米国 雇用なき高成長 (25年3QGDP、予測)

~前期比年率+4.4%に加速も労働市場は軟化~

桂畑 誠治

要旨
  • 7-9月期の実質GDP成長率(更新推計)は、前期比年率+4.4%(初期推計:同+4.3%)と市場予想中央値同+4.3%を上回った。設備投資は、同+3.2%(同+2.8%)と上方改定された一方、個人消費が、同+3.5%(同+3.5%)と変わらなかったほか、住宅投資は、同▲7.1%(同▲5.1%)と下方修正された。以上より、実質民間国内最終需要は、同+2.9%(同+3.0%)と下方改定された。また、実質国内最終需要は同+2.8%(同+2.9%)と下方修正となった。このような中、純輸出のGDP寄与が、同+1.62%(同+1.59%)、在庫投資のGDP寄与が、同▲0.12%(同▲0.22%)と上方改定されたため、実質GDP成長率は同+4.4%(同+4.3%)と上方改定となった。
  • 7-9月期の実質GDP成長率(更新推計)は、前期比年率+4.4%(4-6月期同+3.8%)と加速し、高い成長となった。7-9月期の住宅投資は、金利の高止まりや建設業者のマインドの悪化等によって同▲7.1%(同▲5.1%)と3四半期連続で減少した。また、設備投資は、不確実性の高まりを背景に、同+3.2%(同+7.3%)と減速した。建設投資が同▲5.0%(同▲7.5%)と減少幅を縮小したものの、輸送機器投資が同▲4.2%(同+25.3%)と減少に転じたほか、知的財産投資が同+5.6%(同+15.0%)、増産投資が同+2.1%(同+6.5%)、情報化投資が同+5.9%(同+19.7%)と減速した。 一方、個人消費は、所得の増加が続くもと、値上がりを警戒した駆け込みや、企業の販促、資産の増加、感染症による医療支出の拡大等を受け、同+3.5%(同+2.5%)と加速した。自動車などの減少によって耐久財が鈍化したが、医療、余暇などのサービスが加速したほか、食品、衣服などの非耐久財も加速した。以上より、実質民間国内最終需要は、同+2.9%(同+2.9%)と同率の伸びとなった。さらに、実質国内最終需要は、政府支出が国防支出の加速等によって、同+2.2%(同▲0.1%)と増加に転じたため、同+2.8%(同+2.4%)と加速した。 このような中、純輸出のGDP寄与が、駆け込み輸入の反動減の弱まりを背景に、同+1.62%(同+4.83%)とプラス幅を縮小した一方、在庫投資のGDP寄与が、在庫の減少ペースの鈍化で同▲0.12%(同▲3.44%)とマイナス幅を縮小したため、実質GDP成長率は同+4.4%(同+3.8%)と加速した。
  • 7-9月期は、実質GDP成長率が前期比年率+4.4%(4-6月期同+3.8%)と加速したものの、同期の失業率が4.3%(同4.2%)に上昇、民間部門雇用者数が前月差+5.7万人(同+5.8万人)と小幅の増加にとどまるなど、雇用なき高成長となった。AI投資の拡大等によって生産性が向上し、経済成長を押し上げた。
  • 25年10-12月期の実質GDP成長率は、輸入の減少によって押し上げられるものの、これまでの実質金利の上昇や、価格上昇が個人消費や住宅投資などの抑制要因になったほか、政府機関の一部閉鎖の影響によって、前期比年率+2%台半ばに減速したと予想される。同期の失業率は4.5%、民間雇用者数は前月差+2.9万人と雇用なき経済成長が持続したと見込まれる。
  • 25年の実質GDP成長率は、前年比+2.2%と24年の+2.8%から鈍化したものの、潜在成長率(+1.8%)を上回ったとみられる。
  • 26年には、政府機関の再開による押上げや減税効果等によって、経済成長は加速しよう。個人消費は、価格上昇等の影響を受けるものの、株や不動産などの資産残高の増加や減税などを背景に堅調さを維持すると見込まれる。また、設備投資は、減税効果のほか、IT需要の拡大、通商合意による不確実性の和らぎや直接投資の増加等によって、伸び率が高まろう。さらに、通商合意による農作物やエネルギーの輸出拡大も見込まれる。以上により、26年の米経済は潜在成長率(+1.8%)を上回る成長が続く公算が大きい。労働市場では、失業率が4.5%を下回る水準で安定を続けるものの、非農業部門雇用者数は前月差+8万人程度にとどまり、雇用なき経済拡大が続くと見込まれる。 インフレは、住宅関連での低下が続くものの、関税賦課の影響が徐々に顕在化するなかで、緩やかに上昇する可能性が高い。このような環境のもと、FRBは26年に利下げに慎重な姿勢を続けると予想される。
こちらのレポートについては、PDF形式によるご提供となっております。
右上にある「PDF閲覧のアイコン」をクリックしてご覧下さい。

本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

執筆者の最近のレポート

関連テーマのレポート

関連テーマ