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- フランス大統領選、迫る「ルペン対メランション」
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- 2027年春のフランス大統領選で、決選投票が極右政党・国民連合(RN)のルペン氏と、極左政党・不服従のフランス(LFI)メランション氏の対決となる可能性を示す世論調査が相次いでいる。最新調査では、中道候補をフィリップ元首相に一本化しても、メランション氏が上回ることが示された。マクロン政権への逆風や財政再建に伴う負担への反発、メランション氏の固定的な支持基盤、社会民主派の独自候補が、中道勢力の決選投票進出を難しくしている。
中道一本化でもメランション氏が2位
来年春のフランス大統領選挙に向けて、極右政党・国民連合(RN)のルペン氏に次ぐ二番手争いが混沌としてきた。初回投票で過半数を獲得する候補がいない場合、上位2名が決選投票に進出し、その勝者が大統領に選出される。各種の世論調査では、ルペン氏が圧倒的な支持を集めてリードするなか、極左政党・不服従のフランス(LFI)のメランション氏と中道政党・地平線(Horizons)を率いるフィリップ元首相が熾烈な二番手争いを繰り広げている。
メランション氏とフィリップ氏の支持率は、他の候補者の組み合わせ次第で変わる。これまでの調査では、フィリップ氏とは所属政党が異なるが、同じ中道勢力としてマクロン大統領を支えてきた中道政党・ルネサンス(Renaissance)のアタル元首相が同時に出馬する場合、メランション氏が両中道候補を振り切り、二番手になるものが多かった。現地メディアでは、中道票の分散を避けるため、来年早々にも中道勢力が候補者を一本化するとの見方が広がっていた。フィリップ氏に比べて劣勢のアタル氏が出馬を断念する場合、フィリップ氏がメランション氏を僅かに交わし、決選投票に滑り込むとみられていた。その場合の決選投票の組み合わせは、ルペン氏とフィリップ氏となる。
ところが最近の世論調査では、アタル氏が不出馬の場合も、メランション氏の支持がフィリップ氏を上回るものが増えている。9月28日に公表されたHarris Interactiveの調査では、アタル氏が出馬を断念する場合でも、メランション氏の支持が18%と、フィリップ氏の16%を上回る(図表1)。この場合、決選投票でルペン氏に対峙するのは、フィリップ氏ではなく、メランション氏となる。

決選投票の組み合わせ別の世論調査では、ルペン氏がメランション氏と対峙した場合に圧勝が予想される一方、フィリップ氏と対峙した場合には接戦が予想される(図表2)。最近では、フィリップ氏もルペン氏と対峙した場合に劣勢となりつつある。決選投票の組み合わせが「極右対極左」となった場合、ルペン氏の大統領就任が現実味を増す。二番手争いを繰り広げるフィリップ氏とメランション氏の支持率の差は僅かで、選挙まで半年以上を残す現時点で、両者の優劣が確定したとみることは勿論できない。ただ、従来想定されてきた「極右対中道」の決選投票が当然視できなくなっていることは確かだ。

フィリップ氏を苦しめるマクロン後継者のイメージ
これまでフィリップ氏の支持率の伸び悩みは、アタル氏など複数の候補が中道票を奪い合っていることが一因とされてきた。実際、アタル氏が出馬しない中道候補が一本化されるケースでは、一本化されない場合と比べてフィリップ氏の支持率が上昇する。しかし、最新の調査が示しているのは、それだけではメランション氏を上回れない可能性である。背景には、中道勢力がマクロン大統領の後継を巡って分裂していることに加え、フィリップ氏自身にマクロン大統領の後継者としてのイメージが残っていることがある。フィリップ氏は2017~20年にマクロン大統領の下で首相を務めた。現在は自身の中道右派政党を立ち上げ、マクロン大統領から一定の距離を取っているものの、これまで政権を支えていた中道勢力の中心人物であり、多くの有権者からマクロン路線を継承する候補とみなされる。
フィリップ氏の掲げる政策は財政再建や経済改革を重視するものが多い。9月29日には、年金財政の立て直しに向けて、年金支給開始年齢を段階的に65歳に引き上げ、満額受給に必要な拠出期間を45年に延ばす改革案を公表した。巨額の財政赤字と政府債務を抱えるフランスにとって、財政再建は避けて通れない課題だが、年金改革をはじめ国民負担を伴う政策は選挙で支持を広げるうえで難しさを伴う。
2027年の予算審議が本格化するのを控え、議会では財政赤字の削減に必要な歳出抑制策や増税策を巡って、主要政党間の対立が深まっている。政府はこのままでは2026年の財政赤字が国内総生産(GDP)比で5.4%に達するとの見通しを示し、2027年に赤字を5%程度に抑えるためには巨額の財政改善が必要としている(詳しくは9月24日付けレポート「難航するフランスの予算協議」を参照されたい)。歳出削減や増税への反発をどう抑えるかが、大統領選挙を前に与党の大きな政治課題となっている。フィリップ氏が財政規律を前面に出すほど、現在の予算協議で表面化している財政再建の必要性と国民負担への反発という難題を引き受けることになる。
メランション氏を支える固定票
これとは対照的に、メランション氏には対立候補の組み合わせに左右されにくい強固な支持基盤がある。メランション氏は最近の複数の世論調査で15~20%程度の支持を確保している。特に若年層や低所得層から高い支持を集めている。他の陣営が分裂するなかで固定票を集めることができれば、初回投票では大きな強みとなる。
二番手争いをさらに複雑にするのが、中道左派の社会民主勢力の動きである。かつて二大政党の一角を占めた社会党(PS)を中心とする同勢力は、メランション氏から距離を置き、独自候補の擁立を目指し、10月に候補者を一本化する予備選を予定している。社会党のフォール書記長などに加えて、2024年の欧州議会選挙で社会民主勢力を復権に導いたグリュックスマン氏などが参加する。独自の中道左派政党「公共の広場(Place publique)」を率いるグリュックスマン氏は、2024年の欧州議会選挙を社会党などともに戦い、マクロン大統領の中道勢力に迫る支持を集めた。同氏はメランション氏と明確な距離を置き、親EU・ウクライナ支援・再工業化を軸とする欧州主義を掲げ、財政・社会保障政策では社会党の主流派よりもやや改革志向の立場を取る。富裕層や高額相続への負担強化を支持する一方、企業資産への一律課税には慎重で、企業活動への影響を配慮する。グリュックスマン氏が社会民主勢力の統一候補となった場合、メランション氏より穏健な左派票を取り込む一方、中道のフィリップ氏への票の流入を抑える可能性がある。
財政問題は大統領選挙にも影響する
フィリップ氏にとって今後の課題は、アタル氏など中道勢力内の競合候補との争いを勝ち抜くことだけではない。親EU・財政規律・経済改革を支持する有権者を固めるとともに、中道左派や穏健保守層にまで支持を広げられるかが焦点となる。
さらに注目されるのが、2027年予算を巡る政局と大統領選との連動である。足元でフランス国債の利回りが上昇しており、財政問題は金融市場の重要な関心事となっている。政府は巨額の財政赤字を削減する必要がある一方、大統領選を控えて大規模な歳出削減や増税を打ち出せば、有権者の反発を招く恐れがある。このジレンマは、財政再建を政策の柱とするフィリップ氏にとって特に大きい。政府が財政規律を優先すれば、自身の主張との整合性は高まるが、緊縮措置に対する反発を受けやすい。政府が財政再建を先送りすれば、フィリップ氏は大統領選でより厳しい改革の必要性を訴えざるを得なくなる。
2027年大統領選までまだ半年以上あり、現在の世論調査から決選投票の顔ぶれを断定することはできない。ただ、最近の調査が示した重大な変化は、中道候補をフィリップ氏に一本化すれば自動的に決選投票に進めるという従来のシナリオが揺らぎ始めたことである。マクロン大統領退任後の中道勢力を誰がまとめるのか、財政再建を巡る国民負担への反発をどう乗り越えるのか、社会民主派の候補がどこまで支持を集めるのか、そしてメランション氏が現在の支持基盤を維持できるのか、混戦となった二番手争いの行方に注目が集まる。
田中 理
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