- HOME
- レポート一覧
- 経済分析レポート(Trends)
- 2026年春闘のスケジュールと金融政策展望
- Economic Trends
-
2025.08.26
日本経済
金融政策・日銀
所得・消費
雇用
2026年春闘のスケジュールと金融政策展望
~2026年春闘から考える利上げタイミング~
新家 義貴
- 要旨
-
-
2026年春闘で高い賃上げが維持できるかどうかは、金融政策の行方を左右する重要なポイントである。2026年春闘に向けての動きは2025年10月頃から始まり、3月中旬の集中回答日に向けて進む。労働組合の方針や企業側の経営姿勢は、25年秋から冬にかけての連合の基本構想や経団連の経労委報告、政労使会議といったイベントを通じて徐々に明らかになっていく。
-
産業別組合の要求案、企業の早期賃上げ表明、民間シンクタンクの賃上げ率予測などの動きも春闘の方向性を示す重要な材料であるほか、日銀短観や支店長会議なども2026年春闘の行方を占う上で注目される
-
2025年9月会合や10月会合の段階では2026年春闘に関する情報は限定的。賃金上昇の持続性の観点から考えると、日銀の利上げは2025年12月がメインシナリオ。もっとも、物価の上振れやトランプ関税による不透明感の和らぎを重視し、賃金面についてはある程度見切り発車的に10月会合で利上げを実施する可能性も否定できない。この場合、2026年3月~4月にさらなる利上げが行われる可能性が高まるため注意が必要。
-
日本経済の行方を占う上で、賃金の動向は日銀の利上げ判断と密接に結びつく重要なカギだ。植田総裁も7月31日の会見で、賃金と物価が相互にプラスに影響し合うというメカニズムが働き出して、途切れずに続いていくかどうかは一つの大きな判断材料になると述べている。2026年春闘で高い賃上げが持続できるかどうかは、その成否を見極める重要なポイントである。
一方、トランプ政権下で課された対米関税は製造業を中心に大きな影響を及ぼしており、主要企業の収益が数千億円規模で押し下げられる可能性がある。こうした企業業績の不透明さのなか、企業が今後も積極的な賃上げ姿勢を維持できるかに注視が必要だ。
春闘の集中回答日は2026年の3月中旬だが、実際の交渉に向けての動きはそれよりも5ヵ月ほど早い2025年10月頃からスタートする。本稿では、春闘の動向を見る上で押さえておくべきイベントと注目点を時系列で整理・解説し、賃金動向が日銀の金融政策に与える影響を解説する。
連合「春季生活闘争基本構想」(10月中旬)
春闘関連の最初の注目イベントが、連合が毎年10月中旬に公表する「春季生活闘争基本構想」だ(25年春闘では24年10月18日公表)。翌年の春闘に向けての労働組合側の全体的な基本理念や方針、重点課題を示したものであり、経済状況や社会課題を踏まえ、賃上げ目標や格差是正、適正取引の促進などを掲げる。なかでも注目されるのが賃上げの目安であり、昨年は大手を含む全体で定期昇給分を含めて5%以上、中小企業の労働組合では大手との格差是正を図るため6%以上を求める方針を示していた。前年の基本構想と比較することで、組合側が翌年の春闘に向けてより強気か慎重かを判断することができ、これが春闘全体のトーンを掴む指標として重視されている。
なお、この「春季生活闘争基本構想」をたたき台とした「春季生活闘争方針」が毎年11月末~12月上旬に公表されるが、賃上げの目安については原則として大きな変更はない。
経団連「経労委報告」の原案判明(11月上~中旬)
経労委報告(経営労働政策特別委員会報告)は、経団連が毎年冬に公表する、春闘に対する経営側の基本スタンスを示す報告書である。経営側の雇用政策に関する方向性や賃上げの考え方等、春闘交渉に向けた経営側の指針となる。この経労委報告は毎年1月下旬に公表されるが、その原案については前年の11月上~中旬頃に判明し、報道されることが多い(24年は11月5日に報道)。経営側が賃上げに対して前向きなスタンスなのか、それとも慎重な姿勢をとっているのかがここで分かる。
なお、26年春闘に向けての重要度で言えば、前述の春季生活闘争基本構想よりも、この経労委報告原案の方が経営側の本音や賃上げ姿勢を掴むうえでより注目されている。前回、前々回の春闘では、連合が示した賃上げ要求目安よりも実際に妥結した賃上げ率集計の方が高いという異例の展開となっていた。人手不足による人材確保の必要性や歴史的な物価高への配慮から、経営側主導で賃上げが実施された格好である。そのため、経営側がどういったスタンスをとるかが2026年春闘の結果を占う上で非常に重要だ。人手不足や物価高への対応から前年に匹敵するレベルの賃上げ意欲を示すのか、それともトランプ関税による景気下押しや先行き不透明感から賃上げに慎重なトーンを出すのかが注目される。トランプ関税による影響は各社マチマチなことが予想されることから、賃上げに前向きな姿勢を示しつつも「個々の会社の状況に応じて適切な賃上げを」といった内容になることも考えられるだろう。
政労使会議(11月頃?)
政労使会議は、政府、労働側(連合など)、経営側(経団連など)の代表によって、春闘の賃上げなど労働条件改善に向けた意見交換を行う場である。ここで政府から労使に賃上げに向けての要請がなされることが多い。必ずしも話題は春闘に限るわけではないが、賃上げの社会的な機運を高めるために、春闘の交渉が本格化する前に設定されるケースが多い。政府の賃上げ実現への意欲が確認できるほか、経営側や労働側が、それに対してどう回答するかといった点も注目される。
政労使会議は、当時の安倍政権により2013年~2015年にかけて開催されていた。政府から賃上げに向けての強い要請が出されるなど「官製春闘」とも呼ばれた。2016年以降は全国レベルでの政労使会議は行われていなかったが、2023年に当時の岸田政権で8年ぶりに再開、石破政権でも24年11月に実施された。
民間シンクタンクの春闘賃上げ率予測(11月~12月)
毎年11月~12月にかけて、民間シンクタンク・調査機関から翌年の春闘賃上げ率の予測が出されることが多い(筆者は11月に作成している)。予測をレポートとして作成することもあれば、経済見通しレポートのなかで言及されることもある。
前回、前々回(特に前々回)は予想を大きく外すなど、必ずしも精度が高いとは言えないのが大変申し訳ないところだが、春闘賃上げ率の見通しについて、とりあえずの相場観はここで形成される。
産業別労働組合組織の賃上げ要求案判明(12月頃)
12月に入ると、一部の主要産業別労働組合組織における春闘賃上げ要求方針案の内容が判明し始める。正式な要求方針は1月~2月にかけて発表されるが、正式決定前に報道等で概要が先行して判明するのがこの時期である。前回の春闘では、12月上旬頃からUAゼンゼン、私鉄総連、自動車総連、金属労協、JAMなどの要求方針案が報道された。ここで具体的な要求額目安が確認できるため、前回の要求と比べて賃上げ要求額がアップしているか鈍化しているか、また、鈍化の場合にはその度合いが焦点となる。
早期賃上げ表明企業の登場(12月~1月)
早ければ12月頃から、春闘の交渉を待たずして翌年度の大幅賃上げを表明する企業が現れ始める。賃上げに積極的な企業であることをアピールする目的もあってか、早期表明を行う企業は大幅賃上げを行うことが多い。そのため、こうした早期表明企業が多ければ賃上げムードが醸成される効果がある。また、賃上げ表明を行った企業のライバル企業に賃上げ圧力を及ぼす面もあるだろう。逆に、こうした企業が前年と比べて少ない場合、今回の春闘はあまり期待できないのではないかとの見解が増える可能性があることには注意が必要である。
経団連と連合の懇談会(1月下旬)
経団連と連合両トップが春闘や社会課題について意見交換を行う場である。これをもって春闘の事実上のスタートと言われるイベントである。
労務行政研究所・賃上げアンケート(1月末)
1月末には、一般財団法人・労務行政研究所による経営側、組合側、専門家を対象としたアンケートの結果が公表される。賃上げ率の結果と連動する傾向があるため注目されている。
組合による賃上げ要求提出(2月頃)
産業別組合組織の要求方針等を受けて、個別の組合が詳細を検討し、要求水準を固める。2月中旬から下旬にかけて会社側に提出されることが多いが、高い賃上げを要求する組合があった場合、大きく報道されることがある。
連合・春闘要求集計結果(3月上旬)
3月上旬に、連合が企業の賃上げ要求を集計した結果を公表する(前回は2024年3月6日公表)。要求と実際の賃上げの連動性は非常に高いため、この結果を確認することで、実際の賃上げ率をある程度予想することができるようになる。また、この調査では、組合員300人以上の組合と300人未満の中小組合に分けて集計していることから、中小企業における賃上げ要求動向を把握できる点も重要である。大企業だけでなく、中小企業まで広く賃上げが浸透しているかどうかが確認できる。
春闘の集中回答日(3月中旬)
春闘の集中回答日とは、主要企業における労使交渉の回答が一斉に行われる日のことで、通常、3月中旬に設定される(前回は2025年3月12日)。労働組合は、交渉力を強めるために同じ業界の労働組合同士で連携するが、その際、交渉日程でも歩調を合わせることから、回答日が集中する。なお、中小企業の交渉は大企業よりも遅いタイミングで実施されるが、交渉に際してこの集中回答日での賃上げ相場を参照することが多いため、中小企業の賃上げという観点からも重要だ。2024年、2025年の集中回答日には、組合要求に対する企業からの満額回答が多くあり、組合側の要求を上回る回答も一部で見られるなど、賃上げ機運の高まりが示されたが、2026年もこうした流れが継続するかどうかが注目される。
連合・第1回回答集計公表(3月中旬)
集中回答日から数日後に、連合から春闘の第1回回答集計が公表される(前回は2025年3月14日)。この春闘回答集計は、第1回集計から7月上旬に公表される最終集計まで計7回の調査があり、集計が進むにつれて多少下振れていくことが多い。ただ、第1次集計から最終集計にかけての例年の修正度合いは▲0.2%Pt程度であり、そこまで大きいわけではない。そのため、この第1回回答集計の結果によって、その年の春闘賃上げ率の大勢がほぼ決することになる。注目度は非常に高く、大きく報道されることが多い。なお、春闘で決まった賃上げは、5月以降に賃金への反映が本格化し、その後も7~8月頃まで徐々に反映が進んでいく傾向がある。
日銀は24年3月の金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除を行ったが、この決定の決め手となったのは、会合直前に公表されたこの第1回回答集計で極めて高い賃上げ率が示されたことと言われている。

日銀が重視するイベントは?
これらは春闘の動向を把握する上でどれも重要なイベントであるが、なかでも注目されるのが、①経団連「経労委報告」の原案判明(11月上~中旬)、②産業別労働組合組織の賃上げ要求案(12月頃)、③早期賃上げ表明企業の登場(12月~1月)、④連合・春闘要求集計結果(3月上旬)、⑤集中回答日(3月中旬)、⑥連合・第1次集計公表(3月中旬)と思われる。①で経営側のスタンスを確認、②で具体的な要求レベルを見た上で、③で賃上げムードの醸成度合いを確認する。そして④~⑥で具体的な賃上げ率を把握するという流れだ。数字が進んでいくごとに春闘の解像度が上がっていく。もちろん⑥まで待って具体的な賃上げ率を確認するのが一番確実だが、ある程度の段階で、26年春闘でも高い賃上げが実現する確度が高いとの判断に至ることもあり得る。
また、こうした直接的な春闘関連イベントのほかに重要なものとしては、日銀短観と日銀支店長会議が挙げられる。日銀短観はこの先、10月1日(9月調査)、12月15日(12月調査)、4月1日(3月調査)に公表される。日銀は景気指標として日銀短観を最重要視しており、金融政策への影響も大きい。トランプ関税によって企業業績にどの程度悪影響が及んでいるか(及んでいないか)、設備投資計画に下振れはみられないかといったことを今後確認していくことになる。25年度の企業業績が堅調さを保っているのであれば、26年の春闘でも高い賃上げが実現する可能性が高まる。逆に、業績下振れが顕著であれば、賃上げの実現性に疑問符がつくだろう。
日銀支店長会議は日本銀行の正副総裁や審議委員、各地の支店長が参加し、年4回開催される。各支店長は自分の担当する地域の金融機関や企業から集めた生の声に基づき、その地域の経済・金融情勢を報告する。各地域の景気・産業動向や企業の設備投資・賃上げ意欲など、定量データだけでは把握できない現場の情報が得られる場として非常に重視されている。この先、10月上旬、1月上旬、4月上旬に開催される予定だが、ここでトランプ関税の影響度合い、26年春闘に向けての企業の賃上げに対する考え方などの情報収集が行われる。
その他では、物価動向も当然ながら重要だ。毎月下旬に公表される消費者物価指数を確認していくことになるが、特に価格改定期とされる10月分(東京都区部が10月31日、全国が11月21日公表)と4月分(東京都区部が4月末、全国が5月下旬公表)の結果が重要だ。賃金の上昇がサービス価格の押し上げにつながっているかどうかといった点が注目される。食料品以外でも上昇圧力が高まるようであれば、基調的な物価上昇率も一段と上向いているという判断に傾きやすい。
どの程度の賃上げであれば日銀は満足するか
では、2026年春闘ではどの程度の賃上げが必要なのだろうか。
日銀からはこれまで、2026年春闘に関連した具体的な数字についての言及はないため、どの程度であればOKなのかについての基準は不明である。ただ、一つの目安となるのは「実質賃金」ではないだろうか。足元まで減少を続けている実質賃金が安定的にプラスとなるだけの賃上げが実現するのであれば、賃金に関しての判断は前向きになると考えられる。この点において、必ずしも賃上げ率が前年を上回る必要はないが、「多少鈍化したが高い伸び」と言える程度の賃上げは欲しいところだ。「大幅鈍化」であれば厳しくなる。
2026年度の物価は鈍化が予想されている(展望レポート:CPIコア+1.8%予想)。賃金の実質化に用いる「持家の帰属家賃除く総合」ベースでは+2%台前半(+2.3%前後)とみられる。この物価を上回る賃金はどの程度だろうか。
連合ベースの春闘賃上げ率は2024年が5.10%、2025年が5.25%だった(最終集計ベース)。これに対応する、毎月勤労統計における一般労働者の所定内給与は、2024年半ば以降、均してみれば前年比で2%台半ば~+3%程度で推移している。2026年度の賃金上昇率がここから0.5%Pt程度までの鈍化にとどまるのであれば、前年比+2%台前半とみられる物価上昇率(持家の帰属家賃除くベース)を上回り、2026年度の実質賃金はプラスになる可能性が高いだろう。連合ベースの春闘賃上げ率で考えると、2025年の5.25%から0.5%Pt程度鈍化の4.7~4.8%程度は欲しいところだ。ベースアップで考えると+3%程度である。これであれば、2026年春闘でも高い賃上げが実現と言っても差し支えないだろう。

春闘から考える利上げタイミング
次に、2026年春闘の観点から日銀の利上げ時期を考えてみる。もちろん賃金動向だけで金融政策は決まらないが、ある程度の目安になるだろう。
2025年9月会合(9月18~19日)
9月の金融政策決定会合の段階では2026年春闘関連の情報はほとんど得られない。賃金に言及する場合でも、人口動態の観点からの人手不足継続、底堅い企業業績等を背景に2026年の春闘でも高い賃上げが期待できるといった程度にとどまるだろう。
2025年10月会合(10月29~30日)
10月会合までには、9月調査・日銀短観(10月1日公表)や支店長会議(10月上旬)の結果が判明する。トランプ関税の悪影響を受けて企業業績に変調はみられていないか、企業の賃上げ姿勢に変化はみられないかといったことがここで確認できる。また、春闘関連では10月中旬に連合から「春季生活闘争基本構想」が公表される。2026年春闘における賃上げ目安が示されることで、労働組合側のスタンスがある程度判明する。
このように、10月会合では9月会合に比べて得られる情報量が増える。ただ、春闘関連に限れば「春季生活闘争基本構想」が判明する程度であり、春闘に関する解像度はまだ高くない。10月会合で利上げを実施する場合、賃金上昇の持続性についてはある程度見切り発車となる。
2025年12月会合(12月18~19日)
12月会合までには、情報量が一段と増える。12月調査の日銀短観(12月15日公表)でトランプ関税の影響度合いをよりしっかりと確認できるほか、価格改定期である10月分の物価動向も把握できる(10月分の全国消費者物価指数・11月21日公表)。春闘関連でも、経団連「経労委報告」原案判明(11月上~中旬)、政労使会議(11月頃)、民間シンクタンク賃上げ予測(11~12月)、産業別労働組合組織の賃上げ要求案判明(12月上旬~)、早期賃上げ表明企業の登場(12月~1月)など、多くのイベントが進む。この段階では、2026年春闘について、方向性はかなりの程度見えているだろう。
2026年1月会合(1月22~23日)
1月上旬には支店長会議が開催される。全国各地からのヒアリング情報が集まることで、2026年春闘における企業の賃上げ意欲がどの程度か確認できるだろう。賃上げを早期に公表する企業も増える可能性がある。また、1月会合では展望レポートも作成されるため、これらの情報を経済・物価見通しに反映させることもできる。
2026年3月会合(3月18~19日)
3月会合までに春闘の集中回答日は終わっており、春闘賃上げ率の第1回回答集計もおそらく公表されている。この先も、中小企業の賃上げ動向がどうなるか、春闘で妥結した賃上げが実際の月例給与にどう反映されていくかといった確認事項は残るが、春闘関連のイベントはとりあえずこれで一段落となる。2026年度の賃金動向が展望できる状況になり、賃金上昇の持続性を巡る不透明感は概ね解消されることになる。
2026年4月会合(4月27~28日)
2026年春闘については3月会合段階で概ね決着が着いているが、万全を期すのであれば4月会合まで待つこともできる。4月1日には3月調査の日銀短観が公表され、新たに2026年度の収益計画や設備投資計画が把握できるようになる。また、4月上旬には支店長会議が開催され、企業の賃上げ動向について地域の生の声を聞くことができる。連合による春闘賃上げ率集計も回答が進み、中小組合における賃上げ率が下振れていないかも確認可能だ。また、これらの情報を展望レポートに反映させ、経済・物価見通しを作成することができる。
以上を踏まえて次の利上げ時期を展望する。前述のとおり、9月会合では2026年春闘の具体的な動向はほとんど明らかになっていない。10月会合では少しずつ春闘関連の情報も増えてくるが、春闘の全体像や賃上げの持続性については依然として不明な点も多く、賃金動向を見切って利上げに踏み切るには一定のリスクを伴うだろう。一方、12月会合までには、日銀短観でトランプ関税の企業業績への悪影響度合いを確認することができるほか、経団連の経労委報告原案判明や政労使会議、産業別組合の賃上げ要求案など、多角的に春闘の方向性や賃上げムードが把握できる。賃上げの持続性について、より確かな形で判断することが可能になるだろう。こうしたことから、筆者は2025年12月会合での利上げをメインシナリオとしている。
一方、リスクは前倒しである。10月会合段階では賃金関連の情報が不十分と先に述べたが、日銀短観や支店長会議、春季生活闘争基本構想など、情報が全くないわけではない。仮にトランプ関税による悪影響について不透明感の後退が確認できるようであれば、「大きな負の需要ショックが生じない限り、労働市場は引き締まった状態が続き、賃金には上昇圧力がかかり続ける」として、賃金についてはある程度見切り発車的に利上げに踏み切るという選択肢もあるだろう。この場合、10月会合では「賃金の持続的な上昇が展望できる」として利上げ、26年3月もしくは4月会合で「賃金の持続的な上昇が確認できた」としてさらなる利上げとなる可能性が高まる点に注意が必要である。
このように、今後段階的に春闘動向や関連経済指標の情報が積み上がり、それに応じて利上げのタイミングやペースが調整されることが想定される。本稿で解説した春闘関連のイベントについて、注意深く確認していくことが重要になるだろう。

新家 義貴
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 新家 義貴
しんけ よしき
-
経済調査部・シニアエグゼクティブエコノミスト
担当: 日本経済短期予測
執筆者の最近のレポート
-
2025~2027年度日本経済見通し(2026年3月)(2025年10-12月期GDP2次速報後改定)
日本経済
新家 義貴
-
2025年10-12月期GDP(2次速報値) ~1次速報から上方修正で、内容も良好。一方、原油価格高騰で先行き不透明感は大~
日本経済
新家 義貴
-
プラス転化した実質賃金 (2026年1月毎月勤労統計) ~1~3月の実質賃金はプラスも、原油価格高騰で4月以降に再びマイナス転化リスク~
日本経済
新家 義貴
-
春闘賃上げ率は3年連続の5%台か(連合・春闘要求集計結果) ~昨年対比でやや鈍化も、概ね「前年並み」~
日本経済
新家 義貴
-
2025年10-12月期GDP(2次速報値)予測 ~前期比年率+1.0%と、1次速報から上方修正を予想~
日本経済
新家 義貴