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- 内外経済ウォッチ『アジア・新興国~「暴走特急」に薪をくべるトルコ中銀~』(2022年11月号)
足下の世界経済は、中国による『ゼロ・コロナ』戦略が中国景気の足かせとなり、商品高による世界的なインフレを受けて米FRBなど主要国中銀はタカ派傾斜を強めて欧米など主要国景気も下振れするなど、全体的に頭打ちしている。他方、主要国中銀のタカ派傾斜は国際金融市場のマネーフローに影響し、経済のファンダメンタルズの脆弱な新興国に資金流出が集中している。2013年のいわゆる「テーパー・タントラム」では、経済のファンダメンタルズが極めて脆弱な5ヶ国に資金流出の動きが集中し、トルコはその一角となった。
昨年以降の同国では、原油などエネルギー資源の価格上昇が経常赤字を拡大させるとともに物価上昇を促し、通貨リラ相場の調整も輸入物価を通じてインフレを昂進させた。こうした状況にも拘らず、中銀は昨年末にかけて4会合連続の利下げに動き、年明け以降も中銀はインフレの上振れにも拘らず緩和姿勢を維持した結果、昨年末にかけてリラ相場が暴落した。中銀はリラ相場の防衛策を発表して一旦は落ち着きを取り戻したが、その後もリラ相場はじり安の展開が続いた。中銀はインフレ昂進にも拘らず8月の定例会合で利下げに動き、9月の定例会合でも追加利下げに動くなど主要国中銀と真逆の方向に動いた。中銀のこうした動きは、予てより『金利の敵』を自任するエルドアン大統領が中銀に対して圧力を強めてきた流れを反映したものと捉えられる。

足下のトルコ景気は、リラ安を追い風とする外国人観光客数の堅調な流入、ウクライナ情勢の悪化によるロシア人富裕層などの逃避資金が景気を押し上げる一方、物価高による実質購買力の低下が景気の足かせとなる懸念が高まっている。同国では来年6月に次期大統領選と総選挙が行われるなど『政治の季節』が近付いており、政権維持を目指すエルドアン大統領及び与党AKP(公正発展党)にとっては、物価高と金利高の共存が国民生活に悪影響を与えるなか、早期にこうした状況を脱することを目指していると考えられる。
中銀はインフレが昂進するなかで異例の利下げに踏み切るとともに、一方で金融機関に対して輸出業者や中小企業などを除いた部門への貸出抑制に動いており、物価抑制を目的に景気に対して『ブレーキ』を掛ける動きをみせるような難しい対応を迫られている。また、国際金融市場の動揺に対する耐性の観点から過小状態が続く外貨準備を巡っては、UAEや中国、カタール、韓国との通貨スワップ協定の締結を受けて増加する動きがみられる。しかし、依然IMFが示す外貨準備の適正水準を大きく下回るなど心許ない状況は変わらない。エルドアン政権はウクライナ問題を巡り関係国の間に立つ動きをみせており、外交問題をきっかけにリラ相場が暴落する懸念は後退しているが、経済政策の拙さは世界的にも突出しており、先行きの同国経済を巡る状況は厳しい展開が予想される。

西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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西濵 徹

