2025年度補正予算案のポイント

~焦点は例年と異なる本予算の編成~

星野 卓也

要旨
  • 25年度補正予算が閣議決定された。新発債発行額は11.7兆円と昨年度補正(6.7兆円)から拡大。税収は2.9兆円の上振れが見込まれており、25年度に80兆円台に到達する見込みとなった。内容は家計向けの物価高対策、危機管理・成長投資、公的セクターの賃上げなどインフレ対応が主だったものとなっている。

  • 焦点は今後議論される26年度本予算。例年、プライマリーバランス黒字化目標と「歳出の目安」によって当初予算の規模は硬直的だったが、インフレ対応、日本版DOGEや社会保障改革がどう反映されるかが重要だ。また、近年は補正予算を拡張して当初予算を抑制する財政運営が常態化してきたが、経済財政諮問会議ではこの見直しが提起されている。課題の多かった当初予算と補正予算の役割分担の見直し議論に期待したい。

目次

補正予算案閣議決定、新発債発行額は前年から増加

11月28日に政府は2025年度補正予算案を閣議決定した。先に閣議決定した「強い経済を実現する総合経済対策」の予算措置に相当するものだ。補正予算フレームの推移を示したものが資料1だ。今回補正予算の一般会計の追加歳出額は18.4兆円で、うち17.7兆円を経済対策関係経費が占めている。歳入側では税収の25年度当初予算からの上振れ見込み額を2.9兆円計上した。景気回復期の税収上振れが補正予算財源として繰り入れられるのは毎年の恒例となっている。この上方修正によって、補正後の25年度税収見込み額は80.7兆円に達する。

図表
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この税収の上振れや税外収入、前年度剰余金で賄えない部分が新規国債発行で賄われることになる。今回の新発債発行額は11.7兆円となった。補正における新発債発行額は2022年度2次:22.9兆円→23年度8.9兆円→24年度6.7兆円と縮小してきたが、今回再拡大する形になった。一方、政府は「当初+補正」の新発債発行額が昨年を下回る(24年度42.1兆円→25年度40.3兆円、24年度決算では37.1兆円)点から、財政規律に配慮した旨を示している(資料2)。

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  • 家計向け物価高対策、官民投資、インフレ対応

各省庁の予算資料を参考にしつつ、主だった施策をまとめたものが資料3だ。まず、物価高・家計向け支援策として、電気ガス料金支援(0.5兆円)、重点支援地方交付金(2.0兆円)、子供一人当たり2万円の児童手当追加給付(0.4兆円)などが盛り込まれた。続いて、危機管理投資・成長投資。高市首相の重視する17分野をはじめとする投資に計6.4兆円が充てられた。造船業再生基金、宇宙開発基金、後発医薬品製造基盤整備基金など、複数年度の投資を前提とした基金を創設、積み増す。危機管理投資の中には防災・減災・国土強靭化の公共投資系の予算が含まれており、3.0兆円が充てられている。

厚生労働省の予算が2.3兆円と大きい点も特徴(昨年度補正は0.8兆円)だ。医療機関・薬局における賃上げ・物価上昇支援(0.5兆円)、介護分野の職員の賃上げ・職場環境に対する支援(0.2兆円)など、高市首相が従来から掲げていた社会保障関連産業の賃上げに多くの予算が割かれている。インフレに伴う賃上げ対応は防衛、国立大学など公的セクターで幅広く盛り込まれている。

図表
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例年と違う今年の本予算編成

次の焦点は2026年度の本予算(当初予算)に移る。弊著「高市政権の総合経済対策のポイント~「財政懸念」の整理整頓~」(2025年11月25日)でも指摘したように、補正予算の規模は昨年から明確に拡大しているが、年度の新規国債発行額(当初+補正予算額)は昨年度から下回るように組まれており、財政規律にも一定の配慮がみられている。注目すべきはこれから議論の進む26年度の本予算であり、その拡張度合いや日本版DOGE、社会保障改革がどのように盛り込まれるかが重要である。長い間、本予算はプライマリーバランス目標とその下で設定された“歳出の目安”(基本的に、本予算では高齢化分以上は増やさない)の下で、社会保障は高齢化分増、非社会保障はほぼ名目額横ばいで組まれるのが慣行化していた。このため、財政の規模は補正予算の多寡が左右する形となっていた。この慣行が高市政権でどのように変化するかが焦点だ。

11月27日に経済財政諮問会議で公表された「令和8年度予算編成の基本方針(案)」において、来年度予算案の方向性が示されている。ポイントは、①物価上昇の適切な反映、②EBPM・PDCAによる政策の実効性の検証とメリハリ付け、③社会保障における制度の効率化や資源配分最適化など。インフレ反映は歳出増加要因の一方、②・③は歳出減少要因になりうるものだ。最終的なまとまりは例年と異なり、不確実な部分が大きい。

また、このペーパーでは「補正予算は、予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出等のために編成されるものであるが、近年は、常態化すると同時に規模が拡大している。今後、経済財政諮問会議等において、こうした予算の在り方についても、議論を進める。」と示された。近年の財政運営は当初予算を抑えて、補正予算で緩める運営が繰り返されてきた。この方法については何度か筆者も課題を指摘してきた(例えば、「骨太方針2021のポイント(財政再建目標編)~見直すべきは“当初を絞って補正を緩める”財政運営~」)ため、対応が図られる方向性となっていることは評価したい。補正予算の規模・内容は毎年の政治経済情勢などによって左右されてしまう。本来、継続的な歳出は本予算で措置すべきものであり、補正予算は本来不向きである。財政均衡を重視する視点に立っても、当初予算のみをコントロールすることに大きな意味合いはない。補正予算を含めた決算ベースで考えない限り、歳出のコントロールにはならないからである。今後の補正予算と本予算の役割分担の見直し議論に注目している。

以上

星野 卓也


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

星野 卓也

ほしの たくや

経済調査部 主席エコノミスト
担当: 日本経済、財政、社会保障、労働諸制度の分析、予測

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