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MCSI、韓国株式市場の区分を引き続き「新興国」に据え置く

~為替市場へのアクセスの問題を指摘、「通貨防衛策」も影響している可能性~

西濵 徹

要旨
  • 韓国株式市場は、AI・半導体関連投資の拡大を背景に活況を呈し、KOSPIは一時最高値を更新した。尹前政権によるコーポレートガバナンス改革を李政権が引き継ぎ、少数株主保護や株主価値向上を目的とした商法改正などの進展も市場評価の改善につながった。

  • 一方、ウォン相場は弱含みで推移している。個人投資家による海外資産投資の拡大がウォン安圧力となり、政府は国内株式投資への税制優遇や国民年金による為替ヘッジ強化などの対策を実施した。しかし、中東情勢の緊迫化や原油高懸念を背景にウォン安基調は続いた。

  • 当局は、ウォン相場の変動を抑えるため、事実上の資本規制であるNDF取引の監視強化に踏み切った。MSCIは為替市場の自由度や流動性不足を理由に、韓国を引き続き「新興国市場」に分類し、先進国市場への格上げ候補にも含めなかった。韓国株は急上昇しているものの、通貨防衛のための規制強化や為替市場の未成熟さが、先進国市場入りへの課題となっている。

韓国金融市場においては、主要株価指数(KOSPI)が一時最高値を更新するなど活況を呈している(図1)。世界的なAI(人工知能)・半導体関連投資の旺盛な動きを追い風に、時価総額上位の半導体関連株の上昇が相場をけん引している。さらに、同国ではここ数年、株式市場改革が進められてきたことも株価上昇に影響している。尹錫悦(ユン・ソンニョル)前政権は、2023年から政府主導によるコーポレートガバナンス(企業統治)改革を実施した。2025年に発足した李在明(イ・ジェミョン)政権はこの取り組みを継承しつつ、韓国企業の相対的低評価(コリアディスカウント)解消に向けて商法改正など施策を強化した。具体的には、取締役に企業だけでなく、すべての株主に対する受託責任や説明責任を求めるとともに、財閥企業におけるオーナーなど大株主の優遇による不合理な合併やスピンオフを抑制し、少数株主の利益保護を目的とした制度整備が進められた。また、アクティビスト(物言う株主)や個人投資家が企業の意思決定に関与しやすい環境整備も進めた。

図表
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一方で、活況を呈する株価と対照的に、通貨ウォン相場は弱含みで推移してきた(図2)。若年層を中心とする個人投資家は外国株など海外資産の購入を拡大させており、ウォン安圧力を強めてきた。このため、政府は2025年末、個人投資家を対象に保有する海外株式を売却して国内株式に1年間投資した場合に譲渡所得税を時限的に免除するなど、国内株式への投資を優遇する対応を強化した。さらに、2025年末に国民年金公団が『新たな戦略的為替ヘッジ』を導入する方針を示し、ウォン安抑制への取り組みを強化した。具体的には、同公団が運用する外貨建て資産の15%を基本ヘッジ比率とし、これを「戦術的・戦略的」に引き上げることでドル売り・ウォン買いのポジションを強化してウォン高圧力を高めるとした。しかし、中東情勢の緊迫化以降は、原油高による経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)の悪化懸念を理由にウォン安の動きが強まった。

図表
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6月7日に金融トップ4人が会合を開催し、ウォン相場のボラティリティを増幅させているNDF(ノン・デリバラブル・フォワード)取引の監視を強化する方針を明らかにした(注1)。これを受けて、直後のウォン相場は一時的に持ち直した。しかし、世界13位の経済規模を有する韓国が事実上の資本規制に舵を切ったことは、同国が直面する厳しい状況を示唆している。こうしたなか、指数算出会社であるMSCIは同国の市場区分を「新興国」に据え置いた。その理由として、為替の自由度の乏しさを指摘した。具体的には、オフショア市場での受け渡しが不可能なうえ、為替取引時間中もオンショアでの流動性が著しく不足しており、指数連動型運用者などにとって為替取引の運用上の柔軟性が制約されているとした。MSCIは、市場アクセスの問題を巡る改革を評価する一方、効果の持続性を確認する必要があるとしている。なお、MSCIは2014年、為替取引規制など市場アクセスの問題を理由に、韓国を先進国市場への組み入れ候補のウォッチリスト(観察対象国)から除外しており、今回もその措置は据え置かれた。主要株式指数は活況を呈しているものの、当局が通貨防衛を目的に導入したNDF取引規制は「先進国入り」を阻む要因となった可能性があり、市場の成熟化に向けた課題は依然多いといえる。

以 上

西濵 徹


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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