インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

内外経済ウォッチ『アジア・新興国~ロシア政府は次期大統領選を見据えて「大盤振る舞い」に傾く~』(2023年11月号)

西濵 徹

目次

足下のロシア経済は着実に底入れが進む展開

ロシアでは来年3月に次期大統領選(第1回投票)が予定されるが、2020年の改憲を経てプーチン氏が立候補可能となっている。仮にプーチン氏が出馬して再選を果たした上で、改めて連続2期の任期を全うすれば、最長で83歳まで大統領となるなど、事実上の『永世大統領』となることが可能となる。とはいえ、ウクライナ戦争を巡っては、事態がこう着化して見通しが立たない状況が続いている。他方、同国経済はウクライナ侵攻を機に欧米などが経済制裁を強化したことを受け、直後の景気は大きく下振れした。しかし、その後は中国をはじめとする欧米などの制裁に同調しない国々との連動を強め、これらの国々との迂回貿易や並行貿易のほか、原油などエネルギー資源の輸出も拡大している。

結果、昨年半ばを境に景気は底入れしており、今年4-6月時点における実質GDPの水準は依然ウクライナ侵攻直前を下回るも、仮に足下のペースで景気の底入れが進めば年末にはウクライナ侵攻前の水準を回復すると見込まれる。さらに、足下ではロシアとサウジアラビアが価格維持を目的とする自主減産を年末まで延長していることを受け、同国産原油価格は欧米などが設定した上限(1バレル=60ドル)を上回る推移が続く。ウクライナ侵攻に伴う歳出増が財政の足かせとなる状況が続く一方、原油関連収入は底堅く推移しおり、結果的に財政的な観点でみた継戦能力はむしろ高まっている。

「大盤振る舞い」の背後でインフレ再燃の懸念も

こうしたなか、プーチン大統領と主要閣僚が来年度予算(2024-26年度予算)に関するビデオ会議を実施し、歳出規模を大幅に拡充する方針を明らかにしている。これは、プーチン政権が『特別軍事作戦』と称するウクライナ侵攻に伴う軍事費の膨張が影響している。さらに、侵攻の長期化を受けて国民の間に不満がくすぶる事態を抑えるべく、社会保障支出をはじめとするバラ撒き政策に動くことも影響するとみられる。なお、政府は大幅な歳出増にも拘らず原油や天然ガス関連の歳入増を追い風に財政赤字は小幅に留まるとの見方を示すが、今年は8月時点の財政赤字が▲2.36兆ルーブルに達しており、結果的に赤字幅が膨れ上がる可能性は高い。

ただし、8月末時点の外貨準備高は4,369億ドルに達し、その一部が財政補填に用いられる上、原油収入の底堅さを勘案すれば財政面での継戦能力は依然高い。他方、商品市況の底入れやルーブル安に伴う輸入インフレの動きも重なり、インフレが再燃している。よって、中銀は戦争中にも拘らず物価と為替の安定を目的に利上げに動く難しい対応を迫られている。ただし、政府による『大盤振る舞い』は、労働力不足も相俟ってインフレ圧力を増幅させるため、中銀の政策対応を一段と困難にすると見込まれる。先行きは慎重な政策を志向する中銀と、政府内の戦争推進派との間で政策運営を巡る対立、軋轢が高まることに注意する必要があろう。

資料1 実質GDP(季節調整値)と成長率(前年比)の推移
資料1 実質GDP(季節調整値)と成長率(前年比)の推移

資料2 インフレ率の推移
資料2 インフレ率の推移

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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