インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

内外経済ウォッチ『アジア・新興国~AI半導体は韓国景気に追い風も、政治の逆風が続く~』(2026年11月号)

西濵 徹

目次

AI・半導体需要拡大は韓国景気の追い風に

韓国経済は、世界的なAI(人工知能)・半導体関連需要の拡大が追い風となっている。韓国は、DRAMやNAND型フラッシュメモリ、広帯域メモリ(HBM)などメモリ半導体の大規模量産で世界トップクラスの競争力を有する。9月の輸出額は前年比+83.5%となり、単月ベースの輸出額は過去最高額を更新した。

韓国経済は、GDPに占める輸出比率が4割を上回るなど、構造面で外需依存度が相対的に高い。このため、AI・半導体関連をけん引役にした輸出拡大の動きは景気を押し上げると期待される。事実、中銀は8月の定例会合において、2026年通年の経済成長率を+3.3%と5年ぶりの高成長に上方修正するとともに、2027年も+2.9%と高水準で推移するとの見方を示している。

不動産高騰を理由に、政権支持率は低迷が続く

こうした状況にもかかわらず、このところの李在明政権の支持率は低迷している。最近の世論調査では、政権支持率が3割台で推移する一方、不支持率は5割を上回っており、改善する見通しが立たない状況が続いている。背景のひとつには、不動産価格の高騰が挙げられる。李政権は昨年来、不動産価格高騰への様々な対策を打ち出したものの、実需層の資金調達が困難になる一方、規制対象外の地域で不動産価格が上昇するなど「副作用」も顕在化した。また、政府は超高額物件を対象とする課税強化、非居住者に対する増税を目指したものの、中高所得者層などからの反発を受けて撤回に追い込まれた。こうした不動産対策への不満は、6月に実施された首都ソウル特別市長選で与党候補が敗北した一因との見方もある。その後もソウルを中心に不動産価格の上昇が続いており、李政権を巡る状況は厳しさを増している。

ウォン相場は持ち直しも、株価は混乱が続く

旺盛な輸出による貿易黒字の拡大に加え、中銀のタカ派姿勢も重なり、足元のウォン相場は大きく持ち直している。一方、主要株価指数(KOSPI)は、主要半導体メーカーの株価動向に左右される形で低迷し、足元ではピークを3割近く下回る。こうした金融市場の不安定化も、家計や投資家の心理を通じて政権への評価に影響している可能性がある。

さらに、イラン情勢の悪化によるエネルギーインフレに加え、半導体産業の一部では営業利益などの一定割合(N%)を従業員の成果報酬の原資とする「N%成果給」を導入、他産業でも導入を求める動きが広がるなど、賃金インフレも警戒される。また、スーパーエルニーニョの発生により、韓国では高温や少雨による悪影響が農業生産に出るほか、世界的な干ばつや洪水による食料インフレも懸念され、李政権にとって逆風となる可能性がある。

良好な日韓関係に影響するか、注意が必要に

韓国では、革新派の支持層が3割弱とされるが、足元では若年層を中心に支持率の低下が加速しており、支持層をつなぎとめることが困難になりつつある。韓国の歴代政権では、支持率が低下する局面で対日政策が厳しくなるケースが散見された。しかし、李政権は発足以降、国益を重視した「実利外交」を掲げており、現時点でそうした兆しはみられない。

とはいえ、李政権の実利外交を巡っては、与党・共に民主党の主流派を中心に反発が根強く、党内対立の火種となる可能性は残る。現在の良好な日韓関係が今後も続くか、韓国国内の情勢を見極める必要性は高まっている。

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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