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2026.10.22
アジア経済
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NZドル相場の行方を左右する総選挙とRBNZの政策運営
~インフレ圧力は根強い一方、政権交代に伴う政策枠組みの変更が不透明要因に~
西濵 徹
- 要旨
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- ニュージーランドでは、インフレ高進を背景にRBNZが9月に2会合連続の利上げを実施したものの、11月7日の総選挙を巡る不透明感がNZドル相場の重しとなってきた。新興政党のオポチュニティ党が連立協議のカギを握る可能性が高まっているうえ、仮に左派・労働党を中心とする政権への交代が実現すれば、RBNZの政策目標に雇用の最大化が再び加えられると見込まれる。そのため、追加利上げのハードルが高まる可能性が意識されている。
- 7-9月のインフレ率は前年比+3.7%と鈍化し、市場予想も下回ったものの、引き続き目標レンジを上回っている。エネルギーや食料品を中心にインフレ圧力が後退する一方、サービス物価には上昇圧力が広がる兆しがうかがえる。さらに、原油価格の高止まりや干ばつによる食料インフレの懸念も残る。金融市場では早期利上げ観測がくすぶるものの、今回の物価統計を受けて見方が修正される可能性もあり、先行きのNZドル相場は総選挙の結果と、その後のRBNZの政策枠組みに関する議論に左右される展開が予想される。
【RBNZは追加利上げ実施も、総選挙を巡る不透明感がNZドル相場の重しとなる展開が続いた】
ニュージーランドでは、RBNZ(ニュージーランド準備銀行)が9月の定例理事会において2会合連続の利上げを決定した(注1)。背景には、2025年以降のインフレ率が加速してRBNZの定める目標レンジ(1~3%)の上限を上回る伸びで推移していることがある。さらに、イラン情勢の悪化による原油価格の上昇がエネルギーインフレを招き、4-6月のインフレ率は前年比+4.1%と2023年10-12月以来の高い伸びとなった。こうした事情は、RBNZの断続的な利上げ実施を後押ししたと考えられる。
一方、通貨NZドル相場は上値の重い展開をみせてきた。同国では、11月7日に議会(代議院:一院制(総議席数120))の総選挙の実施が予定されており、選挙結果を巡る不透明感が影響しているとみられる。世論調査によれば、右派の国民党、ないし左派の労働党を中心とする連立政権がいずれも多数派を形成できず、新興政党・オポチュニティ党がキャスティングボートを握る可能性が浮上している(注2)。同党は、都市部で年間1.75%、農村部で0.5%の土地税を新設し、それを財源の一部に原則18歳以上の国民に年間1.94万NZドルのベーシックインカム(BI)に相当する「市民所得」を支給する税制改正を公約に掲げる。国民党、労働党ともに同党が掲げる税制改正案の採用を否定しており、実現のハードルは高い。しかし、それ以外の政策の方向性については、左派陣営と比較的親和性が高いとみられるため、選挙後に行われる連立協議の行方が注目される。
こうしたなか、政治的な争点のひとつにRBNZ(ニュージーランド準備銀行)の政策運営が浮上していることも注目される。労働党を中心とする左派陣営は、RBNZのマンデート(政策目標)の変更を公約に掲げており、仮に政権交代が実現すれば、持続可能な雇用の最大化が再び加えられると見込まれる。足元の雇用環境は、直近4-6月の失業率が10年ぶりの高水準となったことが確認されている(図1)。このため、RBNZのブレマン総裁は9月会合後の記者会見において、選挙結果は政策決定に影響しないとの見方を示したものの、追加利上げのハードルが高まることは避けられない。こうした事情も、NZドル相場の重しになってきたと考えられる。

【金融市場はRBNZの早期利上げを意識するも、NZドル相場の行方は総選挙の結果がカギを握る】
このため、金融市場においては、RBNZの政策運営を占ううえで物価動向に注目が集まった。7-9月の消費者物価は前年比+3.7%に伸びが鈍化したものの、5四半期連続で目標レンジを上回る推移となった(図2)。ただし、この水準はRBNZが9月会合に際して示した見通し(前年比+3.9%)を下回るとともに、事前の市場予想をも下回る伸びにとどまった。前期比も+0.66%と前期(同+1.49%)から上昇ペースが鈍化しており、原油価格の上昇一服を受けてガソリンなどエネルギー価格が下落したほか、生鮮品をはじめとする食料品価格の上昇ペースが鈍化しており、生活必需品を中心にインフレ圧力は後退した。一方で、食料品やエネルギーを除いたコアインフレ率は前年比+2.9%と前期(同+2.6%)から伸びが加速したものの、引き続き目標レンジ内で推移している。とはいえ、前期比は+1.1%と前期(同+0.4%)から上昇ペースが加速しており、財価格は比較的落ち着いた動きをみせる一方、サービス物価で幅広く上昇圧力が強まる動きが確認されるなど、インフレ圧力が徐々に広がりをみせる兆しもうかがえる。

足元では、イラン情勢を巡る不透明感を理由に原油価格は高止まりしており、先行きもエネルギーインフレが長引く可能性が高まっている。さらに、エルニーニョ現象の発生を受けて、同国では東部や北部を中心に、乾燥・干ばつによる農業生産への悪影響が懸念されており、食料インフレや景気の下押しが懸念される状況にある。
総選挙においてはインフレも主要な争点となっており、早期のインフレ抑制に向けて、RBNZが前倒しで利上げに動くとの見方も金融市場に出ており、このところのNZドル相場が持ち直す一因となってきた可能性がある(図3)。今回の物価統計が市場予想を下回ったことを受けて、早期利上げ観測が修正される可能性もある。先行きのNZドル相場の行方を巡っては、総選挙の結果と、その後のRBNZの政策枠組みに関する議論に左右される可能性にも注意が必要と考えられる。

注1 9月2日付レポート「RBNZは緩やかな引き締め示唆、NZドル相場の行方はどうなる?」
注2 10月1日付レポート「ニュージーランド総選挙は新興政党がカギを握る、NZドル相場は?」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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