トランプ関税ウォッチング トランプ関税ウォッチング

米中間選挙で民主党が大勝

~出口調査からみる共和党の敗因~

前田 和馬

11月3日に投開票を迎えた米国中間選挙において、民主党が上下院の過半数獲得を確実とした。New York Timesの4日午前3時(米東部時間)時点の予測では、民主党の議席数は上院で55(選挙前:47)、下院で257(同214)と大幅に議席を伸ばした見込みだ。CNNによる投票者調査(事前調査と出口調査による集計:Voter polls)に基づくと、今回の選挙結果の背景として下記3点を指摘できる。なお、2024年大統領選との比較に関してはサンプル規模など調査手法が異なる点に留意が必要である。

  1. 若者や中南米系が共和党から離反

    共和党は白人男性層に支持が多い一方、女性や若者は相対的に民主党を支持する傾向が強い。2024年大統領選と比べると、今回の中間選挙ではあらゆる属性で民主党の得票率が伸びており、特に18~29歳の若者層や中南米系で上昇幅が大きい(図表1)。これらの有権者層は所得が相対的に低く、住宅所有率も低いため、物価高に対するトランプ政権への不満が投票行動に反映されやすかったとみられる。

  2. 物価高に対する不満

    「生活費の問題が投票に重要(主要)な影響を与えた」との回答は89%に達し、経済や物価高の問題が選挙における最大の争点の一つであった。なお、生活費以外の投票要因では政府の汚職が90%に達し、イラン戦争は74%、移民取締政策が73%、AI・データセンターが56%と続く。なお、汚職への高い回答割合は物価高への不満によって増長された可能性があり、2028年大統領選でもこれが重要な争点となるかは不透明感が残る。

    経済運営を巡って、2024年大統領選の際には53%の有権者が「トランプ氏の経済運営の方が信頼できる」と回答するなど(民主党・ハリス氏は46%)、トランプ大統領の再選の背景には生活改善への強い期待があった。一方、今回の中間選挙では「トランプ政策で経済環境が悪化した」との回答が65%に達するなど、高関税政策による輸入物価の上昇やイラン戦争によるガソリン価格高騰への強い不満がみられた。

  3. 消去法的な民主党への投票

    「民主党を好ましい」とみる有権者は47%(共和党:同41%)と、「好ましくない」の53%を下回っている。また、全有権者の18%は「民主党をやや好ましくない」と回答したものの、このうち46%が民主党候補に投票している。すなわち、全有権者の8%程度は消去法的に民主党候補を選んだ様子がみてとれる。加えて、全有権者の12%は「社会主義をやや好ましくない」と回答した一方、このうち71%は民主党候補に投票している。このため、2028年大統領選までに民主党が左派色を強める場合、こうした投票者層は再び共和党へ投票先を変更する可能性がある。

図表1
図表1

図表2
図表2

図表3
図表3

  • 今後の政策見通し

民主党は上下院で勝利したものの、トランプ大統領は議会が可決した法案への拒否権を有している。拒否権を覆すには上下両院でそれぞれ3分の2以上の賛成が必要であり、共和党議員の大幅な造反がなければ実現は難しいだろう。一方、トランプ政権は議会との対立が強まるなか、大統領令を活用すると同時に、大統領権限が強い外交や関税政策でのレガシー作りを目指すとみられる。イラン戦争は議会による国防予算への権限、関税政策は司法判断がどの程度の歯止めになるかが注目される。他方、AI規制は連邦レベルでの規制案が合意に達するか不透明であり、州・地方政府レベルでのデータセンター建設規制等が続く可能性がある(詳細は2026年10月28日付け「米国:民主党勝利で政策は変わるのか?」)。

図表4
図表4

以 上

前田 和馬


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

前田 和馬

まえだ かずま

経済調査部 主席エコノミスト
担当: 米国経済、世界経済、経済構造分析

執筆者の最近のレポート

関連テーマのレポート

関連テーマ