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- 四半期見通し『日本~26年度は緩やかな持ち直しへ~』(2026年1月号)
マイナス成長も、均せば緩やかな回復
内閣府から公表された2025年7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率▲2.3%と、6四半期ぶりのマイナス成長となった。その主因は住宅投資であり、これだけで成長率を前期比年率で▲1.4%Pt押し下げた。25年4月の建築基準法・省エネ法改正によって、住宅建設や大規模リフォームのコスト増・手続き負担増・工期長期化が生じた。こうした負担を嫌った多くの事業者が改正前に着工を前倒ししたことで3月の住宅着工は急増したが、駆け込み需要の反動が生じたことで4-6月期の着工は歴史的な減少となった。この着工減がタイムラグをもって住宅投資に反映されたことで、7-9月期の住宅投資は前期比▲8.2%と急減している。また、輸出が同▲1.2%と2四半期ぶりに減少したことも成長率の押し下げ要因となっている。

住宅投資の落ち込みは一時的なものにとどまる可能性が高いことに加え、輸出も4-6月期の増加からの反動が生じた面もあるため、7-9月期の成長率の弱さについて過度に悲観視する必要はないだろう。これまでのプラス成長と均してみれば景気は上向きと判断できる。米国経済が関税引き上げのもとでも底堅さを保っていることで、当初懸念されていたような日本からの輸出が失速する事態は避けられており、景気腰折れに直結する動きは現時点で確認されていない。
輸出下振れの可能性は残る
もっとも、輸出の先行きには不安が残る。米国経済は底堅く推移しているが、方向としては減速傾向にある。関税引き上げの価格転嫁も徐々に進んでいくことに加え、雇用情勢に陰りが出ていることが、低所得者層を中心として個人消費を下押しするだろう。また、日本からの対米自動車輸出については、これまでは輸出価格を関税の分だけ引き下げることで現地での販売減を回避してきたが、関税率が15%に定まったことで今後は値上げに踏み切る可能性が高く、米国内での販売台数も下押しされるだろう。輸出は10-12月期も減少する可能性がある。住宅投資の落ち込みに歯止めがかかることや設備投資の増加によって10-12月期のGDP成長率はプラスに転じるとみられるが、輸出が低調に推移することで、7-9月期の落ち込みと比べると小幅な持ち直しにとどまるだろう。牽引役に欠けるなか、年度下期の日本経済は回復感に乏しい状態となる可能性が高い。
26年度は緩やかな持ち直しへ
こうした足踏みを経たのち、26年度の日本経済は徐々に上向きの動きが強まることが予想される。特に米国景気の安定化と実質賃金の下げ止まりという二つの要因が、日本経済への追い風として意識される局面になるだろう。
まず米国経済では、関税引き上げの悪影響がなお残るものの、24〜25年にかけて行われた利下げの効果がタイムラグを伴って26年の景気を下支えしていくとみられる。関税ショックによって製造業や低所得層を中心に痛みは残るが、金融環境が過度な引き締め状態からは解放されるうえ、減税の実施が可処分所得と企業収益を底上げし、内需の下支え要因として働くことも重要だ。結果として、米国経済は安定化に向かうことが予想される。米国向けの輸出も26年度には徐々に底入れしていくとみられ、企業業績の下押しにも歯止めがかかるだろう。
企業収益の安定は、設備投資の持ち直しにつながる。省力化投資やデジタル関連投資、脱炭素関連の設備投資は、構造的な人手不足やサプライチェーン再構築の流れのなかで不可避のテーマとなっており、企業にとって喫緊の課題だ。収益環境の好転と先行き不透明感の和らぎが重なれば、設備投資に前向きな見方が広がるだろう。
また、26年度の日本経済を見通す上で重要なのが、実質賃金の下げ止まりである。ここ数年、日本の家計は歴史的な物価高に直面し、名目賃金は上がっているにもかかわらず、実質賃金はマイナスで推移してきた。こうした状況が個人消費の足を強く引っ張ってきたが、26年度には下押しが解消に向かう可能性が高い。

26年度の実質賃金の動向を見通す上で重要な26年春闘では、賃上げ率は5.20%(厚生労働省ベース)と、3年連続で5%台の賃上げが実現すると予想する。①深刻化する人手不足、②歴史的な物価高の継続と実質賃金減少への対応、③高水準の企業収益、が寄与するだろう。以前は、トランプ関税の悪影響により企業業績が大きく下振れ、26年春闘では賃上げ率が大幅に鈍化するのではと懸念されていたが、実際には高い賃上げが実現する可能性が高まりつつある。

こうしたなか、コストプッシュの一巡に伴って物価上昇率が鈍化することで、実質賃金はマイナス圏から脱するだろう。このことが個人消費の安定化につながる。25年度までの家計は、食料品の値上がりに直面するなか、節約志向を強めてきた。実質賃金がプラス圏に戻り、将来に対する賃上げ期待が一定程度定着すれば、消費マインド改善もあいまって、前向きな支出も少しずつ戻るとみられる。もっとも、実質賃金の増加幅は小幅で、個人消費が力強く伸びることまでは期待できない。あくまで緩やかな回復にとどまるとみられる点には注意が必要である。
総じて、26年度の景気は、米国の利下げと減税効果による景気安定化を背景に輸出が底入れし、企業収益と設備投資が持ち直すなか、国内では賃上げと物価鈍化の組み合わせによって実質賃金がマイナス圏から脱し、個人消費が下支えされることで、緩やかに持ち直す展開が予想される。
新家 義貴
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。