格で落札されたニュース(注2)は、「NFT」という言葉を一般の人びとに認知させるきっかけになった。しかし、最初に注目を浴びたのはそれ以前2017年に発表されたゲームだといわれる(注3)。

そのゲームは、さまざまな見た目や特徴を持つデジタル版の猫を購入し、育成・交配し、生まれてくる子猫(親の特徴を引き継いだ唯一無二の価値を持つ)を取引することで、仮想通過を稼ぐことができるというものである。高価なものだと十数万ドル(当時)で販売されるなど、投資性のあるゲームとして世界的にヒットし、NFT市場が拡大するきっかけとなった(注4)。

2. NFTを活用して地域活性化に取り組むとは

では、地域活性化にNFTを活用するといった場合、どのような方法があるのか。

各地の事例を調べると、デジタルアートの販売だけでなく、観光客誘致、デジタル住民票、ふるさと納税の返礼品、生産者が減少する農産物支援など、その方法はさまざまだ。事業は地域単独ではなく、NFTを活用した事業を展開する民間企業をパートナーとして、協力しながら取り組むものが主流である。

具体的なものでは、地域の産品や観光名所と、有名なキャラクター、あるいは著名なアーティストによって制作されたアートがコラボレーションしたデジタルアートをNFTとして販売するケース、また複数地域と連動させることで、コレクション欲を掻き立てるような仕掛けや、NFT購入者にだけ当該地域の特産品の購入権を付与するものもある。観光客誘致型の取り組みとしては、現地に行くことがNFTを購入する条件となっていたり、現地に行くことで所有するNFTの絵柄が変化したりするといった取り組みもある。

「デジタル住民票」としてNFTを発行した事例もある(注5)。新潟県長岡市の旧山古志村(山古志地域)は、錦鯉をモチーフに制作されたデジタルアート(NFT)を住民票としての機能を併せ持つものとして販売し、購入者は「デジタル山古志」の村民になることができる仕組みをつくった。デジタル村民は住民と交流したり、NFT販売で得た財源を基に行われる地域の課題解決の事業に携わったりすることができるという。すでに1,500点のNFTが発行され、デジタル村民が実人口(約800人)を超えている。

農産物と連動した取り組みとしては、北海道夕張市の特産品である「夕張メロン」の生産者を支える取り組みが挙げられる(注6)。これは、生産者の高齢化もあり生産量が減少傾向にあることから、商品に付加価値をつけて生産者を支援するという目的で導入されたものだ。デジタル会員証としてNFTを販売、購入者は夕張メロン1玉と引き換えられる権利を獲得し、併せて「デジタルアンバサダー」となることができる。またアンバサダー同士が交流できるオンラインコミュニティへの参加権利が付与され、NFT所有者のみが体験できる特典などが今後用意されるという。

3. 地域活性化とNFTの相性・親和性

自治体がNFTを活用する背景を考えると「ご当地もの」「その地域でしかない/体験できない」といった地域がもつ唯一性という点と、やはり唯一無二の価値を所有することができるNFTとの相性が良いのではないかと考えられる。加えて、インターネット上で扱われるものであるため、場所(居住地域、国)、時間などを超えて、すべての人が対象になる。主催する側もスピーディーに、またコストを抑えながら基盤を創ることができ、価値あるモノとして評価(購入)されれば、地域課題解決のための財源を獲得することができる。

4. 不確実性を減らし、価値を高める可能性

特定の地域を応援する方法の一つとして、「ふるさと納税」があげられる。自治体に寄付し、かつ税金の控除も受けられるとあって、利用者は年々増加している(注7)。しかし、生活者視点でみると、地域の応援というよりは返礼品の内容と寄付金額のバランス(コストパフォーマンス)を重視して決定する場合が多く、地域を応援する意識や、納税をきっかけに直接現地を訪問したり支援し続けたりする動機付けとしては弱い。また、返礼品の価格の変動や何かの理由で当初予定されていた返礼品の供給が難しくなった場合、生活者が寄付するかどうかには不確実性が伴う。一方、NFTであれば、「供給できなくなる」可能性は低いだろう。また、デジタルアートそのものを返礼品とする場合もあるが、NFT購入者だけに特産品の獲得権や購入権を付与したり、観光誘致と組み合わせて(現地に来なければNFTを取得できない、現地を訪問すればアートの絵柄が変わるなどの特典)、現地に赴くインセンティブを施したりすることもできる。そしてNFT自体が唯一無二のものとして購入者の手元に残り続けるので、所有することによって特定の地域との関わりを強く意識する、という効果もあるかもしれない。

5. 行動を促し、コミュニティを創ることができるか

筆者が最も関心を寄せることは、「特定の地域だけのNFTを所有する」ことによって、所有者は当該地域に関わる一員としての自覚を持つことができるか、また、そうした人びとから自発的な活動が生まれるようなコミュニティが創出されるのか、という点である。NFTはその価値が高まれば、所有していることが一つのステータスになるが、地域活性化や地方創生という観点から考えると、単に所有やコレクション、投資の対象としてではなく「いかに地域との関わりを持てるのか、創出できるのか」、つまり、関係人口(注8)や地域に関心をもつ仲間を増やし、リアルな関係をつくることができるのか、という視点は欠かせないと考える。そのためには、所有者と地域(住民や生産者等)が交流できる仕掛けやツールを別に検討する必要がある。交流を促し、活発化させるための主催者(地域)側の運営、話題提供や所有者だけが優先的に体験できる特典など、NFT所有者の自発的な行動を促すインセンティブが必要であろう。主催者とNFT所有者が「こんな取り組みがやりたい」と一緒に考えながら、並行して実践していくのも良い。事業を評価する指標としても重要になる。

6. 地域を応援する方法の一つとして

他方で、NFTは全てを叶える魔法ではない。高価格で売買されたことが注目されがちだが、唯一無二の価値を持つNFTであれば、確実に、簡単に収益が得られるというわけではないだろう。デジタルアートにしても、その作品や作家に対する信頼がなければ、また顧客が満足する作品を作り続けることができなければ、そもそも売れないのではないか。地方創生の施策として活用する場合にも、NFTはあくまで地域に関わるための参加証、許可証、またはパスポートのような位置づけであり、それをきっかけに所有者がどのような形や方法で地域に関わる・体験することができるのかなど、主催者の世界観や企画内容への共感を通じて、支援者(地域のファン)を増やしていくことが必要になる。売買で終わりではなく、地域との関係を維持するための施策も考え続けなければならない。

生活者の中には、こうした新たな取り組みに対して、苦手意識を持っていたり、中には拒否反応を示したりする人もいるだろう。NFTを活用することが正解か否かではなく、地域を応援する方法が一つ増えたということだ。各地で行われる地域活性化に関わる事業がすぐにNFTにとって代わるような話ではない。現行のさまざまな取り組みと併せて、自分に合った地域を応援する方法を試してみると良い。先に述べたように、所有者同士、または所有者と地域の交流によって、どのような動きが生み出されていくのか、そして自身がどのようにそこに参加していくのか、まずは楽しみながら経験してみてはどうだろうか。


【注釈】

  1. 本稿では、NFTそのものについての詳説はしない。詳しく知りたい場合は、以下を参照されたい。
    柏村祐「NFTの衝撃~75億円で落札されたデジタル絵画の謎~」2021年5月
    柏村祐「キャラクターNFTの衝撃~あなたの知らない猿や犬が登場する話~」2022年3月
    柏村祐「ウクライナ「NFT寄付」の衝撃~72時間で暗号資産6.7億円分を集めた新しい寄付の形~」2022年3月
    柏村祐「ウクライナ「NFT博物館」の衝撃~公式情報とアートが融合する新たなNFT寄付の形~」2022年4月
  2. AFP通信「デジタルアート、75億円で落札 NFTで史上最高額」2021年3月
  3. CryptoKitties
  4. 例えば、以下のような報道が挙げられる。
    BBC「CryptoKitties craze slows down transactions on Ethereum」2017年12月
    Bloomberg「CryptoKitties Mania Overwhelms Ethereum Network's Processing」2017年12月
    COINTELEGRAPH「CryptoKitties Sales Hit $12 Million, Could be Ethereum’s Killer App After All」2017年12月
  5. Nishikigoi NFT
  6. MeTown
  7. ふるさと納税の利用者の人数は、ふるさと納税に関わる控除適用者数を集計することで得られる。総務省の資料(2022年7月)によれば、令和4年度課税における控除額の実績は約5,672億円(対前年度比:約1.3倍)、控除適用者数は約741万人(同:約1.3倍)。
  8. 移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域と多様に関わる人々を指す。「関係人口」と呼ばれる地域外の人材が地域づくりの担い手となることが期待されている。

【参考文献】

  • 株式会社あるやうむ https://alyawmu.com/
  • 泉佐野市プレスリリース「オリジナルの NFT アートをふるさと納税返礼品に採用!世界に1つ!唯一無二のデジタルアートを返礼品として提供!」2022年7月
  • 桜川市役所HP「NFTアートがふるさと納税返礼品に追加されました」2022年8月
  • 総務省自治税務局市町村税課「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和4年度実施)」2022年7月29日
  • 総務省「地域への新しい入口 関係人口ポータルサイト」
    https://www.soumu.go.jp/kankeijinkou/
  • 日本経済新聞「Web3の現場から デジタル村民、旧山古志村に里帰り」2023年1月17日
  • CryptoNinja Partners https://www.ninja-dao.com/cnp
  • PRTimes「全国のJAで初のNFT活用。JA夕張市公認、夕張メロン「デジタルアンバサダー」事前登録開始」2022年12月1日

稲垣 円


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。