インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

弱含む動きをみせてきた豪ドル相場は持ち直しに向かうか

~RBAハウザー副総裁のインフレ警戒発言、FRBの追加利上げ観測後退も追い風となるか~

西濵 徹

要旨
  • このところの豪ドル相場は弱含んできた。背景には、FRBが9月に利上げを決定したほか、追加利上げ観測も強まったことがある。RBAも9月に利上げしたが、ブロック総裁は会見で先行きに慎重な姿勢を示した。不動産価格が下落するなか、8月会合では金融政策の制約にならないとしていた住宅市場の低迷を、9月会合では景気の下振れリスクに挙げた。これを受けてRBAのタカ派姿勢が後退したとの見方が広がり、豪ドルの弱含みを後押しした。

  • RBAは物価安定と完全雇用の維持を政策目標とする。8月の消費者物価は前年比+4.0%と加速し、13ヵ月連続で目標レンジを上回った。エネルギーインフレの影響が続いている。コアインフレ率は前年比+3.6%で横ばいとなったが、前月比は鈍化しており、基調的な圧力には緩和の兆しもある。9月の雇用統計では失業率が4.7%に上昇するとともに、雇用者数も減少した。こうした雇用環境の軟化から追加利上げのハードルが高まったとの見方が強まり、豪ドルの上値を抑える一因になったと考えられる。

  • しかし、足元では豪ドル相場に変化の兆しが出ている。ハウザー副総裁は10月21日の講演において、インフレ見通しが「著しく悪化している」との認識を示し、追加措置と労働市場保護の間で難しい選択を迫られているとの考えを示した。そのうえで、コスト上昇がインフレ期待に波及しないよう対応する必要があると述べた。政策の方向性を明示したものではないものの、市場に追加利上げを意識させるとみられる。FRBの追加利上げ観測が後退していることも重なり、当面の豪ドル相場は持ち直しの動きを強める可能性が高い。

このところの金融市場においては、豪ドルが弱含む動きをみせてきた。背景には、FRB(米連邦準備制度理事会)が9月のFOMC(連邦公開市場委員会)において利上げを決定するとともに、その後も追加利上げに動くとの観測が強まったことがある。一方で、RBA(オーストラリア準備銀行)は9月の定例会合で利上げを決定するなど金融引き締めを強めてきた(注1)。RBAは8月の定例会合で金利を据え置いたものの、将来的な追加利上げに言及するなど「タカ派」姿勢を示していた。しかし、ブロック総裁が9月会合後に行った記者会見では、先行きの政策運営について慎重姿勢を強めている様子がうかがえた。同国においては、RBAによる断続的な利上げに加え、政府による価格抑制を目的とする税制改革の影響も重なり、足元の不動産価格は下落基調を強めている。こうした動きについて、ブロック氏は8月会合時点では住宅価格の下落は金融政策判断の制約にはならないとの考えを示したものの、9月会合では住宅市場の低迷を景気の下振れリスクの一つに挙げた。このため、金融市場ではRBAがタカ派姿勢をやや後退させているとの見方が広がり、豪ドル相場の弱含みを後押ししたと考えられる。

RBAは、物価安定と完全雇用の維持という「デュアルマンデート」に基づいて金融政策を運営している。8月の消費者物価は前年比+4.0%と前月(同+3.5%)から加速し、13ヵ月連続でRBA(オーストラリア準備銀行)が定める目標レンジ(2~3%)を上回る伸びとなった(図1)。原油価格の高止まりを反映したエネルギーインフレが影響する展開が続いている。一方、コアインフレ率(トリム平均値)は前年同月比+3.6%と3ヵ月連続の横ばいで推移しており、11ヵ月連続で目標レンジを上回る伸びとなった。もっとも、前月比の伸びは鈍化するなど、基調的なインフレ圧力に緩和の兆しもうかがえる。9月の雇用統計でも、失業率が4.7%と前月(4.6%)から上昇したほか、雇用者数も減少するなど、雇用環境の軟化がうかがえた。このため、金融市場ではRBAによる追加利上げのハードルが高まったとの見方が強まった。こうした事情も、豪ドル相場の上値を抑えることにつながったとみられる。

図表
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しかし、足元では弱含む動きをみせた豪ドル相場に変化の兆しが出ている(図2)。背景には、RBA内において先行きの政策運営に対する見方が示されたことがある。ハウザー副総裁は21日、投資関連の会合で行った講演において、これまでの金融引き締めが景気減速に効果を上げているとする一方、原油高などを理由にインフレ見通しが「著しく悪化している」との見方を示した。そして、「インフレに対処するために追加措置を講じるか、労働市場を守るために様子見をするか、難しい選択を迫られている」との認識を示した。そのうえで、「金融政策は供給ショックに直接対処することはできないが、コスト上昇がインフレ期待の上昇に波及しないように対応する必要がある」との考えを示した。同氏は先行きの物価統計について、RBAの想定を上回ることはかなり明白と述べるなど、物価に対して厳しい見方を示した。ハウザー氏の発言は、政策運営の方向性について明確に示したものではないものの、インフレ見通しについて著しく悪化しているとの認識に加え、インフレ期待をしっかりと抑え込む必要性に言及したことは、金融市場において追加利上げを意識させる。足元では、FRBによる追加利上げ観測が後退していることも重なり、当面の豪ドル相場は持ち直しの動きを強める可能性が高まっていると考えられる。

図表
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以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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