- HOME
- レポート一覧
- 第一ライフ研レポート
- 内外経済ウォッチ『アジア・新興国~「エルドアン砲」炸裂でトルコは再び混乱~』(2021年7月号)
- 第一生命経済研レポート
-
2021.07.01
アジア経済
新型コロナ(経済)
トルコ経済
内外経済ウォッチ『アジア・新興国~「エルドアン砲」炸裂でトルコは再び混乱~』(2021年7月号)
西濵 徹
足下の世界経済を巡っては、欧米や中国で新型コロナウイルスの感染が一服するとともに、ワクチン接種を受けて経済活動の正常化が進む動きがみられる。一方、新興国では感染力の強い変異株により感染が再拡大して行動制限が再強化されるなど好悪双方の材料が混在している。トルコにおいては変異株による感染再拡大の動きがみられたものの、エルドアン政権は行動制限を課すとともに、感染動向如何ではさらなる厳しい措置に動く姿勢をみせた。加えて、中国による『ワクチン外交』の積極化を背景にワクチンを確保するなどの取り組みを進めてきた結果、足下におけるトルコの完全接種率や部分接種率は世界平均を大きく上回っており、ワクチン接種は前進している。
こうしたこともあり、4月半ばを境に新規感染者数は鈍化しており、死亡者数の増加ペースも鈍化傾向を強めるなど状況は改善に向かっている。よって、5月半ばには都市封鎖が解除されるとともに夜間及び土日を除いて外出禁止が緩和されたほか、6月からはレストランやカフェなどの店内営業を再開して外出制限を一段と緩和するなど、経済活動の正常化に向けた取り組みが進んでいる。同国で接種が進む中国製ワクチンを巡っては、その効果に疑問が呈される動きもみられるが、感染拡大の制御や死亡者の抑制に一定の効果があったとの結果も示されるなど、ワクチン接種の加速化はトルコにプラスの効果をもたらすと判断出来る。

年明け以降のトルコでは感染拡大の動きが頭打ちして行動制限が緩和されたほか、世界経済の回復が外需を押し上げる動きがみられた結果、1-3月の実質GDP成長率は前期比年率+7.06%と3四半期連続のプラス成長となった。景気は底入れの動きを強めており、トルコ経済は新型コロナ禍の影響を克服したと捉えられる。ただし、外需の回復が確認される一方、雇用の回復が遅れるなかでの物価高が家計消費の重石となるなど、景気の自律回復は道半ばの状況にある。輸出の半分以上を占める欧州経済の回復など外需を取り巻く環境は一段と改善するなか、政府にとっては内需を巡る状況を如何に改善させられるかが課題となってきた。
中銀では、3月にアーバル前総裁が突如更迭されるなどその独立性への疑念が再燃したほか、後任のカブジュオール氏は引き締め姿勢を維持する一方で「タカ派色」を薄めるなど、利下げを求めるエルドアン大統領に阿ることが懸念された。こうしたなか、大統領はテレビ取材で中銀に利下げ実施を求めたことを明らかにしたため、トルコ・リラ相場は再び動揺に見舞われた。過去にも大統領の発言がリラ相場に動揺を与える場面はみられたが、今後もそうした懸念がくすぶることを改めて示した格好である。よって、トルコ及び通貨リラ相場は再び『独り相撲』の様相を強める可能性が高まったと判断出来よう。

西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
-
経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
執筆者の最近のレポート
-
台湾・7月雇用は分野ごとのばらつきが鮮明に(Asia Weekly) ~世界的なAI・半導体需要の旺盛さがタイの輸出を押し上げる展開が続く~
アジア経済
西濵 徹
-
フィリピン中銀、物価・為替安定を優先で3会合連続の利上げ ~インフレ高止まりとペソ安への警戒続く一方、景気減速が追加利上げのハードルに~
アジア経済
西濵 徹
-
ウォン高を後押しする韓国中銀のタカ派傾斜、2会合連続の利上げ決定 ~ドットプロットは追加1回利上げが最多、当面は様子見も、物価・為替の安定へタカ派維持か~
アジア経済
西濵 徹
-
タイ中銀、景気の急ブレーキ、バーツ安一服を受け、様子見姿勢を継続 ~インフレ鈍化やバーツ相場持ち直しの一方、先行きも難しい政策運営は続く~
アジア経済
西濵 徹
-
強含みする豪ドル、追加利上げ観測が引き続き堅調さを促すか ~RBAの「タカ派」姿勢の後押し材料は多く、ワーホリ規制の動きが影響する可能性も~
アジア経済
西濵 徹
関連テーマのレポート
-
アジア・パシフィック経済マンスリー:2026年8月 ~AI需要が外需をけん引、インフレは多くの国で鈍化~
アジア経済
阿原 健一郎
-
トルコ中銀、イラン情勢の再燃で様子見姿勢を維持 ~原油高と異常気象の物価への影響、リラ相場も見通しが立たない展開が続くか~
アジア経済
西濵 徹
-
アジア・パシフィック経済マンスリー:2026年7月 ~一時的な緊張緩和でインフレ率は鈍化~
アジア経済
阿原 健一郎
-
アジア・パシフィック経済マンスリー:2026年6月 ~加速するインフレを横目にAI需要で拡大する輸出~
アジア経済
阿原 健一郎
-
トルコ中銀、インフレ再加速確認で様子見姿勢を維持せざるを得ず ~リラ相場の回復と金融政策の正常化の道筋は立ちにくい展開が続く~
アジア経済
西濵 徹

