株高不況 株高不況

日銀短観から透けてみえるインフレの二面性

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月54,000円程度で推移するだろう
  • USD/JPYは先行き12ヶ月160円程度で推移するだろう
  • 日銀は利上げを続け、2026年後半に政策金利は1.0%に到達しよう
  • FEDはFF金利を26年前半までに3.5%へと引き下げ、その後は様子見に転じるだろう
目次

金融市場

  • 前営業日の米国市場は、S&P500が▲0.2%、NASDAQが▲0.6%で引け。VIXは16.5へと上昇。

  • 米金利は小動き。予想インフレ率(10年BEI)は2.253%(▲2.3bp)へと低下。

実質金利は1.896%(+1.1bp)へと上昇。長短金利差(2年10年)は+66.7bpへとプラス幅拡大。

  • 為替(G10通貨)はUSDが中位程度。USD/JPYは155前半で推移。コモディティはWTI原油が56.8㌦(▲0.6㌦)へ低下。銅は11655.5㌦(+140.5㌦)へ上昇。金は4306.7㌦(+6.6㌦)へ上昇。

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経済指標

  • 12月米NAHB住宅市場指数は39へと1pt上昇。水準は低いが、最悪期は脱した可能性がある。

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  • 12月NY連銀製造業景況指数は▲3.9と11月の+18.7から急低下。過去数年、この指標は極端に振れが大きくなっており、単月の変動を大きく取り扱う必要はないが、生産活動の回復が遅々としている可能性は高い。

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注目点

  • 昨日発表された日銀短観(12月調査)は根強いインフレ圧力の下、企業景況感が堅調であることを示した。象徴的だったのは非製造業の強さ。大企業非製造業の業況判断DIは+34と1990年代前半と同程度の水準を維持した。筆者は株式市場を読む上でBtoC関連業種の強さに注目。具体的には小売(+18)、宿泊・飲食サービス(+25)、対個人サービス(+30)であり、これらの単純平均値は過去との比較で高水準にある。

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  • これら業種は、対面型が多く労働集約的であることから、最低賃金の上昇もあって人件費増加が重荷になっている企業は多いと推察される。また外食では、米価の高止まりも下押し圧力となっている可能性があるだろう。

  • 消費統計側からみても、日銀算出の消費活動指数は実質値(数量)が微増に留まっている。名目賃金ははっきりと上昇しているものの、物価上昇がきつく、実質賃金がマイナス傾向で推移する下、消費者が購買量を増やせずにいる様子が浮き彫りとなる。

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  • それでも企業景況感が良好なのは、値上げが強く関係していよう。販売数量は伸びなくても、価格転嫁によって売上計画を達成できた企業は多かったと推察される。日銀短観は前月からの変化を問うPMI等と異なり、比較時点を問わず、単刀直入に現時点における景況感を尋ねる形式であるため、回答にあたって自社の収益計画を基準にしている企業は多いと考えられる。DIの上昇は、会社計画を超過達成した企業が多かった可能性を示唆する。

  • 2025年の株式市場は「AI一色」の様相を呈していたが、こうした内需の強さに支えられ、「その他」が上昇したことも大きかった。事実、2025年は日経内需50株指数が外需50株指数を凌駕した。これは日銀短観の消費関連業種DIが堅調に推移し、それに沿って日経内需50株指数が上昇したことと整合的であろう。建設株や地銀株の上昇など、個人消費とは直接関係しない銘柄群の上昇が寄与していたことを踏まえる必要があるものの、全体としてみれば名目個人消費の拡大が効いていた可能性が高い。

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  • インフレは(実質)個人消費を下押しする一方、株価に対しては名目値の拡大を通じて上昇要因になるという二面性を有することを再認識させる。

藤代 宏一


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