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2026.02.19
米国経済
米国経済見通し
トランプ政権
内外経済ウォッチ『米国~トランプ政権の米国第一主義で米国は高成長へ~』(2026年3月号)
桂畑 誠治
中間選挙に向けた共和党の劣勢で政治的焦燥
2026年11月の中間選挙が迫るなか、トランプ政権は厳しい政権運営を強いられている。歴史的に中間選挙では与党が議席を減らす傾向にあるが、最新の世論調査でも、上院では共和党が過半数を維持するとの見方がある一方、下院では民主党が優勢との見方が強まっている。昨年10月から11月にかけて43日間に及んだ政府機関の一部閉鎖による混乱が共和党の支持率を押し下げており、全議席が改選される下院を民主党が奪還すれば、トランプ大統領に対する弾劾裁判や、大統領令に基づく強硬策への調査委員会設置など、政府の政策運営が停滞する事態に陥ろう。こうしたレームダック化を阻止するため、トランプ政権は「米国第一主義」に基づく公約の早期実現を加速させる構えである。
インフレ対策の遅れと移民政策の混乱
選挙の最大の争点は、生活実感に直結する経済と移民政策である。経済問題では、政府は経済の好調、労働市場の改善、インフレの低下を強調しているが、公約であるインフレ抑制は実際には実現しておらず、国民の不満は高まっている。医薬品や食料品への関税免除・撤回などの対策を講じているものの、市場価格の高騰により国民の不満を解消するには至っていない。
一方、移民政策では、バイデン前政権下の治安悪化を強調すべく、不法移民の強制調査を一段と強化している。これが保守層の支持を繋ぎ止める一方で、労働力不足や人権問題という新たな火種を生んでいる。特にミネソタ州で発生した、移民取り締まり中の連邦職員による市民射殺事件は、政府への批判を再燃させる要因となっている。
力による現状変更の常態化
対外的には、軍事的な優位性を背景とした「力による現状変更」が常態化しつつある。その象徴がベネズエラへの介入である。現職大統領の身柄拘束という前代未聞の強硬手段に出た背景には、世界最大の石油埋蔵量を誇る同国の利権再編がある。米国企業による再進出と利益配分の提案は、中ロの影響力を排除し、米国のエネルギー安全保障を確固たるものにする狙いがある。この強硬姿勢は、イランの反政府デモへの介入や核保有阻止への軍事行動の示唆、さらにはグリーンランド買収交渉を巡るデンマークへの制裁示唆など、多方面に波及しており、国際社会に極めて高い不透明感をもたらしている。
対外関係の再構築で米国は独り勝ちの可能性
26年1月、トランプ大統領は計66の国際機関や条約からの脱退、および資金拠出の停止を命じる大統領令に署名した。これは「米国第一主義」のもと、米国の直接的な利益に寄与しない多国間枠組みを大胆に切り捨てる姿勢を決定づけたものである。同盟国に対しても、一方的な関税賦課や防衛費負担の大幅増額を要求するなど、商業的実利を最優先する強硬なネゴシエーションを徹底している。
今後も関税をツールとした対外関係のリストラクチャリング(再構築)は継続される見通しである。これに伴い、世界的な経済・安全保障の不確実性は一段と高まることが予想される。しかし、たとえ中間選挙後に議会との対立でレームダック化したとしても、トランプ政権が敷いたこれらの政策は米国経済に対してプラスに働き続ける可能性が高い。関税による税収の増加が歳出拡大に利用できるほか、米国が優位な内容の各国との通商合意によって、米国からの農作物やエネルギー等の輸出拡大や、米国への資本投資の拡大が見込まれる。さらに、国内外企業による米国内への生産設備投資の回帰など、世界的な混迷の中で米国経済の独り勝ちの構図が鮮明化し、高い経済成長が実現する公算が大きい。
桂畑 誠治
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 桂畑 誠治
かつらはた せいじ
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経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済
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