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2026.01.22
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韓国・25年成長率は+1.0%止まり、26年も低調な推移が続くか
~ウォン安、不動産の高騰、トランプ関税の本格化など、国内外に不透明要因山積の状況は続く~
西濵 徹
- 要旨
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2025年の韓国経済は、尹錫悦前大統領の弾劾を機にした政治混乱で幕開けしたが、李在明政権の発足により政治的安定を取り戻した。一方、経済面では厳しい局面が続いた。経済構造面で対米輸出への依存度が高いなかでトランプ米政権の関税政策に翻弄され、一時は相互関税の大幅引き上げが懸念された。しかし、最終的に税率引き下げで合意し、直接的な影響は一定程度緩和された。関税本格発動前の「駆け込み」需要もあり、2025年末にかけて輸出は拡大するなど外需が景気を下支えする動きが確認された
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しかし、2025年10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率▲1.10%とマイナスに転じ、前年同期比でも伸びが鈍化するなど、景気の頭打ちが確認された。輸出の先行き不透明感から企業の設備投資は抑制され、不動産投機抑制策の影響もあって幅広く固定資本投資が低迷した。雇用回復の遅れや、政策支援の効果剥落による個人消費の弱さも景気を下押ししている。また、在庫の積み上がりを勘案すれば、景気の実態は統計以上に厳しいとみられる。その結果、2025年の経済成長率は前年比+1.0%と大きく減速した。
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金融政策面では、中銀は今月の定例会合で政策金利を据え置いたうえで、利下げ局面の終了を示唆した。輸出や貿易収支の改善にもかかわらず、個人投資家の海外資産投資拡大などを背景にウォン安が続き、物価への影響が懸念される。政府・中銀とも為替安定に努める姿勢を示しているが、円安との連動性や不動産価格の上昇もあり、追加利下げは困難な状況にある。トランプ関税の影響が今後本格化する可能性も踏まえると、2026年の韓国経済も低調な推移が続く公算が大きいと見込まれる。
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2025年の韓国経済を巡っては、前年末に尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領が非常戒厳を発令し、直後に弾劾訴追を受けることが決定するなど、政治的混乱のなかで幕開けを迎えた。その後、尹氏に対する弾劾が成立するとともに、大統領選を経て李在明(イ・ジェミョン)氏が当選して3年ぶりの革新政権が発足した。その結果、大統領と議会とのねじれ状態は解消するなど、政治的には安定が図られている。一方、経済面ではトランプ米政権による関税政策に翻弄された。韓国経済にとって、対米輸出は総輸出の2割、名目GDP比で7%に及ぶなど関税政策の影響は無視できない状況にある。こうしたなか、米国は当初、韓国に対する相互関税を25%にすると通告したが、両国による協議を経て15%に引き下げることで合意した。2025年10月末のトランプ氏の韓国訪問に際して、両国は関税や安全保障問題で合意した。しかし、詳細を巡る両国の認識に隔たりが顕在化するなど、詰めの協議が難航した模様である。最終的に、米国は2025年12月初めに合意を履行するとともに、11月に遡求適用する方針を明らかにするなど、トランプ関税に伴う直接的な影響は軽減されている。さらに、世界的にはトランプ関税の本格発動を前に対米輸出に『駆け込み』の動きが出て貿易が活発化する動きがみられるなか、韓国においても2025年末にかけて輸出が拡大する動きが確認されるなど、外需による景気下支えが示唆されている。

前述したように、足元の韓国経済は外需が景気の下支え役となることが期待されたものの、2025年10-12月の実質GDP成長率(速報値)は前期比年率▲1.10%と前期(同+5.44%)から3四半期ぶりのマイナス成長に転じている。中期的な基調を示す前年同期比ベースの成長率も+1.5%と前期(同+1.8%)から鈍化しており、足元の景気にはブレーキが掛かって頭打ちしていると捉えられる。GDP統計のうえでは、財、サービス問わず輸出に下押し圧力が掛かるとともに、トランプ関税の本格発動を受けた先行きの輸出低迷を警戒して企業は設備投資を手控えるなか、不動産価格の上昇や韓国政府による投機抑制策の効果も重なり、幅広く固定資本投資に下押し圧力が掛かったことも景気の足を引っ張った。そして、若年層を中心とする雇用回復が遅れるなか、足元のインフレ率は中銀目標近傍で推移するなど一見落ち着いた動きをみせている。しかし、足元では食料品など生活必需品のほか、国際金融市場におけるウォン安に伴う輸入物価の上昇がインフレ圧力を増幅させる動きがみられる。また、前期には家計消費が政府による現金給付など政策支援により押し上げられたため、その効果剥落による反動も重なり力強さを欠く動きをみせている。したがって、足元の景気は内・外需ともに勢いの乏しい内容となっている。さらに、当期においては在庫投資の成長率寄与度が前期比年率ベースで+1.18ptとプラスになったと試算されるなど、在庫が積み上がる様相を呈している。その意味では、景気の実態は数字以上に厳しいと捉えられる。結果、2025年通年の経済成長率は+1.0%と前年(+2.0%)から大きく鈍化している。


中銀は今月開催した定例会合において、政策金利を5会合連続で2.50%に据え置いたうえで、先行きの政策運営を巡って、2024年10月以降における利下げ局面の終了を示唆する考えをみせた(注1)。中銀の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は、その理由として金融市場におけるウォン安の進行が物価に影響を与えることを懸念している旨を明らかにした。なお、足元の輸出は堅調な動きをみせているうえ、これを追い風に貿易黒字は拡大するなど経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)の改善に資する動きがみられる。こうした状況にもかかわらず、金融市場においてはウォン安基調が続くなど資金流出圧力に直面しており、その背景に個人投資家による海外資産購入の動きが活発化していることが挙げられている。2025年末には国民年金公団が『新たな戦略的為替ヘッジ』を導入する方針を示したことで、ウォン相場は一時的に下げ止まる動きがみられた。その後もベッセント米財務長官が、足元のウォン安について韓国のファンダメンタルズと一致しないと懸念を表明したとされるものの、ウォン安基調が大きく変わるには至っていない。こうしたなか、李在明大統領は21日に行った記者会見において「関係当局によれば、今後1~2ヶ月でウォンの対ドル相場は1400前後になると予想されている」としたうえで、「為替相場を安定化させるための持続可能な政策手段を見出す努力を続ける」と述べた。ただし、足元のウォン安を巡っては、金融市場における日本円の弱さとも幾分相関があるため、国内政策だけでは相場を反転させることは困難とした。その上で、「日本の基準にそのまま合わせればドル/ウォン=1600程度になると見込まれ、日本円のドル連動と比べれば相対的によく持ちこたえている」との見方を示した。とはいえ、足元のウォン安には個人投資家による海外資産購入という国民の不信感が影響していることに鑑みれば、こうした流れを大きく転換させるのは容易ではない。その意味では、首都ソウルを中心とする不動産価格の上昇が続いていることも重なり、中銀にとって追加利下げのハードルが高い展開が見込まれるとともに、外需にトランプ関税の影響が顕在化するなか、2026年の韓国経済は勢いの乏しい動きが続く可能性は高い。


注1 1月15日付レポート「韓国中銀、ウォン安圧力の根強さを受けて緩和局面の終了を示唆」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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