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2026.01.29
アジア経済
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フィリピン25年成長率は+4.4%どまり、3年連続で目標未達
~政府は成長率加速を見込むもハードル高い、中銀の利下げ観測がペソ相場の足かせとなる展開も~
西濵 徹
- 要旨
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フィリピン経済は構造面で外需依存度が低く、対米輸出比率も名目GDP比では小さいため、トランプ関税のマクロ経済への影響は限定的とみられる。さらに、米国との協議を経て輸出競争力への悪影響も回避され、輸出の駆け込み需要がみられる。一方、公共事業を巡る汚職問題を理由に公共投資は停滞し、台風による洪水被害も景気の下押し要因となっている。マルコス政権は早くも死に体化する懸念が高まっている。
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2025年10-12月の実質GDP成長率は前期比年率+2.47%とわずかに加速したが、足元の景気は勢いを欠き、頭打ちの様相を強めている。インフレ率は中銀目標を下回り安定しており、中銀は利下げで景気を下支えしている。移民送金の増加にペソ安も加わり個人消費を支える一方、公共投資と企業の設備投資の低迷が景気の足かせとなっている。ただし、景気の実態は数字以上に厳しいものとなっている可能性がある。
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2025年通年の経済成長率は+4.4%に鈍化しており、政府目標を大幅に下回った。マルコス政権は3年連続で成長目標を達成できず、フィリピン経済は深刻な状況にある。公共投資再開への期待はあるが、先行きは輸出駆け込みの反動や海外送金の伸び鈍化など、景気の足を引っ張る材料は山積している。一方、金融市場では中銀の追加利下げ観測が強まることで、ペソ相場は調整圧力を受けやすい状況が続くであろう。
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このところの金融市場においては、フィリピン経済を巡る不透明感が警戒されている。同国経済は1億人を上回る人口規模を擁するなか、経済構造面ではASEAN(東南アジア諸国連合)主要国のなかでも外需依存度は低い。なお、フィリピンの輸出全体に占める対米比率は15%強と比較的高いものの、名目GDP比では2.7%程度にとどまると試算される。したがって、トランプ関税によるマクロ経済への影響は限定的と見込まれる。そして、協議を経て米国は同国に対する相互関税を19%と、他のASEAN主要国と同水準となるなど、税率の違いが輸出競争力に与える事態は回避されている。さらに、2025年末にかけて全世界的にトランプ関税の本格発動を前にした『駆け込み』の動きが活発化するなか、フィリピンにおいても輸出拡大している。一方、足元では、内需を巡る懸念が景気の足かせとなっている。フィリピン政界においては、公共事業を巡る汚職疑惑がマルコス大統領の身内や側近に及んでいる。これを受けて、マルコス大統領は徹底した調査を指示する一方、その間は公共投資の進捗が停滞しており、景気の足かせとなる懸念が高まっている。そのうえ、2025年11月には台風25号(カルマエギ)と26号(フォンウォン)が相次いで上陸して大規模な洪水被害が発生するなど、経済活動に深刻な悪影響を与えた。公共事業を巡る汚職問題は洪水対策事業を中心に発生しており、この問題は事態を一段と深刻化させた可能性がある。こうした事情を勘案すれば、マルコス政権を巡っては早くも『死に体(レームダック)』の様相を強める懸念が高まっている。

こうしたなか、2025年10-12月の実質GDP成長率は前期比年率+2.47%と前期(同+1.16%)から加速するも、コロナ禍以降では四半期ベースで3番目に低い伸びであるなど低調に推移している。中期的な基調を示す前年同期比ベースの成長率は+3.0%と前期(同+3.9%(改定値))から鈍化して2021年1-3月以来の低い伸びにとどまるなど、足元の景気は頭打ちの様相を強めている。2025年以降のインフレ率は中銀目標(2~4%)の下限を下回るなど落ち着いた推移をみせるなか、中銀は2024年8月から断続的な利下げを実施しており、2025年12月までの累計の利下げ幅は200bpと金融緩和を進めている。さらに、足元の米国の雇用環境には陰りが出ているものの、中東やアジアなどからの移民送金は堅調に推移しているうえ、金融市場における通貨ペソ安も重なり、ペソ建てに換算した移民送金は押し上げられている。こうした状況も追い風に、足元の個人消費は勢いを強めるなど景気を下支えしている。また、前述したようにトランプ関税の本格発動を前にした駆け込みの動きは輸出を押し上げている。一方、公共投資の進捗停止が足かせとなるとともに、トランプ関税の本格発動を受けて企業の設備投資意欲も後退しており、幅広い分野で固定資本投資は下振れしており、景気の足を引っ張っている。そして、固定資本投資の低迷を受けて輸入は大きく下押しされており、この動きに伴う成長率寄与度は前期比年率ベースで+5.19ptと試算される。したがって、足元の景気の実態は数字以上に厳しい状況にあると捉えられる。

この結果、2025年通年の経済成長率は+4.4%にとどまり、前年(+5.7%)から鈍化して5年ぶりの低い伸びとなった。2020年(▲9.5%)はコロナ禍という特殊事情が影響したことに鑑みれば、2011年以来となる低い伸びにとどまるなど、足元のフィリピン経済は深刻な状況に陥っている。政府は2025年の経済成長率目標を5.5~6.5%としていたものの、この下限を大きく下回るとともに、マルコス政権は2022年に発足して以降、3年連続で成長率目標は達成できないなど極めて厳しい状況に直面している。なお、政府は2026年の経済成長率目標を5~6%とするとともに、2027年には一段と加速するとの見通しを示している。政府はその理由として、足元の景気の足を引っ張る公共投資の進捗停滞の動きが、一連の調査を経て再開に転じることを挙げている。一方、先行きはトランプ関税の本格発動を前にした輸出駆け込みの動きに反動が出ることが見込まれるなど、これまで景気を下支えしてきた外需を取り巻く環境は厳しさを増すことが予想される。さらに、GDPの1割に相当する海外送金についても、米国の雇用環境が厳しさを増すとともに、中東に関しては国際原油価格の低迷が長期化していることも重なり、先行きは頭打ちの様相を強める可能性はくすぶる。よって、前述のように足元のインフレ率が落ち着いた推移をみせるなか、中銀は断続的な利下げ実施を通じて景気下支えに注力する姿勢を強めてきたなか、金融市場においては中銀が一段の利下げを迫られるとの見方が広がりをみせている。こうした状況を反映して、通貨ペソの対ドル相場は調整の動きを強めるとともに、中銀によるフォワードガイダンスの欠如もそうした流れに拍車をかける一因になってきたとみられる(注1 )。足元の金融市場においては、トランプ米政権の政策運営を巡る不透明感を嫌気した米ドル安の動きがペソ相場を下支えしている様子がうかがえるものの、先行きについては中銀による追加利下げが意識されるなかで上値が抑えられるとともに、資金流出懸念が残る展開が続くと見込まれる。

注1 1月8日付レポート「フィリピンペソ相場が弱含む展開をみせる背景とは」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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西濵 徹

