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2023.04.19
新興国経済
原油
内外経済ウォッチ『アジア・新興国~OPECプラスが予想外の追加減産、原油価格の安定を重視~』(2023年5月号)
西濵 徹
国際原油価格は世界経済の減速懸念が重石に
足下の世界経済を巡っては、物価高と金利高の共存が長期化していることを受けて、欧米など主要国を中心に景気の頭打ちが意識されている。その一方、中国においては景気の足かせとなってきたゼロコロナが終了するとともに、一転して景気底入れが確認されている。よって、世界経済には好悪双方の材料が混在する状況にあると捉えられる。なお、昨年来の国際原油価格は、前半にはロシアのウクライナ侵攻をきっかけに欧米などが対ロ制裁を段階的に強化したことによる供給不安を理由に上振れしたが、後半以降は世界経済の減速懸念が強まったことを受けて一転して頭打ちする動きをみせてきた。
こうした事態を受けて、ロシアを含む主要産油国の枠組であるOPECプラスは、頭打ちした国際原油価格の下支えを目的に昨年11月から日量200万バレルの協調減産の実施に舵を切った。さらに、その後も原油価格の維持を図るべく、日量200万バレルの協調減産を維持する対応をみせてきた。しかし、今年3月には米国での銀行破たんをきっかけに国際金融市場に動揺が広がるとともに、実体経済に悪影響が出るとの警戒感が強まり、原油価格に一段と調整した。他方、上述のように中国経済の底入れを受けて、多くの中東産油国にとり財政均衡水準を下回る水準に低下した原油価格は再び底入れするなど持ち直しの動きをみせていた。

原油価格高止まりで世界の分断が深刻化するか
しかし、OPECプラスの枠内で最大の産油量を誇るサウジアラビアは5月から年末まで自主的に日量50万バレルの自主減産を行う方針を決定した。さらに、イラク、アラブ首長国連邦、クウェートなど7ヶ国もこの動きに同調しており、サウジを併せた8ヶ国の減産枠は日量115.7万バレルに達する。また、ロシアは欧米によるロシア産原油への価格上限設定措置に対抗して3月から自主的に日量50万バレルの自主減産を実施しており、OPECプラス全体では日量365.7万バレルと世界需要の約3.7%が減産される格好となる。
こうした動きは、中国の介入によりサウジとイランが外交関係の再開に動くなど、中東における米国の影響力が低下していることが影響していると考えられる。他方、中国は割安でロシア産原油の輸入を拡大させるなど、原油価格の上振れによる影響を軽減させる動きをみせており、今回の決定を静観する構えをみせる。足下の世界情勢を巡っては、欧米などと中ロが分断するなか、いわゆる『グローバルサウス』と呼ばれる新興国に対して両陣営が影響力を強めようと模索する動きがみられる。原油価格の高止まりは多くの新興国でエネルギー価格の上昇を通じたインフレに繋がり、結果的にそのことが世界的な分断の動きを深刻化させる可能性も孕んでいると捉えることが出来る。

西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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西濵 徹

