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2026.06.04
日本経済
経済財政政策
人口減少・少子化
出生数はそろそろ下げ止まるのか?
~最も減ったのは第2子:際立ってきた「2人目の壁」~
星野 卓也
- 要旨
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- 2025年の出生数(日本人)は67.1万人と減少が続いた。一方、減少率は▲2.2%と、2022~24年の▲5%台から明確に縮小した。外国人を含む速報値では2026年1-3月期が前年比+0.2%とわずかにプラスに転じており、出生数には下げ止まりの兆しもみられる。
- 都道府県別にみても、出生数の減少率は全体として緩やかになっている。2024年は全都道府県で出生数が減少していたが、2025年は東京都、石川県、富山県、香川県で増加に転じた。子育て支援策の強化や災害後の出生行動の変化などが影響した可能性がある。
- 出生順位別では、第1子の減少率が大きく縮小し、第3子以上も減少ペースが鈍化した。2025年の出生数減少に最も影響したのは第2子だった。経済面やキャリアとの両立面を背景とする「2人目の壁」が相対的に際立っている。
- 出生数の水準は社人研の出生低位推計に近く、仮に下げ止まっても人口減少を巡る厳しい状況は変わらない。労働力不足への対応や社会保障の効率化を進めるとともに、「2人目の壁」への対応をはじめ、実効性ある少子化対策につなげる必要がある。
- 目次
減少が続く出生数、一方で減少ペースは緩やかになっている
厚生労働省から2025年の人口動態統計が公表された。2025年の出生数(日本人)は67.1万人で2024年の68.6万人から減少した。出生数の減少傾向は依然として続いている状態だ。婚姻件数は48.9万件で2024年48.5万件から2年連続の増加となった(図表1)。
出生数「減少」の側面がフォーカスされがちではあるが、2025年の出生数の「減少ペース」は2025年に幾分緩和している。2022年~2024年の出生数の減少率はそれぞれ▲5.0%、▲5.6%、▲5.7%であったのに対して、2025年は▲2.2%だった。また、人口動態統計では外国人を含む出生数の速報値も公表されている。こちらでは2026年の3月までの動向を確認することができ、2026年1-3月期の出生数は前年同期比+0.2%とわずかにプラスに転じている。1-3月期出生数が前年を上回るのは2015年以来のことになる。


東京、石川、富山、香川の出生数は増加に転じる
都道府県別にみても状況の改善は確認できる。図表3では2024年と2025年の出生数の前年比の値に基づいたヒートマップである。青系色は減少、赤系色は増加を示し、色が濃いほど減少(増加)率が高い。2025年は全体的に青色が薄くなっており減少率が緩やかになっていることが読み取れる。
また、2024年はすべての都道府県において出生数が減少していたが、2025年には東京都、石川県、富山県、香川県の4都道府県で出生数が増加に転じている。東京都は近年、都独自の子育て世帯向け支援を明確に強化。香川県もこども医療費の無償化を拡大するなど、近年政策面での支援を充実させている。医療機関などの都市機能が集約されている点なども評価されているようだ。石川県、富山県は能登半島地震の影響も幾分関連している可能性が考えられる。Cohan and Cole(2002)は自然災害や突発的な事件・事故が出生行動に与える影響を3つの側面で説明しているが、そのうちの一つが「愛着理論(Attachment Theory)」である。災害が発生した際に不安感などから、繋がりを求めた婚姻や出生が増えるという短期的効果を指す。

最も大きく減少したのは「第2子」:際立ってきた「2人目の壁」
次に見てみたのは出生順位別(第1子、第2子、第3子以上)の動向である。この数字を確認したかった理由は、岸田政権下で行われた子育て支援強化策が児童手当の所得制限撤廃とともに第3子以降の給付額を一律増額する、多子世帯の大学授業料減免など、多子世帯へのインセンティブを明確に強化する内容であったためだ。それぞれの政策が開始されたのは2024年10月(児童手当)、2025年4月(大学)であり、妊娠出生のタイムラグを考えると影響が表れるには早い気もするが、事前のアナウンスメント効果が表れていてもおかしくはない。
結果を図表4に整理した。2025年の第1子出生数は31.9万人(前年比▲1.0%)、第2子は24.0万人(同▲3.4%)、第3子以上は11.2万人(同▲2.9%)であった。いずれも減少してはいるのだが、ポジティブな形で予想に反していたのは、第1子出生数の減少率が明確に縮小した点である(2024年▲4.8%→2025年▲1.0%)。婚姻数の下げ止まりが進んでいる点と整合的な動きであり、若年層の経済環境の改善が底支えしている部分もあると考えられる。初任給の上昇をはじめ、人手不足度合いの強い若年層の賃金上昇は他の世代よりも大きく進んでいる。経済環境の改善は婚姻・出生の決断のハードルを下げる大きな要素である。
政策効果と結論付けるほどのエビデンスはないが、第3子以上の出生数も悪くはない。2022年以降の前年比伸び率をみると、2022:▲7.5%→2023:▲8.7%→2024:▲5.9%→2025:▲2.8%。こちらも減少率は縮小している。
相対的に弱いのが第2子である。減少率は縮小した(2024:▲6.6%→2025:▲3.4%)が、第1子、第3子以上と比べると減少率がやや大きめだ。また、減少数でみると2025年の減少に最も影響したのは第2子である(第1子▲0.3万人、第2子▲0.8万人、第3子以上▲0.3万人)。第3子インセンティブ強化の影響が及ぶ手前時点において、出生ハードルが高くなっていることを示唆する。経済面・キャリア面などの理由で出生をためらう「2人目の壁」の存在はこれまでも度々指摘されてきた。丁寧な検証が求められよう。

下げ止まったとしても低位推計並み
ここまで、2025年出生数に関するポジティブな側面(減少は続いているが減少の程度は緩やかになってきている)についてみてきた。ただし、これらはコロナ禍以降の出生数減少が想定を下振れて進んでいるとの事実を変えるほどのものではない。図表5では出生数の実績値と2023年に国立社会保障人口問題研究所が示した将来推計人口における仮定別出生数の推計(出生中位、低位、高位)と実績を比較している。2025年の出生数の減少率は縮まったが、社人研の悲観シナリオに相当する「出生低位」の数字に近い状況だ。2026年の数字が仮に下げ止まり、横ばい程度になったとしても、悲観シナリオ寄りの推移であることは変わらない。低位推計を突き抜けて減少していくような超悲観シナリオは避けられそうな情勢にはなってきたとはいえるが、状況は依然厳しいままである。
日本経済が人口減と向き合うことになる点も変わらない。労働力不足への対応と老後のセーフティネットである社会保障の持続性確保、効率化を一体的に進める必要がある。テクノロジーを活用した生産性向上、特に不足が予想されているブルーカラー職を補う役割として、フィジカルAIへの期待は大きい。人手不足などを原因に社会保障サービスの質がなし崩し的に低下する事態を避ける観点でも、医療・介護などの給付は計画的な重点化・効率化を図るべきである。
実効性のある少子化対策のための取り組みも依然として重要である。今回、第2子の減少が際立っていた点は「2人目の壁」の分析、課題の洗い出し、対応強化を行う必要性があることを示唆する。
適齢期女性の減少が進む中で出生数の減少は避けがたい未来ではあるが、その程度を和らげることは可能だ。経済面、キャリア面等で子どもを持つことをあきらめる人を少しでも減らすための政策が求められる。

(参考文献)
Cohan, C. L., & Cole, S. W. (2002). Life course transitions and natural disaster: Marriage, birth, and divorce following Hurricane Hugo. Journal of Family Psychology, 16(1), 14–25.
星野 卓也
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 星野 卓也
ほしの たくや
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: 日本経済、財政、社会保障、労働諸制度の分析、予測
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