インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

四半期見通し『アジア・新興国~世界経済の動向、利上げの累積効果や食料インフレがアジア景気の重石に~』(2023年10月号)

西濵 徹

目次

中国景気には不透明感の拭えない状況が続くか

足下の中国景気を巡っては、昨年末以降のゼロコロナ終了を受けた底入れの動きに早くも息切れ感が出ている。さらに、若年層を中心とする雇用環境の厳しさなどを背景に家計消費は弱含んでおり、頭打ちの様相を強める動きもみられる。当局は内需喚起による景気テコ入れに動く姿勢をみせており、先行きについては政策支援が及ぶ分野などを中心に景気下支えの効果が発現することは期待される。ただし、不動産市場の低迷は幅広い経済活動の足かせとなる懸念がくすぶるとともに、雇用環境の急激な改善も見通しにくい状況を勘案すれば、当面の景気が大きく上振れする事態は想定しにくい。

さらに、不動産市況の低迷は、不動産収入を『打ち出の小槌』としてきた地方財政の悪化のさらなる悪化を招く懸念もある。他方、当局は今春に開催した全人代において今年の経済成長率目標を「5%前後」と昨年(5.5%前後)から引き下げており、その後のGDP統計の改定も重なり、今年の経済成長率についてはゲタのプラス幅が拡大しており、目標実現のハードルも引き下げられた経緯がある。年前半時点における経済成長率は5.5%と目標を上回る水準を維持しているなか、年後半には減速が避けられないと見込まれるものの、通年の経済成長率は依然として目標をクリア可能と判断出来る。しかし、来年については一段と低下していくことは避けられないと予想される。

アジア新興国景気にも不透明要因が山積の状況

その他のアジア新興国については、中国経済への依存度が相対的に高いASEAN諸国、NIEs諸国を中心に、中国景気の動向に左右される展開は避けられないと見込まれる。中国当局が団体での海外旅行の解禁に動いたことは、観光関連などサービス輸出の面で中国への依存度が高い国々にとり追い風となることは間違いない。また、ここ数年の米中摩擦やデリスキングを目的とする中国を中心とするサプライチェーンの見直しの動きは、地理的に中国と近く、製造業の集積度合いが比較的高いASEAN諸国などを中心に対内直接投資の受け入れに繋がることも期待される。

他方、昨年は商品高や米ドル高などに伴うインフレに加え、中銀による利上げ実施の動きが重なり、景気の足かせとなる懸念を招いたものの、足下では商品高の一巡や米ドル高の一服も重なりインフレ率は鈍化している。中銀にとっては一段の金融引き締めに動く必要性は後退しているものの、米FRBなど外部環境が金融政策の制約要因となる状況は変わらず、利上げの累積効果が家計消費など内需の重石となる可能性はくすぶる。そして、異常気象による食料インフレが再燃する可能性もあり、家計消費をはじめとする内需を抑える展開が続くと見込まれる。さらに、先行きは欧米など主要国景気が頭打ちの様相を強めることも外需の重石となり、多くの国で成長率は勢いを欠く展開が続くであろう。

資料1
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資料2
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西濵 徹


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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