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2025.10.31
日本経済
物価
物価指標(日本)
消費者物価指数(東京都区部・2025年10月)
~水道の基本料金無償化要因剥落で上昇率拡大も、物価の基調に変化なし~
新家 義貴

水道の基本料金無償化終了で上昇率拡大
本日総務省から発表された25年10月の東京都区部消費者物価指数(生鮮食品除く)は前年比+2.8%と、前月の+2.5%から上昇率が0.3%Pt拡大した(市場予想:+2.6%、筆者予想:+2.8%)。上昇率が大きく拡大したことの主因は水道料金。東京都では水道の基本料金無償化を6~9月まで期間限定で実施しており、水道料が大きく押し下げられていたが、これが終了したことでマイナス寄与が剥落したことの影響が大きい(CPIコアへの寄与度:9月▲0.25%Pt→10月0.0%Pt)。水道料金を除いて計算すると、CPIコアは9月に前年比+2.8%、10月に+2.9%となり、前月からの変化は限られる。なお、この水道料金の引き下げ措置は東京都限定であるため、10月分の全国CPIへの影響は限られる点に注意したい。
エネルギー以外のコアコア部分についても、日銀版コア(生鮮食品及びエネルギーを除く総合)が前年比+2.8%(9月:+2.5%)、米国型コア(食料及びエネルギー除く総合)は前年比+1.6%(9月:+1.0%)と、それぞれ前月から伸びが大きく拡大したが、これも水道の基本料金無償化による押し下げ分の剥落要因が大きい。水道料金の影響を除けば、日銀版コアは9月に前年比+2.8%、10月に+2.9%、米国型コアは9月に前年比+1.4%、10月に+1.5%となり、前月から大きく変化しているわけではない。物価の基調に変化がみられるといった内容ではない。
食料品価格が前年の裏要因で鈍化
電気・ガス代は前月から大きな変化はなかった(前年比寄与度:9月+0.13%Pt → 10月+0.11%Pt)。政府による電気・ガス代補助について、今年10月と昨年10月はどちらも補助が実施されているが、補助額は昨年の方が大きいことから、前年比ではプラスとなっている。
電気・ガス代補助金は、昨年と今年で補助額の違いだけでなく、実施時期もズレていることに注意が必要だ(CPIへの反映時期:昨年:9月~11月、今年:8月~10月)。この先11月分では、昨年は実施、今年は終了となることから上振れ(前年の裏)、12月分では昨年、今年とも実施していないためニュートラル(11月の上振れ分が剥落)に戻るといった形で振れが大きくなることに注意しておきたい。
ガソリン、灯油価格は前月からほぼ変わらず(石油製品の前年比寄与度:9月+0.01%Pt → 10月+0.01%Pt)。なお、ガソリンの旧暫定税率は年内に廃止される可能性が高まっているが、実施された場合にはCPIコアを▲0.2%Pt程度押し下げることになる(補助金も終了するケース)(ガソリン暫定税率が年内廃止に向けて前進 ~世帯あたり年間7600円の負担減。代替財源確保にどこまでこだわるか~ | 新家 義貴 | 第一生命経済研究所)。
10月の食料品(生鮮除く)は前年比+6.7%(前年比寄与度:+1.65%Pt)と前月の+6.9%(同寄与度:+1.66%Pt)からやや鈍化した。引き続き非常に高い伸びだが、前年比でみればピークアウト感が出ている状況は変わらない。ただし、10月の食料品価格(生鮮除く)を前月比でみれば+1.1%と、非常に高い伸びであることに注意が必要だ。年度下期入りで値上げを行いやすい10月ということもあり、多くの品目で値上げが実施されている。昨年10月の伸びが極めて高かったことにより前年比では鈍化しているが、企業の値上げ意欲の強さは相変わらずである。
食料品価格の先行きについては不透明感が強い。現時点では、10月に価格引き上げを積極的に実施したこともあり、11月以降には値上げペースが一服する模様ではあるが、足元で再び円安が進んでいることもあり、企業が再び価格転嫁に積極的になる可能性は十分ありそうだ。食料品価格は前年の裏要因を主因として先行き鈍化傾向が続く可能性が高いが、鈍化のペースについてはまだはっきりしたことは言えない。
エネルギー以外のコアコア部分については、前述のとおり、水道基本料金無償化政策終了の影響を除けば前月から大きな変化はなかった。日銀版コア、米国型コアとも水道料金を除けば前月から0.1%Pt上昇率が拡大している。日銀版コアは食料品価格鈍化によりこの先緩やかな鈍化に向かうだろう。一方、米国型コアについては先が読みにくい。足元、これまでの輸入価格下落の影響で耐久消費財等に鈍化がみられるが、この先の為替レート次第では再び輸入物価上昇によるコスト上昇圧力が生じてくる可能性もあり、まだはっきりしたことは言えない状況である。
先行きは鈍化を予想も、食料品価格に不透明感
本日の東京都区部の結果を踏まえると、11月21日に公表される25年10月の全国CPIコアは前年比+3.0%程度と、9月の+2.9%から上昇率が若干拡大することが予想される。なお、今回攪乱要因となった水道の基本料金無償化は東京都独自の政策であるため全国ベースでは影響は限定的だろう。
先行きについては、CPIコアの上昇率は鈍化すると予想している。基本的には食料品において昨年の上昇率が高かったことの裏が出ることが下押し要因となる。電気・ガス代補助金の前年の裏要因による攪乱、ガソリン旧暫定税率廃止といった要因もあって複雑だが、12月には前年比+2%強程度まで鈍化することが予想される。また、その先についても、電気・ガス代補助金が今冬も実施される場合、26年1-3月期でのCPIコア+2%割れも十分考えられる。
一方、上振れリスクとしては食料品価格の上昇が挙げられる。前述のとおり食料品価格の動向については不透明感が大きいが、足元の為替レートを踏まえると上振れを意識しておく必要があると思われる。食料品価格の鈍化ペースが想定よりも緩やかなものになる可能性は十分あるだろう。

新家 義貴
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。