2027年春闘のスケジュールと金融政策

~2027年春闘の行方は3月より前に見えてくる~

新家 義貴

要旨
  • 2027年春闘に向けて、2026年10月の連合「春季生活闘争基本構想」を皮切りに、経団連「経労委報告」原案、主要産別の要求方針、早期賃上げ表明企業など、重要イベントが秋から冬にかけて相次ぐ。3月の集中回答日を待たず、春闘の「初動のモメンタム」を段階的に把握することが可能である。

  • 2027年春闘では、2026年まで3年連続で続いた高い賃上げが維持されるかが焦点となる。主要産業別労働組合の要求水準や早期賃上げ表明企業の広がり、中小企業への波及などを通じて、賃上げの持続性と広がりを見極める必要がある。

  • 足元では物価上振れリスクが日銀の金融政策判断の中心にあるが、賃金上昇の持続性も引き続き重要である。春闘関連情報は26年10月時点では限定的だが、12月には労使双方の姿勢や具体的な要求水準がかなり明らかになり、1月にはさらに幅広い企業情報を確認できる。2025年の経験を踏まえれば、年内に確認される「初動のモメンタム」が利上げ判断を後押しする一つの材料になる可能性がある。

1.2027年春闘に向けたスケジュールを整理する

2027年春闘への注目が早くも高まりつつある。連合の最終集計によると、2026年春闘の賃上げ率は5.01%となり、前年の5.25%をやや下回ったものの、3年連続で5%台の高い賃上げとなった(厚生労働省「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」ベースでは5.18%)。2027年春闘では、こうした高い賃上げが4年目も続くかが最大の焦点となる。

春闘の方向性を判断するための材料は、3月の集中回答日を待たず、秋以降に順次明らかになる。連合の基本構想、経団連の経労委報告原案、産別の要求方針、早期賃上げ表明などを通じて、春闘の「初動のモメンタム」を段階的に確認することができる。

こうした情報は金融政策を考えるうえでも無視できない。足元では物価上振れリスクが日銀の利上げ判断の中心にあるが、賃金上昇の持続性は引き続き重要な判断材料である。本稿では、2027年春闘の行方を見極めるうえで押さえておくべき主要イベントや関連経済指標を時系列で整理するとともに、金融政策との関係について考える。

連合「春季生活闘争基本構想」(10月中~下旬)

春闘関連で最初に注目されるイベントが、連合が毎年10月中~下旬に公表する「春季生活闘争基本構想」である(26年春闘では25年10月23日公表)。翌年の春闘に向けての労働組合側の基本理念や方針、重点課題を示すものであり、経済状況や社会課題を踏まえ、賃上げ目標や格差是正、適正取引の促進などを掲げる。なかでも注目されるのが賃上げの目安であり、昨年はベースアップを「3%以上」、定期昇給分を含めた総額で「5%以上」、中小企業は大手との格差是正を図るため「6%以上」の賃上げを求める方針が示されていた。前年の基本構想と比較することで、組合側が翌年の春闘に向けてより強気か慎重かを判断することができ、春闘全体のトーンをつかむうえで重要な材料となる。

なお、この「春季生活闘争基本構想」をたたき台とした「春季生活闘争方針」が毎年11月末~12月初に公表されるが、賃上げの目安については通常、大きな変更はない。

経団連「経労委報告」の原案判明(11月上~中旬)

経労委報告(経営労働政策特別委員会報告)は、経団連が毎年冬に公表する、春闘に対する経営側の基本スタンスを示す報告書である。経営側の雇用政策に関する方向性や賃上げの考え方など、春闘交渉に向けた経営側の指針となる。正式な報告書は毎年1月下旬に公表されるが、その原案については前年の11月上旬頃に判明し、報道されることが多い。経営側が翌年の春闘にどのような姿勢で臨もうとしているのかを早い段階で把握できるため、注目度は高い。

2027年春闘に向けては、高い賃上げを4年目も維持する姿勢が示されるかが焦点となる。人手不足や採用競争の激化、物価上昇の持続は引き続き賃上げを促す一方、数年にわたる賃上げで人件費負担は累積しており、イラン情勢を背景とした原材料費や物流費の上昇も企業収益を圧迫する可能性がある。こうした環境下でも賃上げ継続に前向きな姿勢を維持するのか、それとも収益環境への配慮から慎重なトーンを強めるのかが注目される。また、中小企業への賃上げ波及や価格転嫁、取引適正化をどのように位置づけるかも重要なポイントとなろう。

なお、現時点で経営側から2027年春闘に向けた初期的なメッセージが出始めている。経団連の筒井会長は9月7日の記者会見で、「ベースアップ実施の検討を引き続きスタンダードと位置付けていきたい」と述べ、賃金引き上げの力強いモメンタムを維持したいとの考えを示している。イラン情勢悪化の長期化と原油高は不安要素ではあるものの、現時点では、経営側が賃上げ姿勢を後退させている様子はみられない。

政労使会議(11月下旬頃)

政労使会議は、政府、労働側(連合など)、経営側(経団連など)の代表が、春闘の賃上げをはじめとする労働条件の改善について意見交換を行う場である。政府から労使に賃上げを要請することが多く、賃上げに向けた社会的な機運を確認するうえで注目される。2026年春闘に向けては2025年11月25日に開催され、高市首相が「一昨年、昨年の水準と遜色のない水準での賃上げ」と「物価上昇に負けないベースアップ」を要請したほか、経営側、労働側も高い賃上げの継続に前向きな姿勢を示した。

2027年春闘に向けても、政府がどの程度強く賃上げを求めるのかに加え、経営側、労働側が高い賃上げの継続についてどの程度認識を共有しているかが焦点となる。また、中小企業の価格転嫁や取引適正化、賃上げ原資の確保に向けた支援策がどの程度打ち出されるかも重要である。政府が企業のコスト負担を和らげつつ、賃上げを後押しするためにどのような環境整備を打ち出すかにも注目したい。

民間シンクタンクの春闘賃上げ率予測(11月~12月)

毎年11月~12月にかけて、民間シンクタンク・調査機関から翌年の春闘賃上げ率の予測が出されることが多い(筆者は11月に作成している)。予測をレポートとして作成することもあれば、経済見通しレポートのなかで言及されることもある。予測の精度についてはさておき、翌年の春闘賃上げ率についての相場観は、この時期に徐々に形成される。

2027年春闘予測で注目されるのは、前年並み、あるいはそれ以上の高い賃上げを予想するのか、それとも一定の鈍化を見込むのかである。後者の場合でも、「やや鈍化するが高水準」と高い賃上げが持続するとの評価か、それともある程度の鈍化を見込んで「5%割れ」を強調するかで、春闘への評価に違いが出る。2026年春闘賃上げ率は連合ベースで5.01%、厚生労働省ベースで5.18%であり、2027年春闘では、5%前後の高い賃上げを維持できるかが一つの焦点となる。

2027年春闘では、構造的な人手不足、物価高、高水準の企業業績は賃金の押し上げ要因になる一方、数年にわたる人件費負担の累積や、原材料費・物流費の上昇は賃上げ抑制要因となる。各機関の予測を比較することで、2027年春闘に対する現時点での相場観や、賃上げを支える力がどの程度続くとみられているのかを把握することができるだろう。

産業別労働組合組織の賃上げ要求案判明(11月~)

11月に入ると、主要な産業別労働組合組織で翌年春闘に向けた賃上げ要求方針案が報道等を通じて明らかになり始める。正式な要求方針は1月~2月にかけて発表されるが、正式決定前に報道等で概要が先行して判明するのがこの時期である。前年との比較で要求水準が引き上げられるのか、維持されるのか、あるいは抑制されるのかを早い段階で具体的な数字として確認できるため、春闘全体の相場観を占ううえで重要な材料となる。

前回の2026年春闘では、11月初めからUAゼンセンなどの要求方針案が明らかになり、その後、基幹労連、JAM、全電線、私鉄総連、自動車総連、電機連合などでも、前年並みか前年をやや上回る要求方針の報道が相次いだ。こうした産別の要求方針が、2026年春闘の「初動のモメンタム」を判断する重要な材料となった。

2027年春闘でも、主要産別が前年並みの高い要求を維持するのか、それとも要求水準に変化がみられるのかが注目される。特に、自動車や電機など春闘相場への影響が大きい産別の要求は注目度が高い。

早期賃上げ表明企業の登場(12月~1月)

近年では、春闘の本格交渉を待たず、年末から年始にかけて翌年度の賃上げ方針を公表する企業も増えている。

賃上げに積極的な企業であることをアピールする目的もあってか、早期表明を行う企業は大幅賃上げを行うことが多い。そのため、こうした企業が多ければ賃上げムードが醸成される効果がある。また、賃上げ表明を行った企業のライバル企業に賃上げ圧力を及ぼす面もあるだろう。 

特に今回は、コスト上昇が続くなかでも大幅な賃上げを早期に表明する企業が相次ぐかどうかが重要である。こうした企業が多ければ、企業の賃上げ余力や人材確保意欲がなお強いことを示す材料となる。一方、前年と比べて早期表明の動きが弱ければ、2027年春闘に対する慎重な見方が広がる可能性がある。

経済三団体共催・新年祝賀会(1月上旬)

年明けには、経団連、経済同友会、日本商工会議所による新年祝賀会が開催される。各団体トップや大手企業経営者から春闘についてコメントが出ることが多く、年明け時点での経営側の賃上げ姿勢を確認する機会となる。

特に、年末までに示された経労委報告原案や早期賃上げ表明のトーンが維持されているかを確認する意味で重要である。また、秋から冬にかけての経済環境の変化を受け、経営側の姿勢に変化が出ていないかも確認したい。

経団連と連合の懇談会(1月下旬)

経団連と連合のトップが春闘や社会課題について意見交換を行う場である。これをもって春闘の事実上のスタートと言われるイベントである。

組合による賃上げ要求提出(2月頃)

産業別組合組織の要求方針等を受けて、個別の組合が詳細を検討し、要求水準を固める。2月中旬から下旬にかけて会社側に提出されることが多いが、高い賃上げを要求する組合があった場合、大きく報道されることがある。

連合・春闘要求集計結果(3月上旬) 

3月上旬に、連合が加盟組合の賃上げ要求を集計した結果を公表する(前回は2026年3月5日公表)。要求と実際の賃上げの連動性は非常に高いため、この段階になると2027年春闘の最終結果についてかなり精度の高い見通しが可能になる。

また、この調査では、組合員300人以上の組合と300人未満の中小組合に分けて集計していることから、中小組合の賃上げ要求動向を把握できる点も重要である。大企業だけでなく、中小組合にも高い賃上げ要求が広がっているかどうかを確認できる。

春闘の集中回答日(3月中旬)

春闘の集中回答日とは、主要企業における労使交渉の回答が一斉に行われる日のことで、通常、3月中旬に設定される(前回は2026年3月18日)。労働組合は、交渉力を強めるために同じ業界の労働組合同士で連携するが、その際、交渉日程でも歩調を合わせることから、回答日が集中する。

なお、中小企業の交渉は大企業よりも遅いタイミングで行われることが多いが、その際には集中回答日で形成された賃上げ相場が一つの目安となる。このため、中小企業への賃上げ波及という観点からも重要である。集中回答日では、近年は満額回答が相次いできたが、2027年もこうした流れが続くかが注目される。

連合・第1回回答集計公表(3月中旬)

集中回答日から数日後に、連合から春闘の第1回回答集計が公表される(前回は2026年3月23日)。この春闘回答集計は、第1回集計から7月上旬に公表される最終集計まで計7回の調査があり、集計が進むにつれて多少下振れていくことが多いが、修正幅は例年それほど大きくない。そのため、この結果によって、その年の春闘賃上げ率の大勢がほぼ決することになる。注目度は非常に高く、大きく報道されることが多い。なお、春闘で決まった賃上げは、5月以降に反映が本格化し、その後も7~8月頃まで徐々に反映が進んでいく傾向がある。

2.春闘の解像度は段階的に高まる

ここまで挙げた春闘関連イベントはいずれも重要であるが、なかでも注目度が高いのは、①経団連「経労委報告」の原案判明、②産業別労働組合組織の賃上げ要求案、③早期賃上げ表明企業の登場、④連合・春闘要求集計結果、⑤集中回答日、⑥連合・第1回回答集計である。①で経営側の基本スタンスを確認し、②で具体的な要求水準を把握、③で企業側の賃上げ意欲や賃上げムードの広がりを確認する。その後、④~⑥で要求・回答の具体的な数字が明らかになり、春闘の全体像が固まっていく。

このように、時間の経過とともに2027年春闘の解像度は徐々に高まる。もちろん、第1回回答集計まで待てば賃上げ率の大勢はほぼ判明するが、それ以前でも、経営側の姿勢や産別の要求水準、早期賃上げ表明企業の動向などを積み上げることで、高い賃上げが続く可能性をある程度判断することは可能である。

3.2027年春闘を読む上で併せて注目したい材料

ここまで挙げた春闘関連イベントに加え、2027年春闘の行方を考える上で、賃上げを取り巻く経済環境も併せて確認する必要がある。なかでも注目したいのが、日銀短観、日銀支店長会議、消費者物価である。これらは春闘そのもののイベントではないが、企業の賃上げ余力や賃上げ姿勢、労働側の要求水準を左右する重要な材料となる。

日銀短観(26年10月1日、12月14日、27年4月1日)

日銀短観はこの先、10月1日(9月調査)、12月14日(12月調査)、4月1日(3月調査)に公表される。日銀は景気指標として日銀短観を最重要視しており、金融政策への影響も大きい。イラン情勢が企業業績や企業景況感にどの程度悪影響を及ぼしているか(いないか)、設備投資計画に下振れはみられないか、物価上振れの可能性はいかほどかといったことを確認していくことになる。26年度の企業業績が堅調さを保っているのであれば、27年春闘でも高い賃上げが実現する可能性が高まる。逆に、業績下振れが生じれば、春闘への慎重論につながる可能性がある。

日銀支店長会議(26年10月8日、27年1月、4月)

日銀支店長会議は日本銀行の正副総裁や審議委員、各地の支店長が参加し、年4回開催される。各支店長は自分の担当する地域の金融機関や企業から集めた生の声に基づき、その地域の経済・金融情勢を報告する。各地域の景気・産業動向や企業の設備投資・賃上げ意欲など、企業ヒアリングを通じて、大企業だけでなく中小企業の賃上げ姿勢や価格転嫁の状況、人手不足感などを把握できる。前述の春闘関連イベントでは、早期に把握できるものの大半は大企業に関する情報であり、雇用者の大半を占める中小企業の動向については把握が難しい。そのため、中小企業の動向を確認できるという点で、日銀支店長会議の重要性は高い。

2027年春闘に向けては、2026年10月8日、2027年1月の支店長会議が注目される。10月では、2027年春闘に向けた企業の初期的な賃上げ姿勢がどの程度みられるかが焦点となる。さらに1月になると、春闘を間近に控え、企業側の考えもかなり固まってくる。年末までに判明した経労委報告原案や産別の要求方針、早期賃上げ表明企業などの情報と合わせることで、春闘の方向性をかなり具体的に把握できるようになるだろう。コスト上昇が地方企業や中小企業にどの程度影響しているか、価格転嫁が進んでいるか、賃上げ姿勢が維持されているかといった「統計では捉えにくい情報」を確認できる点で注目度は高い。

消費者物価指数

物価動向も2027年春闘の要求水準を左右する重要な材料である。賃上げ交渉では、足元の物価上昇率や生活コストの上昇が強く意識されるためだ。特に2026年秋から2027年初にかけての物価動向が、労働側の要求姿勢に影響を与える可能性が高い。

特に注目したいのは、食料品や日用品、サービス価格の動きである。イラン情勢悪化後に生じた原材料費、包装資材費、物流費などの上昇が、どの程度消費者価格へ波及するかがポイントとなる。物価上昇が高めに推移すれば、労働側にとって実質賃金の改善を求める根拠となり、高い賃上げ要求を後押しする可能性がある。

また、CPI全体の上昇率だけでなく、その中身にも注目したい。仮に政府の支援策によってエネルギー価格が一時的に押し下げられる場合でも、基調的な価格上昇が続けば、家計の生活実感としての物価高は残りやすい。こうした物価動向が、2027年春闘における労働側の要求水準や、実質賃金改善への意識にどの程度反映されるかを確認していく必要がある。

4.金融政策への影響をどうみるか

2027年春闘に関する情報は、秋以降、段階的に積み上がっていく。この点は、今後の金融政策を考えるうえでも重要である。足元の日銀は、基調的な物価上昇率が2%に近づくなかで、原油高や価格転嫁の広がりなどを通じた物価上振れリスクを強く意識しており、春闘を利上げ判断の中心に据えているわけではない。

一方、賃金上昇が持続し、それがサービス価格などへ波及していくかどうかは、基調的な物価動向を判断するうえで引き続き重要である。春闘は現時点では金融政策判断の中心的な材料ではないものの、秋から冬にかけて春闘の解像度が高まるにつれて、その位置づけが徐々に高まる可能性がある。

こうした観点からみると、秋から冬にかけて春闘関連情報がどこまで積み上がっているかは、各金融政策決定会合での判断材料の厚みにも影響する。

まず、2026年10月会合の段階では、2027年春闘について得られる具体的な情報は限られる。 連合の「春季生活闘争基本構想」によって労働側の基本スタンスは確認できるほか、短観や支店長会議などを通じて、企業収益や賃上げを取り巻く環境を把握することはできる。ただし、経団連「経労委報告」の原案や主要産別の具体的な要求方針はまだ判明しておらず、春闘に関する解像度はまだ高くない。このため、10月時点では高い賃上げが続く環境が維持されているかを確認する段階にとどまると位置づけられる。

これに対し、12月になると春闘の解像度は大きく高まる。経労委報告原案から経営側の姿勢が明らかになり、主要産別の要求方針案、政労使会議、民間シンクタンクの予測なども出そろってくる。早期に翌年度の賃上げを表明する企業も現れ始めるため、労使双方の姿勢や具体的な要求水準から、翌年も高い賃上げが続くかどうかをかなりの程度判断できるようになる。

この点では、2025年の金融政策運営が参考になる。植田総裁は同年10月会見で、春闘について最終妥結の賃金上昇率が判明するまで待つのではなく、「初動のモメンタム」を確認したいと説明していた。その後、12月会合では、労使の対応方針や日銀の本支店ヒアリングなどを踏まえ、翌年も「しっかりとした賃上げが実施される可能性が高い」と判断し、利上げに踏み切った。春闘の最終結果を待たなくても、年内に初動のモメンタムを確認できれば、それが政策判断を後押しし得ることを示した例といえる。 1月まで待てば、判断材料はさらに増える。 年末年始の早期賃上げ表明や新年祝賀会での経営者発言に加え、1月の支店長会議では、中小企業を含めた賃上げ姿勢について企業ヒアリング情報を得ることができる。12月までに春闘の方向感はかなり見えてくる一方、1月にはその見方をより幅広い企業情報によって確認することが可能になる。

したがって、春闘という観点からみれば、10月は「高い賃上げが続く環境が維持されているか」を確認する段階、12月は「初動のモメンタムをかなり具体的に把握できる段階」、1月は「その見方をより幅広い情報で確認する段階」と整理できる。2025年の経験を踏まえれば、日銀は必ずしも3月の春闘結果まで待つ必要はない。賃金の観点からは、年内に十分強い初動のモメンタムを確認できるかどうかが、12月と1月の政策判断を分ける一つのポイントになり得る。

このように、今後段階的に春闘動向や関連経済指標の情報が積み上がり、それに応じて賃金上昇の持続性に対する判断も深まっていくことになる。足元では物価上振れリスクが金融政策判断の中心にあるが、春闘動向も利上げのタイミングやペースに影響を与え得る。本稿で解説した春闘関連のイベントについて、注意深く確認していくことが重要になるだろう。

図表
図表

新家 義貴


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

新家 義貴

しんけ よしき

経済調査部・シニアエグゼクティブエコノミスト
担当: 日本経済短期予測

執筆者の最近のレポート

関連テーマのレポート

関連テーマ