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ニュージーランド総選挙は新興政党がカギを握る、NZドル相場は?

~政権交代観測とRBNZのマンデート変更がNZドルの重しに~

西濵 徹

要旨
  • ニュージーランドでは10月1日に議会が解散し、11月7日の総選挙に向けた選挙戦が本格化した。二大政党の支持率低下が続くなか、土地税の導入と年間1.94万NZドルのベーシックインカムに相当する「市民所得」の支給を掲げる新興のオポチュニティ党が支持を伸ばし、初の議席獲得と連立政権の行方を左右する可能性が浮上している。世論調査では、最大野党・労働党を中心とする左派陣営が同党の支持を得れば政権を樹立し得る一方、現与党連合が過半数を確保できるかも不透明である。
  • 金融市場では、政権交代時にRBNZ(ニュージーランド準備銀行)の政策目標へ「持続可能な雇用の最大化」が再び加えられる可能性が意識され、NZドルは対米ドルで10ヵ月ぶりの安値圏に弱含んでいる。足元の失業率が10年ぶりの高水準となるなか、マンデート変更が実現すれば追加利上げのハードルが高まるとの見方もあり、総選挙後の連立協議と金融政策への影響がNZドル相場の先行きを左右する可能性がある。

ニュージーランド議会(代議院:一院制(総議席数120))が10月1日に解散し、11月7日に実施予定の総選挙に向けた動きが正式に始まった。同国では、30年前にドイツ型の小選挙区比例代表併用制(MMP)が導入されて以来、右派の国民党、ないし左派の労働党を中心とする連立政権が一般的となっている。さらに、このところは二大政党の支持率の低下傾向に歯止めがかからず、多数政党との連立による政権樹立を余儀なくされる展開が続いている。

こうしたなか、今回の総選挙では、新興政党・オポチュニティ党が「台風の目」となる可能性が高まっている。同党は結党から10年を迎えるものの、過去の総選挙では議席獲得に必要な得票率基準(5%)を満たすことができなかった。しかし、最新の世論調査では、支持率が基準を上回って初めて議席を獲得し、キャスティングボートを握る可能性が高まっている。背景には、同党が掲げる公約が影響している。同党は、都市部で年間1.75%、農村部で0.5%の土地税を新設し、それを財源の一部として、原則18歳以上の国民などに年間1.94万NZドルのベーシックインカム(BI)に相当する「市民所得」を支給する税制改正を公約に掲げる。同党はその目的について、国民生活の下支えに加え、高止まりする住宅価格の抑制につながるとの見方を示す(図1)。さらに、同党は、土地税導入に伴い住宅価格は下落するものの、BIの支給に伴い国民の9割以上が現状と同等、ないし上回る生活水準を維持可能との独自のシミュレーションを公表している。なお、国民党、労働党のいずれの党首も税制改正案の採用を否定するなど、実現のハードルは高い。一方、同党の政策には左派陣営と親和性のあるものもみられることから、選挙後の連立協議の行方が注目される。

図表
図表

最新の世論調査によれば、最大野党・労働党を中心とする左派陣営が、オポチュニティ党の支持を得れば政権を樹立し得る情勢が示されている。一方、国民党、ACT党、ニュージーランド・ファースト党で構成される現与党連合についても、単独で過半数を確保できるかは不透明となっているこのところの金融市場においては、通貨NZドルの対米ドル相場が10ヵ月ぶりの安値水準で推移するなど弱含んでいる(図2)。背景には、RBNZ(ニュージーランド準備銀行)の政策運営が、政治的な争点となっていることがある。労働党などはRBNZのマンデート(政策目標)の変更を公約に掲げており、政権交代となれば、持続可能な雇用の最大化が再び加えられると見込まれる。足元の雇用環境を巡っては、直近4-6月の失業率が10年ぶりの高水準となったことが確認されている。RBNZは9月の定例会合で追加利上げを決定したものの(注1)、仮に政権交代によってマンデートが変更されれば、先行きの政策運営を巡って追加利上げのハードルが高まるとの見方につながる可能性がある。こうした事情がNZドル相場の重しになっているとみられる。足元のオセアニア通貨は、豪ドル相場も下値を探る動きをみせるなか、NZドルを巡る状況にも注意が必要となっている。

図表
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以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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