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2025.11.07
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メキシコ中銀、11会合連続利下げに加え、追加利下げの検討示唆
~ドル高再燃でペソ相場に変調の兆し、中銀はインフレ圧力の根強さを認識している模様~
西濵 徹
- 要旨
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メキシコ中銀は、11月6日の定例会合で11会合連続の利下げを決定した。年明け直後は大幅利下げを続けたものの、過去3回は利下げ幅を縮小させるなど緩和ペースを後退させている。中銀が金融緩和を続ける背景には「トランプ関税」による経済の不透明感があり、シェインバウム政権は米国との関係悪化を避けつつ、中国による迂回輸出の対策を強化しており、経済への壊滅的打撃を避けることに成功している。
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足元では製造業の低迷を受けて7-9月の実質GDP成長率は前期比年率▲1.15%とマイナスに転じるなど、事前の金融市場では追加利下げ観測が広がった。その一方、足元でコアインフレ率は目標を上回る推移が続いており、政策委員の間で意見が割れてきた。声明では、為替や経済活動の弱さを踏まえて利下げ継続が適切としたほか、今後も追加利下げを検討すると示唆した。しかし、インフレ率は目標範囲内で推移するも、コアインフレ率は高止まりするとの見通しを示すなど、インフレ圧力への懸念も残っている。
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金融市場においては、FRBの利下げ観測後退によるドル高で堅調な推移をみせたペソ相場に変調が見られる。先行きのペソ相場は米国や日本の政策運営といった外部環境に左右される展開が続くであろう。
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メキシコ中銀は、6日に開催した定例の金融政策委員会において、政策金利を25bp引き下げて7.25%とすることを決定した。同行は昨年3月にコロナ禍一巡後初の利下げに動くも、利下げ休止を経て昨年8月に再び利下げに動いており、今回の利下げは11会合連続と金融緩和を進めている。なお、同行は今年2月の定例会合から4会合連続で50bpの大幅利下げに動くなど緩和ペースを加速させたものの、8月会合から今回まで3会合連続で利下げ幅を25bpに縮小させるなど緩和ペースを鈍化させている。ただし、今回の利下げによって政策金利は2022年5月以来の低水準となるなど、同行は着実に緩和の動きを前進させている。

同行が金融緩和を進める背景には、いわゆる『トランプ関税』を理由にメキシコ経済を取り巻く環境に不透明感が高まっていることがある。メキシコ経済にとって対米輸出は輸出全体の8割を占めるほか、名目GDP比で3割弱に達するなど米国経済への依存度が極めて高い。こうしたなか、トランプ米政権はメキシコに対して追加関税を課す方針を示すなど『圧力』を掛けたが、シェインバウム政権は米国に従属しない戦略を取りつつ、報復措置を自重して米国との関係悪化も回避する姿勢をみせる。その結果、米国は個別財への追加関税のほか、メキシコからの輸入品に25%の追加関税を課しているが、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)に準拠した財は関税の対象外とすることで合意するなど、メキシコ経済にとって壊滅的な打撃を回避している。さらに、メキシコは同国と貿易協定を締結していない国からの輸入品に対する関税を大幅に引き上げるなど、中国からの輸入が同国を経由して米国に流入する「迂回輸出」への対応を強化している。こうしたことも、トランプ米政権がメキシコに対して比較的融和的な姿勢を取る一因になっているとみられるほか、先月発足から丸1年を迎えたシェインバウム政権への支持率が高い一因になっているとみられる(注1)。しかし、足元ではトランプ関税の本格発動を前にした世界貿易の駆け込みの動きは一巡しつつあるなか、製造業を中心とする生産低迷が足かせとなり、7-9月の実質GDP成長率(速報値)は前期比年率▲1.15%と3四半期ぶりのマイナス成長に転じるなど景気にブレーキが掛かっている。こうした事態を受けて、金融市場では中銀が一段の利下げに動くとの見方が広がりをみせる一方、過去数回の利下げ決定に際しては政策委員の間で見方が割れており、評決の行方が注目された。

会合後に公表された声明文では、今回の決定も「4(25bpの利下げ)対1(据え置き)」と政策委員の間で票が割れており、過去と同様にヒース副総裁が反対票を投じたことが明らかにされている。この背景には、足元の物価は食料品やエネルギーなど生活必需品を中心に落ち着いた動きをみせるなか、直近9月のインフレ率は前年同月比+3.76%と緩やかに加速するも引き続き目標(3±1%)の範囲内で推移する一方、コアインフレ率は同+4.28%と5ヶ月連続で目標の上限を上回るとともに、緩やかに加速するなどインフレ圧力が強まっていることが影響している。こうした状況ではあるものの、今回の決定について「為替レートの動向、経済活動の弱さ、世界的な貿易政策の変更に伴う影響の可能性を考慮した」上で、「これまで実施された金融引き締めの度合いを勘案して利下げサイクルを継続することが適切と判断した」と従来の考えを繰り返している。その上で、先行きの政策運営について「物価を巡るすべての要因を考慮しつつ、さらなる政策金利の引き下げを検討する予定」とするなど、追加利下げを検討する方針を示唆している。中銀は追加利下げの可能性に言及したものの、声明文で示されたインフレ見通しでは、商品市況の調整を反映して短期的にインフレ率を下方修正する一方、来年前半のインフレ率はわずかに上方修正している。さらに、コアインフレ率は今年末から来年前半にかけてわずかに上方修正するなど、インフレ圧力の根強さを認識している可能性がある。

また、このところの金融市場においては、FRB(米連邦準備制度理事会)による利下げ観測の後退を受けて米ドル高の動きが再燃しており、実質金利(政策金利-インフレ率)のプラス幅の大きさなど投資妙味の高さを追い風に堅調な推移をみせてきたペソの対ドル相場に変調の兆しがみられる。先行きについてもFRBの政策運営をはじめとする外部環境に左右される展開が続くと見込まれる。その一方、日本円に対しては日本銀行の政策運営に対する見方のほか、高市政権の財政運営に対する見方に左右される動きが続くであろう。

注1 10月3日付レポート「メキシコ・シェインバウム政権が1年、国民の支持高く、市場も評価か」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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