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2026.10.28
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RBNZの予想外の利上げ見送りで、NZドル相場は一段と弱含むか
~追加利上げの時期や総選挙を巡る不透明感が重なり、豪ドルとの対照的な動きが続くか~
西濵 徹
- 要旨
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- ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は、10月27~28日に開催した定例理事会において、政策金利を2.75%に据え置くことを決定した。RBNZは7月に約3年ぶりの利上げに舵を切り、9月にも追加利上げを実施するなど金融引き締めを強めてきた。このため、今回の据え置きは3会合ぶりであり、金融市場の事前予想に反する決定となった。
- 7-9月のインフレ率は前年比+3.7%と前期から鈍化したものの、コアインフレ率は加速するなど、インフレ圧力は依然として根強いことが確認された。このため、金融市場においてはRBNZが今回利上げに動くことを織り込む動きが広がりをみせていた。こうしたなか、今回の決定は4対3の僅差となったほか、声明文や総裁会見でも追加利上げの必要性が示されたものの、そのタイミングについては不透明感が残る。
- また、11月7日の総選挙を控え、RBNZの政策目標の見直しが争点となっていることも、先行きの政策運営を巡る不透明感につながっている。金融市場では、予想外の金利据え置きに対する「失望」に加え、金融政策が後手に回るとの警戒感もNZドル相場の重しとなっている。当面はNZドル相場の上値が重い展開が続くと見込まれ、オセアニア通貨のなかでも豪ドルとNZドルが対照的な動きをみせる可能性がある。
【RBNZは事前予想に反して、10月の定例会合で3会合ぶりに政策金利を据え置く決定】
ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は、10月27~28日に開催した定例理事会において、政策金利であるオフィシャル・キャッシュ・レート(OCR)を2.75%に据え置くことを決定した。ニュージーランドでは、2025年以降にインフレ率が加速し、RBNZの定める目標レンジ(1~3%)の上限を上回る伸びで推移している。さらに、イラン情勢の悪化を受けた原油価格の上昇がエネルギーインフレを招いたことから、RBNZは7月の定例会合で約3年ぶりの利上げに舵を切り、9月会合でも追加利上げに動くなど、金融引き締めを強化してきた(注1)。このため、RBNZによる金利据え置きは3会合ぶりとなる。
RBNZのブレマン総裁は、9月の定例会合後の記者会見において、追加利上げに含みを持たせる考えを示していた。一方で、予め決められた方針に固執せず、追加利上げのタイミングは極めて不確実と述べるとともに、これまでの利上げの効果などを見極める考えをみせた。声明文でも、2会合連続の利上げ実施を受けて、先行きは大幅利上げに動く必要性は低下したとの認識を示すなど、「タカ派」姿勢が後退している様子がうかがえた。こうした姿勢の変化もあり、RBNZによる断続的な利上げ実施にもかかわらず、その後のNZドル相場は調整の動きを強めた。
同国では、11月7日に議会(代議院:一院制)の総選挙が実施されるが、RBNZのマンデート(政策目標)が争点のひとつとなっていることも、NZドル相場が調整の動きを強める一因となった。最大野党の左派・労働党を中心とする政党連合は、マンデートに持続可能な雇用の最大化を再び加えることを公約に掲げている。世論調査では、右派の国民党を中心とする与党連合、左派連合の競り合いが続いており、新興政党・オポチュニティ党の動向が注目されている(注2)。足元の雇用環境をみると、直近4-6月の失業率が10年ぶりの高水準となっており(図1)、仮にマンデートが変更されれば、利上げのハードルが高まる可能性がある。こうした事情もNZドル相場の重しになったと考えられる。

一方で、RBNZのブレマン総裁は、9月の定例会合後の記者会見において、選挙結果が政策運営に影響を与えることはないとの見方を示した。このため、金融市場では今回の定例会合を占ううえで、物価動向に注目した。7-9月のインフレ率は前年比+3.7%と5四半期連続で目標レンジを上回ったものの、前期(同+4.1%)から鈍化し、RBNZが9月の定例会合で示した見通し(前年比+3.9%)も下回った(図2)。コアインフレ率は前年比+2.9%と目標レンジ内で推移しているものの、前期(同+2.6%)から加速し、7四半期ぶりの高い伸びとなるなど、インフレ圧力が高まっている様子が確認された。このため、金融市場ではRBNZが追加利上げに動くとの見方が広がったものの、予想に反して政策金利を据え置いた格好となった。

【僅差での据え置き決定、市場の「失望」を反映してNZドル相場は上値の重い展開が続くか】
会合後に公表された声明文では、今回の決定について「4(据え置き)対3(25bpの利上げ)の賛成多数で金利据え置きを決定した」とした。足元の物価動向について「想定を下回った」、「賃金上昇が抑制されており、中期的なインフレ期待は安定している」とする一方、「コアインフレ率は目標レンジの上限近くに加速しており、物価上昇の動きが広範に及びつつある」との見方を示した。先行きについては「世界的な情勢が短期的にインフレ圧力を一段と強めている」として、その要因に「原油高によるエネルギー価格の上昇と通貨NZドル安」を挙げた。そして、「10-12月のインフレ率は+4.4%に加速が見込まれる」としつつ、「原油や石油製品価格の変動が激しく、インフレ見通しは不透明」との見方を示した。
実体経済については「回復が続いているものの、状況には依然ばらつきがある」との見方を示した。具体的には「外需関連産業では、商品市況の上昇、世界的な需要の堅調さ、外国人観光客数の増加の恩恵を受けている」一方、「内需関連産業は低調に推移している」とした。一方で、「オークランドを中心に住宅投資の回復の兆しがでている」とした。
政策運営については「物価に対する一時的な要因を差し引いた上で、経済に不必要な不安定を起こすことを回避しつつ、中期的にインフレ率を目標レンジの中央(2%)に戻すことに注力している」とあらためて強調した。そのうえで、「家計消費が弱く、一部の企業ではコスト上昇の転嫁が制限されている」としつつ、「インフレ率が高止まりすれば、コスト上昇がインフレ期待や価格や賃金に波及してインフレがより持続的なものとなるリスクが高まる」との見方を示した。
世界経済については「堅調に推移しているものの、地政学リスクやエネルギーインフレ、金融市場のボラティリティの高まり、AI(人工知能)関連投資の急増などを背景に、その脆弱性は高まっている」との見方を示した。一方で、同国経済について「回復の動きが予想以上に力強くなる可能性はある一方、世界経済の悪化、外需の好調さが雇用や所得、家計消費に波及しなければ勢いを失う可能性がある」との認識を示した。そのうえで、今回の決定について「政策委員は全体的なインフレ見通しでは一致したが、個々のリスクに対する見方や金融政策の対応時期に関する意見は割れた」、先行きについても「追加利上げが必要となる可能性は高いとの見方で一致したものの、そのタイミングは経済見通し次第」として、追加利上げに含みを持たせる考えを示した。
会合後に記者会見に臨んだブレマン総裁は、今回の協議について「景気動向を勘案すれば、より抑制的な政策が必要になることで合意した」、「NZドル安が続けば輸入インフレを助長する可能性がある」との認識が共有されたとした。先行きについては「さらなる引き締めが必要となり、状況によっては引き締め的な領域に入る可能性がある」、「今後の会合で追加利上げを行う可能性が高い」との認識を示した。そして、「OCRの道筋が9月会合の想定を上回る可能性についても協議した」としつつ、「中立金利の見通しには幅があり、常に不確実性がある」として、具体的な水準への言及は避けた。一方で、今回の決定については「経済見通しに基づいた決定である」としたうえで、「インフレ率を目標レンジに戻すための条件は依然として良好」、「賃金上昇率は目標とするインフレ動向に見合う水準を下回っている」との認識を示した。
前述したように、金融市場においては今回の利上げを織り込む動きが広がっていたため、予想外の金利据え置き決定に対しては『失望』にも似た反応がみられ、NZドル相場は調整の動きを強めている(図3)。背景には、総選挙の行方が不透明であることに加え、その後の12月に開催される次回の定例会合において、追加利上げが実施されるか否かについても不透明感が残ることがある。一部では、金融政策が後手に回る(behind the curve)との警戒感が強まっていることも影響していると考えられる。このため、当面のNZドル相場は弱含む展開が続くと予想され、オセアニア通貨では豪ドルが強含む一方、NZドルは上値の重い展開が続くなど、両通貨が対照的な動きをみせる可能性が高まっている。

注1 9月2日付レポート「RBNZは緩やかな引き締め示唆、NZドル相場の行方はどうなる?」
注2 10月1日付レポート「ニュージーランド総選挙は新興政党がカギを握る、NZドル相場は?」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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