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四半期見通し『欧州~イラン情勢の影響をどう考える~』(2026年7月号)

田中 理

目次

イラン情勢の影響は避けられない

1~3月期のユーロ圏経済は約3年振りとなるマイナス成長に転落したが、これはアイルランドの大幅な下振れが影響した。法人税率が低く、英語が公用語のアイルランドには、世界的なIT企業や製薬会社などが数多く進出する。多国籍企業による知的財産権の移転や本国への利益送金は、同国の経済規模対比で大きく、しばしば経済成長率の攪乱要因となってきた。アイルランドを除くユーロ圏の成長率は、トランプ関税などの悪影響を乗り切り、緩やかな回復軌道を続けている。構造不況に陥ったドイツの低迷が続くなか、復興基金を通じた財政資金の流入などに支えられ、南欧諸国の好調が景気を牽引している。

イラン情勢の悪化は、資源輸入国の多い欧州経済を下押しするが、欧州は中東への資源依存がそれほど高くない。悪影響は物不足ではなく、価格上昇の形で現れる。資源価格の上昇は企業収益を圧迫し、その一部は価格転嫁され、家計の購買力が目減りする。悪影響は避けられないが、ロシアによるウクライナ侵攻後の資源価格の高騰時と比べて、物価の押し上げは小幅なものにとどまることが予想される。当時は、原油価格の高騰に加えて、ロシア産ガス輸入の縮小・停止の影響が響き、ガス価格が大幅に上昇した。今回は原油価格が前回並みの水準に上昇するが、ガス価格の上昇が限定的だ。欧州の電力料金はガス価格に連動するため、前回ほどの物価上昇にはつながらない。

財政政策の転換が景気を下支え

南欧諸国の高成長を支えてきた復興基金は、2026年末に新規の財政支援を終了する。2027年以降の景気にブレーキが掛かることを警戒する声もあるが、支援終了を睨んだ駆け込み申請が予想され、潤沢な財政資金の流入が続きそうだ。加盟国が受け取った資金を設備投資などに回すのはさらに先で、復興基金の効果は当面残存することが予想される。追加資金の受領には、復興計画で約束した脱炭素やデジタル化などに関した定量・定性目標の達成が必要で、構造改革の進展も南欧諸国の景気拡大を支えることになりそうだ。

産業用エネルギー価格の高止まりや中国市場での自動車の販売不振など、競争力低下に苦しむドイツは昨年、財政収支の均衡化を義務付ける憲法規定の改正に着手し、財政拡張に舵を切った。歳出の伸びは当初の計画対比で下振れしているが、財政転換の効果が徐々に顕在化しつつある。ドイツ以外の欧州諸国も、防衛費の拡大、化石燃料依存の脱却、経済安全保障の強化に向けて、財政拡張に動き始めている。欧州連合(EU)は、防衛力強化に必要な財政資金を加盟国に提供するとともに、防衛装備品の調達やエネルギー転換に必要な財政支出の拡大を、EUの財政規律の適用対象から除外し、各国の財政拡張を後押しする。

年始のマイナス成長やイラン情勢の悪影響を背景に2026年のユーロ圏の成長率は低迷するが、2027年には成長率の再加速が予想される。

図表
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田中 理


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

田中 理

たなか おさむ

経済調査部 首席エコノミスト(グローバルヘッド)
担当: 海外総括・欧州経済

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