注目のキーワード『ノーベル経済学賞』

阿原 健一郎

10月7日から14日にかけて、2024年のノーベル賞が発表されます。ノーベル賞は、ダイナマイトの発明で知られる化学者・実業家のアルフレッド・ノーベルの遺言に基づき、物理学、化学、生理学・医学、文学、平和、経済の6部門で、「前年に人類のために最大の貢献をした人たち」に贈られます。厳密には、1901年のノーベル賞設立当初から授賞が始まったのは経済以外の5部門で、経済部門はスウェーデン国立銀行の提案で1969年から授賞が開始されました。そのため、正式名称はノーベル経済学賞ではなく「アルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン国立銀行賞」であることや、賞金もノーベル財団ではなくスウェーデン国立銀行からの拠出金であること等、他の部門とはやや扱いが異なります。もっとも、物理学賞や化学賞と同じように、スウェーデン王立科学アカデミーによる厳正な選考のうえ、世界でも最も優れた研究者に授与される学術賞のひとつであることに間違いはありません。

昨年は、女性の労働市場の参加や男女の賃金格差について功績のあるクラウディア・ゴールディン氏が受賞しました。女性の就業率が、経済の主要産業の移り変わり(農業から工業、工業からサービス業)に伴い、U字カーブのように推移することを明らかにしました。受賞時には、日本の労働市場にも触れ、女性の労働参加率の改善は素晴らしいが「女性が労働に参加するだけでは不十分」として、格差解消に向けた取り組みが必要である点を指摘しています。また、ここ最近の経済学賞の受賞者を振り返ってみると、学術的な貢献はさることながら、実社会へのインパクトといった面でも多大な影響を与えた研究者が受賞しているようです。2020年は、電波の周波数の割り当て等で研究成果が活用されているオークション理論のポール・ミルグロム氏とロバート・ウィルソン氏、2022年は、金融危機が起きる仕組みの解明と対処法を示した元FRB議長のベン・バーナンキ氏ら3人が受賞しています。今年の受賞者は誰になるのでしょうか?学術的な研究内容はもちろん、その功績が私たちの生活にどう役立っているのかにも着目すると面白いかもしれません。

(経済調査部 主任エコノミスト 阿原 健一郎)

阿原 健一郎


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