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- 企業活動レビュー(非財務情報の視点)『人的資本開示の現状と課題』(2024年7月号)
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2023年は人的資本開示元年
2023年3月期以降の事業年度にかかる有価証券報告書より人的資本開示が義務付けられた。対象は4,000社近くにのぼる。2023年は「人的資本開示元年」といえる。2024年は昨年の開示を踏まえ、各社更に充実した開示に取組むものと考えられる。そこで、昨年度の開示状況を振り返りつつ、更なる開示充実に向けたポイントを考える。
非上場企業でも4割が開示を重視
2023年7月の株式会社日本能率協会マネジメントセンター調査によれば、人的資本開示は、上場会社の方が重視している傾向が強いが、非上場会社でも4割近くが重視している(資料1)。

人的資本経営に関しては非上場の中小企業等でも人材確保等の為にも重要との認識が高まっており、今後も人的資本開示は一層広がっていくだろう。
企業は何を開示したのか
株式会社日本能率協会マネジメントセンターの調査によれば、社外に開示している項目(上位5位)には、上場・非上場企業とも、「コンプライアンス・倫理」「育児休業」「採用」「ダイバーシティ」が入っている(資料2)。一方、「エンゲージメント」「サクセッション(後継者)」という重要な事項については上場・非上場会社とも開示が遅れているという結果も同時に確認されている(資料略)。
企業としては取組みができている、或いは開示できる事項からまず開示を始めたという側面もあることがうかがえる。

昨年度開示の好事例から考える3つのポイント
①経営戦略との一貫性の明示
多くの開示において人材戦略には言及されているが、その中で人材戦略と自社の経営戦略との一貫性が明確に示された好事例も存在する。一方で、人材育成等の取組みの理由を、自社の目指す姿や経営戦略と整合的なストーリーとして示すことができていない企業も多い。自社の開示の独自性を打ち出すためにも、経営戦略との一貫性を示すことは重要であろう。
②独自指標による人的資本経営効果の見える化
自社の人的資本経営の取組みの効果を示す独自指標を設定し、その状況及び目標を明示することで、人的資本経営の成果の見える化を推進している企業が存在する。しかし、取組みのKPIを設定するところまでは進んでも、人的資本への取組みの成果を明確に示す独自指標の設定までは至っていない企業が多かった。今後、各社の創意工夫により人的資本経営の効果を示す独自指標の設定が課題となるであろう。
③経営目標としての強いコミットメント
上記2つの要素が示されると共に、経営の強いコミットメントを感じさせる開示が見られた。一方、内容として過不足なく、量的にも多くの事項が記載されているが、人事部等担当部門の取組みの羅列に止まり、経営としての拘りが感じられない開示も多かった。今後人的資本経営は、担当部門を超える全社的課題としての位置づけが求められことになろう。
河谷 善夫
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。