四半期見通し『日本~景気は持ち直しも、回復ペースは緩やか~』(2023年7月号)

新家 義貴

目次

景気は持ち直し

2023年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率+2.7%(前期比+0.7%)の高成長となった。世界的な製造業部門の不振や海外経済減速の影響から財輸出が大幅に落ち込んだことが足を引っ張った一方、サービス消費の回復により個人消費が高い伸びになったことや、インバウンド需要が急回復したことが押し上げ要因となり、GDP全体では持ち直す形となった。

個人消費は、新型コロナウイルスの感染第8波が落ち着いたことに加え、ウィズコロナが一段と進展したことで消費者の慎重姿勢が和らいだことが影響し、物価高のなかでも高い伸びになった。外出手控えが解消に向かったことに加え、全国旅行支援といった政策面での後押しもあり、サービス消費が前期比+0.7%と10-12月期(同+1.2%)に続いて高い伸びになったことが牽引役となっている。また、インバウンド需要(非居住者家計の国内での直接購入)は前期比+67.0%と急増し、実質GDPを前期比年率で+1.1%Ptも押し上げるなど、今回の高成長に大いに貢献している。このように、外需の下押しをコロナ禍からの経済活動正常化の流れが上回ったことで、1-3月期の景気は持ち直した。

経済活動正常化の動きが続く

先行きについても、景気は緩やかに回復すると予想する。押し上げ要因となるのはインバウンド需要の復活とサービス消費の持ち直しである。これまで続けられていた水際対策が終了したことで訪日へのハードルは下がっており、今後は外国人観光客のさらなる増加が期待できる。足元で低水準にある中国人観光客も次第に持ち直しに向かうとみられ、今後もインバウンド需要の増加が景気の下支え要因となる。

5月8日より新型コロナウイルスの感染症法上の分類が、これまでの2類相当から季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げられたことに象徴されるように、コロナ禍からの正常化の動きは強まる方向にある。濃厚接触者の外出制限が撤廃されることや、感染時にも幅広い医療機関で受診できるようになることなどは、消費者の慎重姿勢を和らげ、ウィズコロナを一層進展させることに繋がるだろう。出遅れていたサービス消費の持ち直しが見込まれることで、物価高が続くなかでも個人消費は回復の動きを続けることが予想される。

図表1
図表1

低迷する外需が成長を抑制

一方、低調な外需が引き続き成長を抑制する。世界的な財需要の低迷は続いており、製造業部門は未だに悪化傾向にある。景気見通しの悪化に伴い発注が手控えられているほか、需要が財からサービスにシフトしていることも影響しているとみられる。グローバルな製造業の動向に影響されやすい日本からの輸出は今後も下押し圧力を受けるだろう。こうした製造業部門の悪化に加え、利上げの効果が顕在化することも今後の世界景気を下押しする。米国景気は足元で依然底堅さを保っているが、過去の利上げの累積的な悪影響がタイムラグをもって顕在化することを考えると、景気は先行き下押しされるだろう。既に銀行の融資基準が大幅に厳格化されていることを踏まえれば、今後の企業向け融資の縮小を通じて設備投資が抑制される可能性も高い。海外経済の減速が予想されるなか、日本への悪影響も避けられず、財輸出は今後も低調に推移すると予想している。また、我が国景気の牽引役として期待される設備投資についても、輸出低迷で先行き不透明感が強いなか、企業が投資を積極化させることは考えにくく、投資手控えも生じやすくなる。

サービス消費の拡大やインバウンド需要の持ち直しに代表されるコロナ禍からの経済活動正常化の動きが続くことから、今後も景気は回復基調で推移するとみられるが、外需の下押しにより成長ペースは抑制されることになる。23年後半の成長率は+1%に届かず、回復ペースは緩やかなものにとどまると予想している。

一方、24年には、世界的な製造業の調整局面は一巡することが予想される。在庫調整の終了により製造業の生産悪化にも歯止めがかかり、次第に景況感も上向いてくるだろう。日本からの財輸出も持ち直しに転じる見込みだ。こうした状況を受け、企業の設備投資意欲も持ち直すだろう。コロナ禍からの正常化に伴うリバウンド局面が一巡することで個人消費は緩やかな伸びにとどまる一方、輸出が持ち直しに転じることで、24年の景気は上向く可能性が高い。

以上を踏まえ、実質GDP成長率を23年度が+1.0%、24年度が+1.3%と予想する。

図表2
図表2

企業の価格転嫁意欲は強い

消費者物価指数(生鮮食品除く総合)は先行きも高い伸びが続き、2023年度は前年度比+2.6%と、2%を明確に上回るだろう。

足元では、エネルギー以外のコアコア部分で伸びが大幅に高まっている。食料品のみならず、その他の品目でも伸びが高まっており、企業の価格転嫁が従来の想定以上に進んでいることが確認できる。過去の円安等によるコスト上昇の未転嫁分が残っていることに加え、電気代やガス代の上昇、人件費負担の増加等が値上げの理由として挙げられるようになっており、しばらくは積極的な価格転嫁が実施される可能性が高い。川上からの物価上昇圧力が足元でピークアウトしつつあることや、22年の物価上昇ペースが非常に速かった裏が出ることも相まって、23年後半については鈍化を見込むが、コンセンサス対比で鈍化ペースは鈍いものにとどまるだろう。23年中に2%を割り込まない可能性も十分あるだろう。

新家 義貴


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