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- 内外経済ウォッチ『日本~欧米を超える日本の成長率~』(2022年11月号)
日米欧の成長見通し
来年2023年の景気情勢はどうなりそうか。国際機関が発表する日米欧の経済成長率の予測値では、なんと日本は欧米よりも成長率が高くなる。これは前年の落ち込みの反動からではない。
OECD(経済開発協力機構)の9月予測では、2023年の実質成長率の見通しは、米国が前年比0.5%(前回6月同1.2%)、ユーロ圏が同0.3%(前回6月同1.6%)、日本が同1.4%(前回6月同1.8%)となっている。日本の成長ペースは巡航速度を維持できる程度の悪くない数字である。
理由は、欧米がインフレ対策の利上げを行う見通しがあるからだ。特に、米国では、消費者物価の上昇率を現在の8%ペースから2%台まで落としていくつもりだから、非常に痛みが大きくなると考えられている。
日本は、欧米に比べると低インフレなので、金融引き締めの痛みはなく、海外向けの輸出が落ちることに懸念がある。日銀が金融緩和の姿勢を変えていないことが、金融引き締めをする欧米とは全く違っている。
インフレ対策の副作用
欧米との違いはもうひとつある。各国とも、物価対策を政府は講じている。英国などは、法人税・所得税率を優遇して、電気代・ガス代を低く抑えようとしている。こうした支援は、一見経済に優しく、家計・企業に歓迎されるものに思える。しかし、インフレ率は逆に高まる結果を招く公算が高い。例えば、電気代・ガス代に家計はコストがかからなかった分、その余力を他の消費に振り向ける。すると、他の分野では値上がりが加速してしまう。本当に必要なことは、増税してでも需要を冷え込ませることだ。物価上昇は、需要を減らさなくては沈静化しない。
日本の場合、物価上昇率がせいぜい2~3%の範囲である。しかも、国内需要によって物価が上がっていく、ホームメイド・インフレではなく、輸入インフレである。国内で多少の財政刺激をしたところで、欧米のようなインフレ加速は起きないだろう。物価を巡る環境の違いが、日本と欧米の間にはある。日本は、財政を使って、給付金や価格抑制をする余地があり、かつその副作用が少ないことも、成長率を高める要因となっている。
課題は潜在力の低さ
日本の成長率が高くみえるのは、欧米の方に制約があるからだ。日本の成長率が高まるからではない。日本は短期ではなく、中長期的に成長率を高めていく努力が求められる。
岸田首相が、9月末に経済対策をとりまとめる際に示した「基本的な考え方」の中には、「潜在成長率を底上げする経済対策」という項目があり、中小企業の自己変革への挑戦と新たな地方創生・観光再生が掲げられていた。この2つの方針は、全く正しいものだと思う。
円安環境を利用して、今後のインバウンド需要を取り込んで、地方経済の活性化を図っていく。今後は、訪日外国人の人数ばかりを追い駆けるのはもう止めた方がよい。より富裕層向けに高価格のサービスを手厚く提供する。海外がインフレだからこそ、高価格サービスを普及しやすい。円安になっても、大企業は敢えて国内投資を増やしそうにないから、輸出に力を入れる中小企業の国内投資を支援する。
欧米の低迷によって、成長率が欧米を上回った日本がすべきことは、先行ランナーとして自分の走行スピードを上げることだ。そうした自覚を強く持ちたい。
熊野 英生
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

