消費者物価指数(全国・2026年6月)

~6月までは落ち着きも、先行きは上振れか。夏場の食品値上げラッシュに警戒~

新家 義貴

図表
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上昇率は拡大も、前年の裏要因が大きい。コアコアは引き続き落ち着いた動き

本日総務省から発表された26年6月の全国消費者物価指数では、生鮮食品を除く総合(CPIコア)が前年比+1.6%と、前月の+1.4%から上昇率が拡大した。季節調整済み前月比でも+0.2%と、緩やかな上昇が続いている。市場予想通りの結果であり、意外感はない。

上昇率は前月から拡大したが、これはエネルギー要因でほぼ説明可能である(前年比寄与度:5月▲0.21%pt → 6月▲0.01%pt)。なかでも石油製品の寄与度は5月の▲0.07%ptから6月は+0.10%ptへ大きく上昇したが、これは昨年同時期にガソリン価格の定額引き下げが実施されたことの裏が出たに過ぎない。また、電気・ガス代もマイナス寄与が縮小しているが、これも前年に価格が低下した裏の要因が大きい。

エネルギー以外のコアコア部分は、日銀版コア(生鮮食品及びエネルギーを除く総合)が前年比+1.7%(5月:+1.8%)、米国型コア(食料及びエネルギー除く総合)は前年比+1.2%(5月:+1.1%)となった。いずれも変化は小さく、概ね前月並みという評価でよいだろう。

このように、6月のCPIコアの上昇率拡大はエネルギー価格における前年の裏要因によるところが大きく、これを除けば概ね横ばい圏で推移している。食料品価格の鈍化を主因として、インフレ率はこのところ落ち着きを見せている。イラン情勢悪化に由来する物価上昇品目も目立っておらず、少なくとも6月段階では物価上昇圧力が強まっているとは言いにくい。

もっとも、これで先行きの上振れリスクが払拭されたわけではない。既往の資源価格上昇や調達難の影響は、企業物価段階における価格上昇としてすでに顕在化しており、今後、徐々に川下へ波及してくる可能性がある。今後は包装資材高等を理由とした食料品値上げの加速に注意が必要だ。6月までの物価上昇率は落ち着いているものの、先行きについてはなお上方向のリスクを意識しておく必要がある。

食料品価格の鈍化が続く

電気・ガス代は前月からマイナス寄与が若干縮小した(電気・都市ガス代の前年比寄与度:5月▲0.14%pt → 6月▲0.10%pt)。前月比では小幅な上昇にとどまったが、昨年同時期に低下していた裏が出たことで、前年比でのマイナス寄与が縮小している。なお、政府は7~9月にかけて電気・ガス代補助を復活させることを表明している。これにより8~10月分のCPIは押し下げられることになるだろう((最終版)電気・ガス代補助の物価への影響 ~CPIコアを▲0.5~▲0.6%Pt、前年比で▲0.2~▲0.3%Pt押し下げか~ | 新家 義貴 | 第一ライフ資産運用経済研究所)。

食料品(生鮮除く)は前年比+3.1%(前年比寄与度:+0.81%pt)と前月の+3.5%(同寄与度:+0.90%pt)から鈍化した。食料品(生鮮除く)の前月比は+0.3%と上昇が続いているが、昨年ほどの勢いはみられず、前年比でみれば鈍化傾向にある状況は変わらない。米類が前年比▲8.7%(5月▲4.9%)と2ヵ月連続で低下し、マイナス幅も拡大していることが目につく。また、チョコレートやコーヒー・ココアなど、これまで上昇が目立っていた品目も、前年の急上昇の裏が出たことでプラス幅を縮小させている。

エネルギー以外のコアコア部分については、前述のとおり日銀版コアが前年比+1.7%(5月:+1.8%)と上昇率がやや縮小した一方、米国型コアが前年比+1.2%(5月:+1.1%)とやや拡大した。日銀版コアの鈍化には食料品価格の上昇率縮小が影響している。米国型コアは伸びが拡大したものの、小数第2位までみると、5月の+1.13%から6月は+1.17%への変化にとどまる。コアコアはいずれも概ね前月並みで、これまでのトレンドから大きな変化はみられない。

品目別では、昨年の値上げの裏が出たことで通信料(携帯電話)のプラス寄与が縮小した一方、診療報酬改定に伴う公定価格の見直しにより診療代が上昇した。そのほかについては、イラン情勢悪化の影響で大きく上振れている品目が目立つ状況ではない。少なくとも6月段階では基調的な物価上昇圧力の加速はみられておらず、落ち着いた動きが続いていると判断される。

なお、6月の東京都区部CPIの上振れにつながった水道料については、全国では前年比▲2.1%(前年比寄与度:▲0.02%pt)となった(5月:前年比▲4.7%、寄与度▲0.05%pt)。水道基本料金無償化は東京都独自の政策であるため、全国でみると影響が薄まっている。

先行きは上昇率が再び高まる可能性大

先行きについては、物価上昇率が再び高まる可能性が高いとみている。これまでの資源価格上昇や調達難の影響は、企業物価段階における価格上昇としてすでに一部で顕在化している。今後、こうした既往のコスト上昇が徐々に川下へ波及し、食料品や日用品を中心に消費者物価の押し上げにつながる可能性がある。

特に注意が必要なのは食料品価格である。6月までは前年の高い伸びの裏などから鈍化が続いているが、包装資材費や物流費、人件費の上昇などを理由として、7月に値上げを実施した、あるいは8月以降の値上げを表明している食品メーカーは多い。加えて、足元の円安も輸入原材料の円建て価格を押し上げる要因となっている。夏場以降は食料品価格の鈍化が一服し、上昇率が再び高まる可能性があるだろう。

また、燃料価格の上昇は電気代、ガス代に遅れて波及する。政府による補助が8~10月のCPIを押し下げる一方、既往の燃料価格上昇が、秋から冬にかけてのエネルギー価格を大きく押し上げる可能性が高いことにも注意が必要である(電気代はいつ上がるのか ~電気代が秋から冬にかけて大きく上昇する理由。支援延長・拡充が論点に~ | 新家 義貴 | 第一ライフ資産運用経済研究所)。

さらに、足元では中東情勢が再び不安定化し、米国とイランの合意後にいったん下落した原油価格が再び上昇している。仮に原油・燃料価格の上昇が続けば、輸送費、包装資材、化学製品などを通じて企業のコスト負担を一段と高める可能性がある。また、一定の時間差を伴って電気代やガス代にも追加的な上昇圧力を及ぼすだろう。

こうした資源価格の再上昇に円安が重なれば、企業の輸入コストは一段と増加する。既往のコスト上昇分の転嫁が続くなかで、新たなコスト増が加わることで、企業が追加的な価格改定に踏み切る可能性も高まる。食料品や日用品を中心とした値上げの広がりには注意が必要である。

以上のとおり、既往の資源価格上昇や調達難の川下への波及、企業の価格転嫁姿勢が以前に比べて強まっていること、燃料価格上昇が電気・ガス代へ遅れて反映されること、足元で再び資源価格上昇が生じていることなどを踏まえると、先行きの物価はなお上方向を意識しておく必要がある。CPIコアは先行き上昇率を高める可能性が高いと予想している。

図表
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新家 義貴


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

新家 義貴

しんけ よしき

経済調査部・シニアエグゼクティブエコノミスト
担当: 日本経済短期予測

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