インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

RBNZは緩やかな引き締め示唆、NZドル相場の行方はどうなる?

~2会合連続の利上げにより、先行きは従来想定より利上げペースの後退を示唆~

西濵 徹

要旨
  • RBNZ(ニュージーランド準備銀行)は9月1~2日の定例理事会において、政策金利(OCR)を25bp引き上げて2.75%とすることを決定し、7月に続く2会合連続の利上げとなった。背景には、イラン情勢の悪化による原油高を受けてインフレが加速し、4-6月のインフレ率が前年比+4.1%とRBNZの目標レンジ(2~3%)を上回ったことがある。一方、コアインフレ率は同+2.5%と目標内にとどまり、雇用不安や賃金上昇圧力の弱さもあって、エネルギー以外の物価上昇は比較的落ち着いている。
  • RBNZは、燃料価格上昇によるインフレ加速は認めつつ、インフレ率は2027年半ばに目標レンジへ回帰し、その後2%に収束するとの見通しを示した。景気については、輸出や輸出価格の上昇が所得・投資を押し上げる一方、雇用不安や住宅価格低迷が家計消費や住宅投資の重しになっているとした。ただし、先行きは輸出の堅調さや家計消費の拡大により景気回復が広がるとした。追加利上げの可能性は残すものの、今回の利上げによって将来の大幅利上げの必要性は低下したとの認識を示しており、ブレマン総裁も今後はこれまでの利上げ効果や景気回復の広がりを見極める姿勢を強調した。このため、先行きの利上げペースは従来より緩やかになる可能性がある。11月の総選挙を前に、利上げによる住宅ローン負担増を巡る政治的な議論も活発化するが、RBNZは政策判断が選挙に左右されることを否定した。
  • 金融市場では、米ドル安を追い風にNZドルが一時3ヵ月ぶりの高値を付けるなど強含んだものの、足元ではFRBの利上げ観測による米ドルの持ち直しに加え、RBNZの今後の利上げペース鈍化が意識され、上値が重くなっている。対円でもこれまでの円安を背景に堅調に推移してきたが、先行きはNZドルへの調整圧力が強まる可能性に注意が必要である。
目次

【イラン情勢の悪化によるインフレ加速を受け、RBNZは2会合連続の利上げを決定】

ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は、9月1~2日に開催した定例理事会において、政策金利であるオフィシャル・キャッシュ・レート(OCR)を25bp引き上げ、2.75%とすることを決定した(図1)。RBNZでは、2025年12月にブレマン総裁が就任した。ブレマン体制下のRBNZは、5月の前回会合まで3会合連続で金利を据え置くなど、様子見姿勢を維持した。しかし、5月会合の据え置きについては、「3(据え置き)対3(25bpの利上げ)」と評決が割れたものの、決定権を有するブレマン氏が据え置き票を投じて決定した。その際に公表された声明文では、先行きについて想定より早く、かつ大幅な利上げを行う必要性が高まっているとの認識を示した。そして、7月会合では約3年ぶりとなる利上げを決定するなど金融引き締めに舵を切った。このため、今回の利上げは2会合連続となる。

図表
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背景には、2025年以降のインフレ率は加速しており、RBNZが定める目標レンジ(2~3%)の上限を上回る伸びで推移していることが挙げられる。さらに、イラン情勢の悪化を受けた原油高がエネルギーインフレを招き、4-6月のインフレ率は前年比+4.1%と2023年10-12月以来の高い伸びに加速した(図2)。さらに、この水準はRBNZが7月会合で示した見通し(前年比+3.9%)を上回り、事前の市場予想ではRBNZが追加利上げに動くとの見方が広がった。一方で、コアインフレ率は前年比+2.5%と引き続き目標レンジの範囲内で推移しており、前期(同+2.6%)からわずかに鈍化するなど、エネルギー以外の物価は比較的落ち着いている。価格転嫁の動きが広がっていないほか、雇用不安が根強く賃金上昇圧力が高まりにくいことも、物価が上昇しにくい一因となっている可能性がある。このため、RBNZが先行きの政策運営に対してどのような見方を示すかが注目された。

図表
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【RBNZの先行きの利上げは緩やかに、総選挙を前に政治的な議論も活発化か】

会合後に公表した声明文では、物価動向について「イラン情勢による燃料価格の上昇で加速した」とする一方、「コアインフレ率、賃金上昇率、インフレ予想は一貫しており、2027年半ばには目標レンジに回帰し、年後半には中央値に収束する」との見通しを示した。一方で、景気動向については「不均一な状況が続いている」として、「海外の堅調な需要と輸出価格の上昇が所得と投資を押し上げている」ものの、「雇用の不安定さ、住宅価格の低迷が都市部(オークランド・ウェリントン)を中心とする家計消費と住宅投資の重しになっている」との見方を示した(図3)。先行きの景気については「輸出は堅調に推移し、家計消費も徐々に増加するなど、回復の動きが広がりをみせる」との見方を示した。そのうえで、「景気回復とともに雇用環境も改善する」ほか、「インフレ率が2%に収束するとともに、家計部門の購買力も向上する」とした。

図表
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世界経済については「商品価格や輸出に影響を与えるリスクに直面している」とした。そして、「同国の景気回復は想定より力強いものとなる可能性もあれば、弱いものになる可能性もある」として、「インフレ圧力がより長期にわたる可能性も残る」との見方を示した。そのため、先行きの政策運営について「引き続き警戒を怠らず、中期的にインフレ率が2%に持続的に収束すべく、必要に応じて対応する」との考えを示した。

今回の決定について「景気と雇用を支えつつ、インフレ率を2%に収束させるためには、金融引き締めを段階的に解除することが適切と判断した」としている。一方で、「今回の利上げ実施により、将来、より大幅な利上げが必要になるリスクが低減される」、「今後の政策決定は、中期的なインフレへのリスクのバランスに関する判断に左右される」として、追加利上げに対して慎重姿勢を強めている様子がうかがえる。

会合後の記者会見に出席したブレマン総裁も、先行きの政策運営について「さらなる利上げを実施する可能性は高いと考えており、これまでの利上げの影響を評価する」とした。そして、「想定している政策金利の経路は5月会合時点で想定したものとほぼ同じ」としつつ、「重要なのは景気回復の動きが想定通り広がりをみせるか否かである」との見方を示した。そのうえで、「輸出セクターは想定より著しく力強い動きが続いている」とした。ただし、「予め決められた方針に固執せず、利上げのタイミングは極めて不確実である」と述べるなど、これまでに比べて追加利上げへの慎重姿勢が強まっている様子がうかがえる。そして、「景気を下支えしつつインフレを抑えることができる」、「政策金利は中立方向に引き上げつつあるが、依然として緩和的である」としつつ、「政策スタンスを見極めるには多少の時間を要する可能性がある」との考えを示した。

同国では11月に総選挙が予定されているが(注1)、ブレマン氏は「政策決定には影響しない」との見方を示した。背景には、RBNZの政策運営がここ数年政局争いに巻き込まれてきたことがある。2023年に発足したラクソン現政権は、経済の再生と中間層の負担軽減を公約に掲げて誕生したが、RBNZによる断続的な利上げ実施に伴う債務負担の増大は逆風となる可能性がある。こうしたなか、最大野党の労働党は、今回の決定に対して金利上昇が住宅ローンの返済負担増につながると主張するなど、総選挙を意識した「場外戦」を展開する動きをみせている。RBNZは政策決定が総選挙に左右されない姿勢を明確にしており、先行きの利上げペースは、政治情勢そのものよりも、景気回復の度合いやインフレ圧力の持続性を見極めつつ、これまでより緩やかなものとなる可能性がある。

【RBNZが追加利上げの時期に慎重姿勢をみせるなか、NZドル相場を巡る環境は変化するか】

このところの金融市場においては、日本と米国による協調介入に加え、米国によるバイバック(長期国債の買い入れ消却)の倍増表明を受け、その後の米ドル指数が軟調な動きを強めたため、NZドル相場は一時3ヵ月ぶりの高値となるなど強含みする動きをみせた(図4)。しかし、足元ではFRB(米連邦準備制度理事会)による利上げが意識されるなかで一転して頭打ちしているほか、先行きはRBNZによる利上げペースの鈍化が意識されることで上値の重い展開が続く可能性が高まっている。日本円に対しては、円安が意識されるなかで強含みする展開が続いてきたものの、NZドル相場が上値の重い展開をみせる可能性が高まっていることを受けて、先行きは一転して調整圧力が強まる可能性に注意が必要であろう。

図表
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以 上

西濵 徹


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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