- HOME
- レポート一覧
- 第一ライフ研レポート
- 四半期見通し『アジア・新興国~中国景気に早くも「息切れ」の兆しか…~』(2023年7月号)
底入れした中国景気に早くも息切れの兆しか
中国では、ゼロコロナ終了への戦略転換により経済活動の正常化が進むとともに、国内外で人の移動が自由となり、コロナ禍で混乱したサプライチェーンの修復が進むなど景気の底入れを促す動きが確認された。しかし、欧米など主要国を中心とする世界経済の減速懸念に加え、米中摩擦なども重なり、世界経済との連動性が比較的高い製造業を中心に企業マインドは早くも頭打ちしている。さらに、戦略転換を受けて大幅に改善したサービス業の企業マインドも頭打ちしており、コロナ禍で悪化した若年層を中心とする雇用回復が遅れるなど、景気の『息切れ』を示唆する動きもみられる。
なお、一昨年末以降の中銀による断続的な金融緩和を追い風に足下の中国金融市場は『カネ余り』が意識されやすく、景気を押し上げることが期待されやすい状況にある。しかし、中国当局は余剰資金が不動産市場に流入してバブル化することを警戒する姿勢を崩さず、結果的に不動産セクターを巡る不透明感が投資活動の足かせとなり、景気の重石となる展開が続くと予想される。人口規模の大きさは、経済活動の正常化によるペントアップ・ディマンドの発現も含めて世界経済に影響を与えると期待されるが、若年層を中心とする雇用不安は家計部門の節約志向の高さに繋がるなか、過去のような景気回復を期待することは難しくなっている。

世界貿易の低迷が景気の足を引っ張る懸念も
その他のアジア新興国については、金利高と物価高の共存が景気の足を引っ張る懸念がくすぶるものの、商品高の動きが一巡していることに加え、国際金融市場における米ドル高の一服も重なり、各国でインフレが鈍化する動きがみられる。他方、経済活動の正常化による賃金上昇圧力の高まりを受けて、コアインフレ率が高止まりする動きがみられるなど、インフレ収束にはほど遠い状況が続く。一部の国では利上げ局面の休止に動く流れもみられるが、インフレ圧力がくすぶるなかで各国中銀は難しい対応を迫られる局面が続いている。
なお、中国依存度が高いASEANを中心に財・サービスの両面で外需が押し上げられることは期待される。しかし、欧米など主要国を中心とする世界経済の減速懸念に加え、米中対立の動きは世界貿易の足かせとなると見込まれるなど、経済構造面で外需依存度が高い国々を中心に景気の足を引っ張られる可能性はくすぶる。利上げの累積効果が家計消費など内需の重石となる動きもみられるなか、各国は景気下支えに向けた財政支援の動きを強化させている。しかし、こうした動きは短期的にみれば景気にプラスとなるものの、財政悪化などファンダメンタルズの悪化を招くほか、クラウディング・アウトにより中長期的な観点から潜在成長率の低下を招く懸念があることに留意する必要がある。

西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
-
経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
執筆者の最近のレポート
-
台湾・9月輸出、半導体などの旺盛さを反映して過去最高に(Asia Weekly) ~原油価格の再上昇を受けて、多くのアジア新興国でインフレ率が再び加速~
アジア経済
西濵 徹
-
新たなスキャンダルに揺れるインド、今度は「選挙」を巡る問題噴出 ~選挙制度の信頼が揺らぎ、モディ政権への批判が再燃、政治不安が新たなリスクとなるか~
アジア経済
西濵 徹
-
トルコ金融市場の混乱が収まらない ~投資信託の規制強化が株安を招き、実体経済や政策運営への波及が懸念される~
アジア経済
西濵 徹
-
インド中銀、3年8ヵ月ぶりの利上げ、政策スタンスも転換 ~インフレを警戒した「予防的引き締め」、追加利上げに含みも慎重姿勢、ルピーや株価は?~
アジア経済
西濵 徹
-
ベトナム景気は引き続き外需・投資をけん引役に加速 ~7-9月は4年ぶりの高成長、市場格上げ期待の一方で物価・対外収支に懸念材料~
アジア経済
西濵 徹
関連テーマのレポート
-
インド中銀、3年8ヵ月ぶりの利上げ、政策スタンスも転換 ~インフレを警戒した「予防的引き締め」、追加利上げに含みも慎重姿勢、ルピーや株価は?~
アジア経済
西濵 徹
-
ベトナム景気は引き続き外需・投資をけん引役に加速 ~7-9月は4年ぶりの高成長、市場格上げ期待の一方で物価・対外収支に懸念材料~
アジア経済
西濵 徹
-
タイ、洪水被害が景気の新たな重石に ~経済活動への影響が広がるなか、債務増大と金利高止まりが財政対応を制約~
アジア経済
西濵 徹
-
中国、当局は景気下支え策を強化も内需回復は道半ば ~PMIは幅広く改善、人民元高基調が続く一方で雇用環境には不透明感が残る~
アジア経済
西濵 徹
-
アジア・パシフィック経済マンスリー:2026年9月 ~AI需要に沸く外需と、利上げに揺れる内需~
アジア経済
阿原 健一郎

