家族との対面機会の自粛傾向

~感染予防と周囲の意識~

北村 安樹子

目次

1.続く自粛傾向

新型コロナウイルスにともなう緊急事態宣言およびまん延防止等重点措置が全面解除となった9月末以降、感染拡大は急速に下火となっている。当研究所がその直前の9月中旬におこなった調査では、自粛要請が断続的に続いてきた過去1年間に、別居している家族と「会った」と答えた人は約7割を占めた(注1)。ただし、回答者の多くは「別居している家族に会うのを控えている」とも答えており、家族と会うことを控える意識が続いていたなか、迷いながらも会う機会を持った人が多かったことがうかがえる。

本稿では、家族と会ったと答えた人における会った理由に関する回答結果から、意識の面で長く続いてきた他者との対面機会の自粛傾向の行方について考える。

2.コロナ下で家族が会った理由

先の調査で家族と会った理由として最も多くあげられたのは「物の受け渡しなど、必要な用事があったから」(41.8%)であり、「余暇や休日を一緒に過ごすため」(37.3%)、「食事をするため」(30.6%)がこれに続いていた(図表1)。一方、これらの理由とともに、安否確認や手助け、付き添いなどのサポートを家族や自分が必要としたケースも合わせて約3割を占めた(図表1の「いずれか該当」の割合)。なお、最も多くあげられた「物の受け渡しなど、必要な用事があったから」と答えた人の約3割が、相手・自分が安否の確認・手助け・付き添い等を必要とした理由のいずれかをあげている。家族の家にあるものを取りに行ったり、相手が必要とするものを届けたケースのほか、それらの用事を行う際に近況を確認したり、サポートを行ったケースなどもあったのだろう。

これらのうち、最も多くあげられた「物の受け渡しなど、必要な用事があったから」と、「家族や自分が安否の確認・手助け・付き添い等を必要とした(図表1の「いずれか該当」の割合)」に注目してその割合を性年齢別にみると、前者は男女とも40代を中心に幅広い世代で、後者は50代以上で多くあげられている(図表2)。後者は40代以下に比べ50~60代で明らかに高く、女性では約半数、男性でも約4割を占める。外出や対面機会の自粛が要請されて以降も、別居する家族に手助けを必要とする事態が生じるなどして対面機会をもった人が、50代以上の男女ではかなり多かったと考えられる。

図表
図表

3.感染予防と周囲の意識

10月以降、感染拡大が急速に下火となったことを受けて、感染が再拡大した場合の医療体制の確保とともに、経済社会活動の回復に向けワクチン接種や検査の陰性証明による行動制限の緩和策が検討されてきた。現在、新たな変異ウイルスの出現が懸念されているが、緩和の条件や感染拡大時の対応が明確になることで、家族などへの手助け等を行いやすくなる場合や、対面で会う時間をもちやすくなる場合もあるだろう。

ただし、9月中旬におこなった先の調査では、会ったと答えた人の多くが自宅や相手宅など第三者との接触を避けられる場所で、感染予防をおこなった上で会っていた(注2)。ワクチン接種が拡がっても、現段階では感染の完全な終息を見込むことは難しく、感染への脆弱性等によっては、行動制限緩和の動きに不安や抵抗感を感じる人もいると思われる。今後の展開で、意識の面で長く続いてきた他者との対面機会の自粛傾向に変化がみられるかどうかには、自宅等の私的な場所を含めて、人々の移動・外出や他者との対面時の行動が、感染拡大や周囲の人の不安や抵抗感につながらないことも重要になる。感染予防に関する正しい知識の普及とともに、周囲への感染予防を意識したマナーや対策が引き続き求められるだろう。


【注釈】

1)北村安樹子「コロナ下での別居家族との対面機会~約8割が依然自粛、会った人の7割も迷いながら会った1年~)」2021年10月。

2)別居家族と会った人の7割以上が、自分または相手の自宅で会ったと答えている。

【関連レポート】

1)北村安樹子「「声や画面でつながる時間」の意味~第3回新型コロナウイルス調査から~」2021年3月。

2)北村安樹子「声や画面で家族とつながる時間への意識~第3回新型コロナウイルス調査から~」2021年1月。

なお、当研究所のホームページには、上記レポートを含め、新型コロナウイルスの感染拡大がもたらした様々な変化に注目したレポート・ニュースリリースの一覧ページ「新型コロナ(生活)」がある。

北村 安樹子


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

北村 安樹子

きたむら あきこ

ライフデザイン研究部 副主任研究員
専⾨分野: 家族、ライフコース

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