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韓国、共に民主党新代表に金前首相、李政権の基盤強化は進むか

~党内には火種が残るうえ、不動産問題を理由に支持率低下に歯止めがかからず~

西濵 徹

要旨
  • 韓国では8月17日、与党・共に民主党の党大会で新代表選挙が行われ、李在明大統領に近い金民錫前首相が、党内主流派の鄭清来前代表を破って当選した。これにより、李氏は党内基盤を強化し、日本との関係改善を含む現行の「実用外交」路線を維持しやすくなった。その一方、新たな最高委員5人のうち3人は鄭氏に近いなど、党内対立の火種は残る。
  • 李政権を取り巻く状況は厳しさを増している。ソウルを中心とした不動産価格高騰やインフレへの不満から政権支持率は急落しており、8月14日発表の世論調査では支持率44%、不支持率46%と就任後初めて逆転した。不動産政策への不満が不支持理由の最多を占めており、規制強化や増税策を打ち出しても価格上昇に歯止めがかからない状況が続く。
  • 金融市場では、中銀がタカ派姿勢を示していることでウォン相場は持ち直しの動きがみられる。株式市場では、コーポレートガバナンス改革やAI・半導体投資への期待から半導体関連株中心に急騰する動きがみられたものの、足元では株価は乱高下する展開が続いており、「借金投資」に走った若年層をはじめとする国民の不満要因にもなっているとみられる。

韓国では8月17日、李在明(イ・ジェミョン)政権を支える革新系与党・共に民主党が党大会を開催し、新代表を選出した。党代表は、大統領選や総選挙の候補者後任に大きな影響力を持つなど、党内で絶大な権限を有する。代表の任期は2年であり、2028年4月までに実施される次期総選挙では、新代表が候補者公認を主導する立場となる。さらに、総選挙を経た党内勢力図の変化は、2030年3月に予定される次期大統領選の候補者選定にも影響し得る。現行憲法では、大統領任期は1期のみで再任が認められておらず、現職の李氏は次期大統領選に出馬できない。過去の政権は任期後半にかけて「死に体(レームダック)化」することが少なくなかった。このため、新代表選の結果は、李氏の求心力を大きく左右する要因として注目された。

背景には、李氏が党内において非主流派であることも影響している。李政権の外交方針を巡っては、国益に基づく「実用外交」を掲げ、就任以降は日本とシャトル外交を展開するなど、良好な関係構築が進められている。しかし、こうした対応を巡っては、党内主流派の鄭清来(チョン・チョンレ)前代表などが公然と批判してきた。こうしたなか、代表選には、鄭前代表、宋永吉(ソン・ヨンギル)元代表、そして李氏に近い金民錫(キム・ミンソク)前首相の3人が出馬したものの、事実上の鄭氏と金氏の一騎打ちとなった。選挙の結果、李氏に近い金氏が勝利したことで、李氏は党内基盤の強化と現行路線の維持が可能になった。一方で、新たに選出された最高委員5人のうち3人は鄭氏に近いとされ、党内対立が解消したわけではないことには注意が必要である。

足元の李政権を取り巻く環境は厳しさを増している。韓国では、首都ソウルを中心とする不動産価格の高騰が社会問題化しているうえ、イラン情勢の悪化をきっかけとするインフレが国民生活に悪影響を与えており、政権支持率は急落してきた(注1)。こうした状況にもかかわらず、与党内で代表選を巡る主導権争いが激化してきたことも、国民からの支持低下に拍車をかけた可能性がある。事実、世論調査会社の韓国ギャラップが8月14日に発表した最新調査では、政権支持率が44%となり、政権発足から初めて5割を下回る一方、不支持率は46%と初めて支持率を上回った。不支持の理由のトップは不動産政策となった。李政権は住宅ローンの貸し出し制限などの規制強化のほか、8月には超高額物件を対象とする課税強化を含む税制改正案を発表したものの、足元でも不動産価格の上昇が続くなど行方は見通せない(図1)。

図表
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物価上昇の一因となってきたウォン安を巡っては、中銀が7月会合で3年半ぶりの利上げを実施するとともに、追加利上げにも含みを持たせるなど「タカ派」姿勢を示したことを追い風に、足元では持ち直しの動きを強めている(注2)。一方で、李政権は、韓国企業の相対的低評価(コリアディスカウント)の解消に向けて、商法改正などコーポレートガバナンス(企業統治)強化の取り組みを進めた。加えて、世界的なAI(人工知能)・半導体関連投資の拡大期待の高まりも追い風に、時価総額上位の半導体関連株を中心に株価は急上昇してきた。しかし、このところは、サムスン電子とSKハイニックスの2社が主要株価指数(KOSPI)の構成銘柄全体の時価総額に占める割合が5割を上回るなか、2社の株価の動向に左右される形で株価は乱高下している(図2)。こうした状況は、若年層などが一攫千金を狙っていわゆる「借金投資」に動いたことも重なり、幅広い国民の間で不満が高まる一因になっているとされる。

図表
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李政権にとっては、金氏が新代表に選出されたことで、党内基盤の強化を通じた党との連携を強めるうえで追い風になる。しかし、党内には依然として対立の火種がくすぶるほか、国民生活に直結する課題も山積している。低下が続く政権支持率に歯止めをかけることができるか、李政権にとっては難しい対応が迫られる局面が続くであろう。

以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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