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2026.08.17
日本経済
日本経済見通し
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景気指標(日本)
2026年4-6月期GDP(1次速報値)
~予想を下回るも、中東情勢悪化のなかでも景気の底堅さを維持~
新家 義貴
予想下振れも、景気の回復基調は崩れず
本日内閣府から公表された2026年4-6月期の実質GDP成長率(1次速報)は前期比年率+1.1%(前期比+0.3%)となった 。3四半期連続のプラス成長だが、事前の市場予想(前期比年率+2.2%、筆者予想+1.5%)を下回る結果である。高い伸びが見込まれていた個人消費が前期比横ばいにとどまったこと、設備投資が減少したこと、公的在庫が大幅なマイナス寄与(前期比年率寄与度:▲2.1%Pt)になったことなどが下振れの主因であり、弱めの結果と言えよう。
もっとも、1-3月期の前期比年率+1.9%という比較的高い伸びの後であることに加え、4-6月期はイラン情勢の悪化によって供給不安や輸入価格の上昇、家計のマインド悪化といった逆風が強まった時期である。以前は、イラン情勢の悪化に伴う輸入価格の上昇や供給制約を背景に、マイナス成長に陥るとの見方もあったことを考えると、4-6月期がプラス成長を維持したことは前向きに評価すべきだろう。国家備蓄の放出や米国等からの代替調達の進展によって深刻な供給制約が回避されたことに加え、AI関連需要の強まりなども景気を下支えした。景気の回復基調は崩れていないと評価できる。
なお、今回注目された個人消費の弱さについては注意が必要な点がある。26年度から高校授業料や学校給食費への公的支援が拡充され、これまで家計が負担していた支出の一部を政府が負担する形となった。このため、GDP統計上は、その分が家計消費から政府消費へ振り替えられている。この影響もあって、政府消費は前期比+1.6%と急増している。4月以降も家計は授業サービスを享受しており、この部分は実態としての消費の抑制と見る必要はない。程度はともかく、今回の個人消費の下振れをそのまま4-6月期の消費活動の弱さとみるのは適切ではないだろう。制度要因を除けば消費の実勢は底堅かったとみられる。
名目賃金の高い伸びが続くなか、物価上昇率が鈍化したことで実質賃金が前年比で増加に転じ、家計の購買力が徐々に回復している。このことが、中東情勢悪化を受けて消費者マインドが大きく悪化するなかでも、個人消費が底堅く推移している背景にあるとみられる。
設備投資は前期比▲1.2%と2四半期連続で減少したほか、財輸出も同▲1.0%となった。中東情勢の悪化に伴う資材調達難や物流面の制約、中東向け輸出の減少の影響が一部に表れた可能性があり、この点が4-6月期の成長率を抑制する要因となっている。ただし、設備投資については、高水準の企業収益や人手不足を背景とした省力化投資、デジタル・AI関連投資などへの需要は引き続き強い。こうした投資需要の強さを踏まえれば、設備投資の基調が崩れたとはみていない。輸出についても、足元で中東向け輸出が下げ止まっていることに加え、海外景気の底堅さやAI・半導体関連需要が支えとなることから、先行きは持ち直しに向かうとみられる。
総じてみれば、4-6月期のGDPは事前の想定対比で弱めであり、物足りなさが残ったことは否めない。一方、個人消費は制度要因を考慮すれば表面上の値ほど弱くなく、国家備蓄の放出や代替調達によって供給面からの大きな混乱も回避された。イラン情勢が悪化するなかでも景気回復の流れが途切れず、日本経済が一定の耐久力を示した点は前向きに評価できる。中東情勢悪化前の景気の強さを示した1-3月期に続き、ショックの影響が本格化した4-6月期にもプラス成長を維持したことの意味は小さくない。
輸入減少の解釈に注意
4-6月期の外需寄与度は前期比年率+1.8%Ptと大きなプラスとなった。輸出が前期比+0.5%と小幅に増加したことに加え、輸入が前期比▲1.5%と落ち込んだことの影響が大きい。このことが4-6月期の成長をもたらしたようにも見え、「輸入減少によって成長率が押し上げられており、内容は悪い」との声も聞かれる。
もっとも、この輸入の下振れは国内需要の減少が主因ではなく、中東からの資源輸入が激減したことによってもたらされた面が大きい。この資源輸入の減少によって生じた国内供給の不足は原油の国家備蓄の放出によって一部賄われており、それは公的在庫変動の減少としてあらわれている。4-6月期の公的在庫変動の寄与度は前期比▲0.5%Pt(前期比年率▲2.1%Pt)にも達する。輸入減少による外需寄与度の押し上げの多くが、公的在庫の取り崩しによって相殺される構図である。
両者は中東情勢悪化への対応という点で表裏一体の動きである。このため、外需のプラス寄与と公的在庫のマイナス寄与を個別に景気の強弱として評価することは適切ではない。輸入と在庫変動、国内需要、生産活動を併せて評価することが重要だ。
むしろ重要なのは、国家備蓄の放出や米国等からの代替調達によって必要な供給量が確保され、原材料不足によって生産活動が大きく制約される事態が回避されたことである。GDP統計上、国家備蓄の放出は公的在庫の減少としてマイナスに表れるものの、経済実態としては供給面からの混乱を抑え、生産や経済活動への悪影響を限定する役割を果たした。この点は、4-6月期の日本経済を評価するうえでむしろ前向きに捉えるべきだろう。
7-9月期もプラス成長を予想
先行きについても、景気の緩やかな回復基調は維持されるとみている。現時点では、7-9月期の実質GDP成長率を前期比年率ゼロ%台のプラス成長と予想している。4-6月期は事前予想を下回ったものの、中東情勢が悪化するなかでも前期比年率+1.1%のプラス成長を維持した。7-9月期についてもプラス成長を確保し、景気の回復基調が続くとみている。
好材料は、春先に大きな懸念材料となっていた供給面のリスクが大幅に後退していることである。国家備蓄の放出に加え、原油やナフサ等について米国をはじめとした中東以外からの代替調達が進展している。4-6月期のGDPでも、中東からの資源輸入が大きく減少するなかで深刻な供給制約による生産活動の落ち込みは回避された。原材料不足によって生産活動が大きく制約されるリスクは低下しており、供給面から景気が急速に悪化する可能性は春先と比べてかなり小さくなった。
海外景気が底堅く推移していることもプラス材料である。特にAI関連需要は引き続き強く、半導体や電子部品、関連する生産設備への需要が輸出や設備投資を下支えするとみられる。4-6月期の財輸出は前期比▲1.0%と減少したが、中東向け輸出には既に下げ止まりの動きがみられる。海外景気の底堅さやAI・半導体関連需要を背景に、輸出は先行き持ち直しに向かうと予想する。
設備投資は4-6月期に前期比▲1.2%と2四半期連続で減少しており、中東情勢悪化に伴う資材調達難や先行き不透明感が投資実行を遅らせた可能性がある。一方、高水準の企業収益や人手不足を背景とした省力化投資、デジタル・AI・データセンター関連などへの投資需要は引き続き強い。春先にみられた資材の調達難が、代替調達の進展等を受けて足元では概ね解消していることに加え、中東情勢を巡る不透明感も和らいでいることから、先送りされていた投資が徐々に実行に移されることが期待される。 輸入コスト上昇による企業収益への下押しには注意が必要だが、収益水準の高さや構造的な投資需要の強さを踏まえれば、設備投資は今後持ち直していく可能性が高いだろう。
個人消費については、4-6月期の表面上の伸びは弱かったものの、家計消費から政府消費への振り替わりを考慮すれば、実勢は統計上の数字よりも底堅かった可能性が高い。高い名目賃金の伸びが続いていることに加え、電気・ガス料金への補助もあり、7-9月期の段階では物価高による消費への下押しが急激に強まるとはみていない。このため、個人消費は緩やかな増加を予想する。
一方、年度後半には、中東情勢の悪化を受けて既に生じている輸入物価や川上段階でのコスト上昇が、時間差を伴って川下へ波及する。食料品や日用品などへの価格転嫁が広がれば、家計の実質購買力を圧迫するほか、企業にとってもコスト増が収益の重石となる。足元では実質賃金が改善しているものの、物価上昇率が再び高まれば、年度後半には実質所得の改善が一服する恐れもある。このため、景気の回復ペースは次第に緩やかになる可能性があるだろう。
それでも、深刻な供給制約が回避されつつあること、高水準の企業収益や強い設備投資意欲が続いていること、海外景気やAI関連需要が底堅いことを踏まえれば、景気の回復基調そのものが崩れる可能性は低いとみている。中東情勢を巡る問題の焦点は、春先の「数量・供給不足」から、今後は「価格・所得面」へ移っていくとみている。
需要項目別の詳細
個人消費は前期比▲0.0%とほぼ横ばいとなった。消費者マインドはイラン情勢悪化を受けて大きく悪化したものの、実際の消費活動は表面上の数字ほど弱くなかったとみられる。26年度から高校授業料や学校給食費への公的支援が拡充され、家計が負担していた支出の一部が政府負担に移ったことで、GDP統計上は家計消費から政府消費への振り替わりが生じている。このことが表面上の個人消費を押し下げている面が大きい。名目賃金の高い伸びと物価上昇率の鈍化による実質所得の改善が、マインド悪化のなかでも消費を下支えしたと考えられる。また、26年3月末に自動車税および軽自動車税の環境性能割が廃止されたことや、27年4月からの省エネ性能の新基準導入を前にした駆け込み需要により、自動車やエアコン販売が伸びたことも押し上げに効いている。
先行きは、4-6月期にみられた耐久財消費の押し上げが弱まる一方、高い賃上げが消費を下支えするとみられる。ただし、年度後半には既往の輸入コスト上昇の価格転嫁が進み、食料品や日用品、電気・ガス代などの上昇が家計の実質購買力を圧迫する可能性がある。個人消費は緩やかな増加を続けるとみるが、年度後半の物価高の影響には注意が必要である。
設備投資は前期比▲1.2%と2四半期連続で減少した。中東情勢の悪化に伴う資材の調達難や物流面の制約、先行き不透明感の高まりが、一部で投資の実行を遅らせた可能性があるほか、研究開発投資も一時的に落ち込んだとみられる。もっとも、高水準の企業収益や人手不足を背景とした省力化投資、デジタル・AI・データセンター関連投資などへの需要は引き続き強い。各種調査でも設備投資計画は堅調であり、実績は弱いものの、企業の投資意欲そのものが大きく後退したとはみていない。
先行きについては、春先にみられた資材の調達難が、代替調達の進展等を受けて足元では概ね解消していることに加え、中東情勢を巡る不透明感も和らいでいることから、先送りされていた投資が徐々に実行に移されることが期待される。 輸入コスト上昇による企業収益への下押しには注意が必要だが、収益水準の高さや構造的な投資需要の強さを踏まえれば、設備投資は今後持ち直していく可能性が高いだろう。
輸出は前期比+0.5%と小幅に増加した。ただし、財輸出が同▲1.0%と減少する一方、サービス輸出が+4.9%と大きく増加しており、財輸出は弱かった。中東情勢の悪化に伴う物流面の混乱や中東向け自動車輸出の減少などが、財輸出を下押しした可能性がある。一方、4-6月期には大口要因によって研究開発サービスの受取が急増し、サービス輸出が大きく押し上げられたとみられる。この増加は一時的な性格が強く、輸出全体の基調を判断する際には割り引いてみる必要がある。
先行きについては、中東向け輸出に下げ止まりの動きが出ていることに加え、供給制約や物流面の混乱も緩和していることが好材料である。加えて、海外景気の底堅さやAI関連需要の拡大が続くとみられることから、輸出は今後、緩やかに持ち直していくと予想する。
輸入は前期比▲1.5%と減少した。イラン情勢の悪化により中東からの輸入が激減したことが影響している。この結果、外需寄与度は前期比+0.5%Pt(前期比年率+1.8%Pt)と大きなプラスとなった。
ただし、この外需寄与度のプラスは、輸出の増加によるものではなく、資源輸入が困難だったことに伴う輸入の減少によって生じたものである。その裏側では国家備蓄の取り崩しが進み、公的在庫変動は前期比▲0.5%ポイント、前期比年率では▲2.1%ポイントのマイナス寄与となっている。この輸入減と公的在庫減はセットで見る必要がある。
なお、6月には原油輸入数量が大きく持ち直しており、供給面での最悪期は脱した可能性が高い。この点は先行きの景気を見る上で朗報だ。もっとも、代替調達は従来よりも輸送距離が長く、輸送費や保険料、スポット調達プレミアム等の負担も大きい。このため、供給数量の確保という点では改善している一方、調達コストの上昇という問題は残っている。 今後は輸入数量の正常化とともに、価格面での負担が企業や家計へどの程度波及するかが焦点となる。
民間在庫変動の寄与度は前期比+0.3%Ptと、4四半期ぶりのプラス寄与となった。25年10-12月期、26年1-3月期と在庫の取り崩しが続いた反動もあり、4-6月期には取り崩し幅が縮小したことが成長率を押し上げた。内訳では製品在庫の寄与が大きかった。
住宅投資は前期比▲0.5%と減少した。建設コストの上昇や住宅ローン金利の上昇が下押し要因となっており、住宅投資を取り巻く環境は引き続き厳しい。先行きについても、建設コストの高止まりや金利上昇の影響から、低調な推移が続く可能性が高い。
公共投資は前期比▲0.1%とほぼ横ばいとなった。補正予算に盛り込まれた公共事業などが下支えしており、均してみれば横ばい圏内での推移が続いている。先行きについても、防災・減災、国土強靱化関連を中心とした公共事業が一定の下支えとなるとみられる一方、人手不足や資材価格上昇が工事進捗の制約となる可能性には注意が必要である。


新家 義貴
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