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2026.01.05
アジア経済
米中関係
アジア経済見通し
中国経済
2026年の中国経済も「供給優位」の展開が続く可能性は高い
~表面的なマインド改善も、需要サイドの弱さが続くなど実態との乖離は新たなリスクを招く~
西濵 徹
- 要旨
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中国経済は供給サイド主導で拡大が続く一方、需要サイド、とりわけ内需は弱含んでいる。昨年末にかけて開催された中央経済工作会議や全国財政工作会議では、内需拡大を最重要課題とし、積極的な財政政策と緩和的な金融政策の継続が確認された。過当競争(内巻)への警戒が強まるなか、外需環境には改善の兆しがみられるものの、内需の不透明感が企業活動の先行きに影を落とす展開が続いている。
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国家統計局が公表した12月製造業PMIは9か月ぶりに50を上回り、生産や新規受注を中心に改善がみられた。一方、雇用は低下しており、生産拡大が雇用増加に繋がらない状況が続いている。非製造業では建設業が公共投資を背景に回復する一方、サービス業は低迷するなど内需の弱さが引き続き顕著である。
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民間PMIも製造業マインドの改善が確認されるが、輸出受注の弱さなど外需の不透明感は残る。生産は拡大しているものの、雇用は伸び悩み、製造業全体で雇用創出力の低下がうかがえる。サービス業PMIは高水準ながら頭打ちしており、需要不安が企業マインドの重荷となるなど指標と実態の乖離が拡大している。
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中国の昨年の経済成長率は目標を上回った可能性が高いが、内需の弱さとデフレ圧力は依然根強い。今年の全人代では第15次5か年計画が採択される予定だが、構造問題への対応は不透明である。需要不足が続けば「デフレの輸出」を通じて世界経済のリスクとなる可能性があるとともに、米中関係や地政学リスクへの影響にも注意が必要な状況が続くと見込まれる。
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足元の中国経済を巡っては、供給サイドをけん引役にした拡大が続く一方、需要サイドは勢いを欠く対照的な動きをみせている。先月末にかけて開催された一連の重要会議においては、内需喚起を図る方向性がたびたび示されるなど、その重要性があらためて確認されている。なかでも今年のマクロ経済政策の運営方針を討議する中央経済工作会議では、最も重要な課題として「内需拡大を重視し、強大な国内市場を構築する」と方針を定めた。そして、その実現に向けて「より積極的な財政政策と適度に緩和的な金融政策」を維持する方針を決定している(注1)。その後も、先月27~28日にかけて開催された全国財政工作会議においても、7つの重点項目のうち最上位に「①より積極的な財政政策を通じた『一連の政策手段(組合拳)』の実施」を掲げるなど、財政政策の積極化を図る方針を示している。なお、これ以外にも、②高質量発展(質の高い発展)の実現に向けた基礎研究投資の大幅な拡充、都市部における技術転換と中小企業におけるデジタル化の推進、③民生保障の強化に向けた雇用安定化、就学前教育の無償化や奨学金・補助金の拡充、育児補助の確立、④隠れ債務や資金調達を巡る対応強化による重点分野でのリスク緩和、⑤税財政改革による政府調達の改善、⑥AIIB(アジアインフラ投資銀行)やSCOE(上海協力機構開発銀行)を通じた国際金融交流・協力の拡大、⑦党と財政運営の統一的推進、といった内容が示されている。足元の中国国内においては、過剰供給能力を背景とする過当競争(内巻(ネイジュアン))が社会問題化しており、この問題に対する認識を前年に比べて強めている。中国当局も『反内巻』への取り組みを強化しているものの、企業部門は依然として原材料価格の上昇を製品価格に転嫁できない状況が続いている。さらに、昨年10月末の米中首脳会談を経て米中摩擦の懸念は後退しており、外需を取り巻く環境に改善の兆しがみられる。こうした状況は、外需への依存を強める誘因となる一方、内需に対する不透明感が払しょくできないなか、先行きの企業部門の活動に影響を与えることが見込まれる。
このように、外需に改善の兆しがみられる一方で内需に不透明感がくすぶる状況ながら、国家統計局が公表した昨年12月の製造業PMI(購買担当者景況感)は50.1と前月(49.2)から+0.8pt上昇して9ヶ月ぶりに好不況の分かれ目となる50を上回った。「新規受注(50.8)」は前月比+1.6pt上昇して6ヶ月ぶりに50を上回るとともに、「輸出向け新規受注(49.0)」も同+1.4pt上昇して9ヶ月ぶりの水準となったほか、「生産(51.7)」も同+1.7pt上昇して3ヶ月ぶりの水準となるなど、供給サイドを中心とする拡大が続いている。ただし、生産拡大にもかかわらず「雇用(48.2)」は前月比▲0.2pt低下しており、製造業において雇用が増えにくい状況が一段と強まっている。なお、製造業の企業マインドが改善するなか、12月の非製造業PMIも50.2と前月(49.5)から+0.7pt上昇して2ヶ月ぶりに50を上回る水準を回復している。ただし、業種別では建設業(52.8)が前月比+3.2pt上昇して6ヶ月ぶりの水準となるなど公共投資の進捗を反映する一方、サービス業(49.7)は同+0.2pt上昇するも2ヶ月連続で50を下回るなど勢いを欠く対照的な結果となった。「新規受注(47.3)」は前月比+1.6pt、「輸出向け新規受注(47.5)」は同▲0.4pt低下するもともに50を大きく下回るなど、内・外需ともに受注動向は芳しくない状況が続いている。さらに、建設業におけるマインド改善を反映して「雇用(46.1)」は前月比+0.8pt上昇するも、依然として50を大きく下回るなど雇用不安の根強さを示唆する動きもみられる。

一方、S&Pグローバルが公表した昨年12月のRatingDog製造業PMIも50.1と前月(49.9)から+0.2pt上昇して2ヶ月ぶりに好不況の分かれ目となる50を上回るなど、製造業においてマインドが改善する動きが確認されている。ただし、「新規受注(50.3)」は前月比+0.2pt上昇する一方、「輸出向け新規受注(49.7)」は同▲2.2pt低下して2ヶ月ぶりに50を下回る水準となるなど、外需を中心に不透明感がくすぶる状況が続いている。こうした状況にもかかわらず「生産(50.5)」は前月比+0.5pt上昇しており、幅広く製造業においては供給サイドがけん引役となる展開が続いている。さらに、生産拡大にもかかわらず「雇用(49.6)」は前月比+0.1ptとわずかな上昇に留まるとともに、引き続き50を下回るなど調整圧力がくすぶる展開が続いており、企業規模にかかわらず製造業における雇用創出能力が低下している。なお、昨年12月のRatingDogサービス業PMIは52.0と引き続き高水準で推移しているものの、前月(52.1)から▲0.1pt低下して6ヶ月ぶりの水準となるなど、頭打ちの様相を強めている。「新規受注(51.8)」は前月比▲1.1pt低下して6ヶ月ぶりの水準となるなど頭打ちするとともに、「輸出向け新規受注(49.6)」も同▲2.4pt低下して2ヶ月ぶりに50を下回る水準となるなど、内・外需ともに不透明感が強まっている。今年は春節(旧正月)の時期が昨年に比べて2週間以上後ろ倒ししているため、その影響を考慮する必要はあるものの、需要の不透明感がマインドの足かせとなる展開となっている。よって、表面的な指標の動きと実態との乖離がこれまで以上に広がっているとみられる。

昨年の全人代(第14期全国人民代表大会第3回全体会議)において、中国当局は昨年の経済成長率目標を5%前後としたが、9月までの経済成長率は+5.2%とこれを上回っている。さらに、足元の企業マインドも供給サイドをけん引役に底堅い動きが続いていることを示唆しており、通年の成長率は目標をクリアしている可能性は高い。ただし、需要サイドについては、特に内需に弱さがうかがえるなかで根強いデフレ圧力がくすぶる展開が続いており、先行きも見通しが立ちにくい状況にある。中国当局は、今年の全人代(第14期全国人民代表大会第4回全体会議)を3月5日から開催するとともに、今年から始まる第15次5ヵ年計画(十五五)が正式に採択される。しかし、十五五の基本方針が討議された昨年10月の4中全会(中国共産党第20期中央委員会第4回全体会議)は、あらゆる面で党中央を中心とする統治の強化といった姿勢があらためて強調される一方、中国経済が抱える構造問題の行方に不透明さが残る内容であった(注2)。よって、今年の全人代においても比較的高い成長率目標を掲げる可能性があるものの、需要サイドを中心とする実態との乖離が一段と広がれば、そのことが中国による『デフレの輸出』をはじめとする世界経済のリスク要因となることにこれまで以上に注意が必要になる。米国によるベネズエラへの軍事攻撃など米国の動きにも不確実性が高いなか、こうした動きが米中関係の行方にも影響を与えるほか、世界的な地政学リスクを左右する可能性にも留意する必要性が高まっている。
注1 2025年12月15日付レポート「中国・中央経済工作会議、内需拡大の重要性認識も、具体策は不明」
注2 2025年10月24日付レポート「中共4中全会閉幕、中長期的な国力向上の姿勢が鮮明に」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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