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2025.11.12
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印パ関係に緊張再燃の懸念、金融市場の楽観に影響の可能性
~印パ間の緊張再燃は米国との関係にも影響する可能性、その動向を注視する必要性は高い~
西濵 徹
- 要旨
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インドとパキスタンの関係が再び緊張する可能性が高まっている。インドでは10日、ニューデリー中心部で車両爆発事件が発生し、多数の死傷者が出た。実行犯はジャンムー・カシミール出身の医師とされ、イスラム過激派組織との関係が疑われる。一方、翌11日にはパキスタンのイスラマバードで自爆テロ事件が発生し、パキスタン政府は根拠を示さずインドの関与を主張し、インド政府はこれを事実無根と反発している。
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両国はカシミール地方を巡る領有権や宗教対立などを背景に過去3度の戦争を経験しており、今年も4月に発生した銃撃事件を機に一時的な武力衝突に発展した。米国の仲介で停戦が成立したが、印パ関係には依然不信感が残るなか、米国の対応は米印関係にも影響を与えている。足元では米印関係に雪解けの兆しがみられ、金融市場はこれを好感する向きもみられる。しかし、印パ関係の悪化は米印通商協議の行方や金融市場の動向にも影響を与える可能性があり、当面はその動向を注視する必要性が高まっている。
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インドとパキスタンの関係に再び緊張感が高まる可能性が出ている。インドでは10日、首都ニューデリー中心部にある世界文化遺産の「ラール・キラー(赤い城)」の近くで自動車が爆発して多数の死傷者が発生した。この事件を受けて、インド政府はテロ対策の専門組織を派遣するとともに、モディ首相も首謀者の処罰を表明するなど強い姿勢で臨む姿勢をみせている。現地報道によれば、爆発した自動車を運転していたのは両国が領有権を争うジャンムー・カシミール連邦直轄領(カシミール地方)出身の医師で、同地域のインドからの分離を目指すイスラム過激派組織(ジャイシュ・エ・ムハンマド(JeM))との関係が疑われているとされる。さらに、警察当局は別の医師宅を捜索して可燃性物質や武器弾薬を押収するとともに、医師ら数人を拘束して関連を調べている。その一方、パキスタンでは11日、首都イスラマバードの裁判所庁舎前で自爆テロ事件が発生し、多数の死傷者が発生した。この自爆テロを巡っては、パキスタン国内でイスラム国家の樹立を目指すイスラム過激派組織(パキスタン・タリバン運動(TTP))から分派した「ジャマートゥル・アハラール(JuA)」が犯行声明を出している(ただし、TTP本体は否定している模様)。隣国アフガニスタンでタリバン政権が復権して以降、TTPをはじめとするイスラム過激派組織がパキスタン国内でテロや治安部隊に対する攻撃を活発化させており、今回の自爆テロもそうした動きの一環である可能性はある。しかし、パキスタン首相府は根拠を示さないまま、同国内で発生したテロ事件にインドの支援を受けた組織が関わっていると非難した上で、今回の自爆テロも地域におけるインドによる国家支援テロリズムの最悪の事例のひとつと断じた。これを受けて、インド政府はパキスタン政府の主張には根拠がなく事実無根と批判した上で、国民の注意を逸らすべくインドに対抗するために事実を歪曲していると指摘した。そして、インド政府はその根拠として、パキスタン議会で憲法改正案が審議されており、国軍参謀総長の権限が大幅に拡大される一方、最高裁判所の権限が制限される内容を理由に、野党が批判を強めていることを挙げた。
両国関係を巡っては、1947年の独立以降、上述したカシミール地方の領有権に加え、インドで多数派を示すヒンドゥー教とパキスタンで多数派を占めるイスラム教との宗教対立も重なり、過去に3度にわたる戦争(インド・パキスタン戦争)が繰り広げられた歴史を有する。今年に入って以降も、4月末にインドのジャンムー・カシミール連邦直轄領においてJeMによる発砲事件が発生したことを受けて、インド政府はパキスタンの支援を受けたテロ組織による犯行と非難し、両国の緊張関係が急速に高まった。直後にインド政府はパキスタンとの国境を閉鎖した上で、パキスタンからインドに入国する旅行者へのビザを無効とし、両国を流れる河川の水資源配分に関する条約(インダス水域条約)の効力停止を通告した。これを受けて、パキスタンもインドとの貿易を停止する報復措置に動いた。その後は両軍がミサイルやドローン、砲撃などを投入する形で4日間にわたる武力衝突が激化する事態となったが、米国が仲介する形で両国による直接協議が行われて停戦合意に至った。停戦合意を巡っては、トランプ米大統領が自らの成果であることを誇示する一方、インドは国連や第三国の関与を認めない立場を維持してきたため、トランプ氏の主張に対する反発を強めた。さらに、今年6月にはパキスタン軍のムニール国軍参謀総長が訪米し、ホワイトハウスにおいて文民指導者を同席しない異例の形でトランプ氏と会談したため、インド国内では米国がパキスタンに接近していることへの反発が強まった。トランプ米政権は、インドがロシア産原油の輸入を拡大させていることを理由に、インドに対する追加関税を大幅に引き上げたが、その背景にはインド国内における対米感情の悪化などを理由に通商協議が難航したことも影響した可能性がある(注 )。一方、先月には米印首脳による電話会談を受けて、トランプ氏はインドが米国の要求に応じてロシア産原油の輸入を停止する方針を示したとして、関係改善を示唆する考えをみせた(注 )。その後の金融市場においては、米印関係の雪解けに対する期待が後押しする形で主要株式指数(ムンバイSENSEX)は底堅い動きをみせるなど、トランプ関税をきっかけに上値が抑えられる展開が続いた流れに変化の兆しがみられる。しかし、通貨ルピーの対ドル相場は米ドル高が再燃するなかで上値が重い展開が続くなど、米印関係の行方への不透明感が影響している可能性がある。仮に印パ関係に再び緊張感が高まる事態となれば、足元で進められている米印通商協議の行方にも少なからず影響を与えるほか、金融市場の楽観姿勢に冷や水を浴びせる可能性も考えられる。よって、その動向を注視する必要性は高い。

注1 8月27日付レポート「米国、インドへの追加関税発動、トランプ関税はブラジルと同じ50%へ」
注2 10月16日付レポート「インド、ロシア産原油輸入停止で米国との関係改善は進むか」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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