インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

内外経済ウォッチ『アジア・新興国~カザフスタンは旧体制の脱却が進むか~』(2023年1月号)

西濵 徹

中央アジアのカザフスタンでは11月の大統領選で現職のトカエフ氏が圧倒的な得票率で再選を果たした。同国ではナザルバエフ前大統領の下で強権的な統治が行われるとともに、大統領一族が経済及び政治を牛耳る展開が続いてきた。さらに、2019年の大統領退任後も憲法上の『国家的指導者』という地位を背景に事実上影響力を保持した。ただし、こうした状況に国民の不満がくすぶるなか、コロナ禍で経済が疲弊する一方で物価高が顕在化したことを受け、昨年1月に燃料価格引き上げをきっかけにデモが活発化する事態に発展した。

さらに、デモはナザルバエフ氏や一族への批判に発展したため、トカエフ大統領はロシアなどで構成される集団安全保障条約機構(CSTO)にデモ鎮圧を要請する一方で事実上の政変を決行してナザルバエフ氏の失脚に発展した。一方、トカエフ氏はCSTOに部隊派遣を要請するも、ウクライナ侵攻ではロシアに対して距離を置く姿勢をみせる。さらに、憲法改正によりナザルバエフ氏の影響力排除に動き、大統領任期を変更するなど政治改革を前進させた。その上で、当初は2024年に予定された大統領選を11月に実施するなど、政治改革を前倒しさせる姿勢をみせた。大統領選に向けては与野党がトカエフ氏を統一候補に推したため、トカエフ氏の勝利は既定路線であったものの、足下のインフレ率は一段と加速するなど国民生活は厳しく、地域ごとに温度差がみられた。

図表1
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なお、暴動をきっかけに調整圧力が強まり最安値を更新した通貨テンゲ相場は落ち着きを取り戻したものの、国際金融市場や商品市況の揺さぶられる不安定な展開が続いている。トカエフ氏は選挙公約で「過去の失敗を踏まえて修正を行うとともに、蓄積された問題を解決せねばならない」とするなど前政権を批判したほか、選挙後にも「憲法改正による新たな政治機構への意向を遂行する」と宣言するなど旧体制からの脱却を前面に押し出す姿勢をみせている。さらに、ウクライナ情勢を巡ってロシアと距離を置くなか、今後は「一帯一路」を通じて関与を強める中国との関係深化が進むと予想される。一方、原油や天然ガスなど鉱物資源や穀物などの輸出をテコに米国や欧州諸国に接近する動きもみせており、『ロシアの裏庭』を巡って地政学上の重要性が高まることも考えられる。

また、トカエフ氏はナザルバエフ氏の影響力が残る昨年に選挙が実施された議会を巡って、ナザルバエフ氏の影響力排除を目指して来年に再選挙を実施するとしているが、過去には政権に都合の良い憲法解釈や改正が繰り返し実施されてきたことを勘案すれば、野党による政治活動が事実上制限されるなど民主化にほど遠いなかで政治改革が進むかが注目される。また、今後は地域におけるパワーバランスが激変していくことも予想され、トカエフ氏による一挙一動を注視する必要性は高まっていると判断出来る。

図表2
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西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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