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- 四半期見通し『欧州~最悪期を脱したユーロ圏景気~』(2024年7月号)
マイナス成長脱却、景気は底入れ
物価高による消費抑制、大幅利上げによる金融環境の引き締まり、主要輸出先である中国景気の足踏みなどを背景に停滞を続けてきた欧州経済に底入れの兆しが広がっている。ユーロ圏の実質国内総生産(GDP)は、昨年後半に2四半期連続マイナス成長(テクニカル・リセッション)に陥った後、今年1~3月期にプラス成長に復帰した。3月に好不況の分岐点を回復した製造業とサービス業を合成した購買担当者指数(PMI)は、4~6月期入り後に一段と業況が上向いている。

背景には、歴史的な物価高が沈静化に向かうなか、賃金上昇率が加速しており、家計の実質購買力が回復していることがある。一時は前年比で2桁台に達したユーロ圏の消費者物価の上昇率は、エネルギー価格の押し上げ一巡で沈静化が進み、昨年10月以降、2%台で推移している。変動の大きい食料やエネルギーを除いたコア物価も、今年3月以降、2%台後半まで沈静化が進んできた。過去の物価上昇が遅れて反映される形で、最近の欧州各国の労使交渉では高めの賃上げ妥結が相次いでおり、賃金上昇率が加速している。
域内の金融政策を一元的に担う欧州中央銀行(ECB)は、中期的な物価安定の達成に自信を深めている。昨年秋以降、政策金利を据え置いてきたが、6月に約5年振りの利下げに踏み切った。
物価沈静化と利下げ開始が回復を後押し
先行きのユーロ圏経済は、物価沈静化と賃上げ加速に伴う家計消費の回復、ECBの利下げ開始による金融環境の改善、中国景気の底入れによる輸出回復などを背景に、回復基調を続ける公算が大きい。もっとも、利下げ開始後も政策金利は歴史的な高水準にあり、当面は住宅投資や耐久財消費の足枷となろう。また、欧州連合(EU)は過去数年、危機時対応で財政規律の適用を全面的に停止していた。今年は規律の適用が再開され、財政運営は緩やかな引き締め方向に転じることが予想される。特に政府の予算措置が違憲と判断されたドイツでは、財政引き締めの強化が必要となる。景気の本格回復は利下げ効果が十分に浸透する2025年以降となろう。2024年のユーロ圏の年間成長率は+0.6%と主要先進国・地域の中でも低成長にとどまると予想する。2025年は+1.3%と潜在成長率並みの成長軌道への復帰を見込む。
6月の利下げ開始後も金融環境の引き締まりが続くため、ECBは2024~25年を通じて利下げを継続する公算が大きい。サービス物価や賃金の高止まりが続いており、インフレ再燃を警戒し、慎重な利下げを余儀なくされよう。6月の利下げ開始後に3.75%にある下限の政策金利(預金ファシリティ金利)は、2024年末までに3.25%、2025年末までに2.25%に引き下げられると予想する。

田中 理
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

