- HOME
- レポート一覧
- 第一ライフ研レポート
- 内外経済ウォッチ『欧州~フランスの財政再建を阻む政治の壁~』(2026年11月号)
進まない財政再建、予算協議は難航
フランスの財政不安が広がっている。10月に発表した2027年予算案では、2026年に国内総生産(GDP)比5.4%に達する見込みの財政赤字を、2027年に5.0%へ縮小する方針を掲げた。政府はこうした計画を達成するため、年金の物価スライドの部分停止や税制優遇の縮小を盛り込んだが、年金受給者に負担を求める財政再建策に野党勢が猛反発しており、予算協議が難航している。
2024年の国民議会(下院)選挙以降、安定多数を持つ政治勢力がなく、政府は予算協議のたびに野党との妥協を迫られてきた。昨年は年内に予算を成立できず、年明け後に年金改革の棚上げを条件に野党の協力を取り付けた。一昨年は予算協議の難航で政権が崩壊した。政治の混乱と財政再建の遅れへの警戒から、フランスの10年物国債利回りは2002年以来の高水準に上昇している。
本格的な財政再建には年金や医療、地方財政、公務員給与などへの切り込みが避けられない。だが、年金給付や医療費の抑制には国民や労働組合が反発し、地方への支出削減には自治体が抵抗する。フランスは既に税・社会保険料負担が重く、増税にも限界がある。企業増税は競争力の低下を招き、富裕層課税で巨額の赤字を埋めることも難しい。財政再建には幅広い層への負担を伴うが、現在の政治環境では合意形成が極めて難しい。

大統領選挙で高まる不透明感
財政再建をさらに難しくしているのが、2027年春に迫る大統領選挙だ。選挙を前に、与野党とも有権者に痛みを求める政策を支持しにくい。大統領選挙の世論調査は、極右政党・国民連合(RN)のマリーヌ・ルペン氏が圧倒的にリードしている。RNは歳出削減を通じて財政再建に取り組む方針を示唆しているが、その具体策には欧州連合(EU)への拠出金削減など、実効性が疑われる内容も含まれる。大統領選後の財政再建の行方や欧州連合(EU)との関係悪化も不安視される。
フランスの財政不安が他の欧州諸国に広がり、2010年代前半の欧州債務危機のような深刻な危機に発展する可能性は今のところ低い。フランスはユーロ圏有数の経済規模と厚みのある国債市場を持ち、市場での資金調達から締め出されているわけではない。債務危機後の欧州は、金融安全網の整備や危機の再発防止策などを整備してきた。
フランスの苦境は、日本にとっても対岸の火事ではない。日本も高齢化に伴う社会保障費の増加と巨額の政府債務を抱え、金利上昇が続けば利払い費が膨らむ。両国の事情は異なるが、財政再建の遅れが将来の政策余力を狭め、市場の信任を損ないかねない点は共通する。日本にとっても、財政健全化と政治的合意形成をどう両立するかは避けて通れない課題だ。

田中 理
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

